2006年01月18日

記憶の底7

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 幼い頃、毎晩怖くて怖くてしかたがなかったことがある。それは眠る時、顔を横にして枕に耳を埋めること・・・
 枕に耳をつけて目を閉じると、ザッザッザッという音が規則正しく聞こえてくる。おそらく耳のあたりの脈拍が、枕のソバガラで増幅された音だったと思うのだが、幼児の私にとっては不可解で無気味きわまりない音だった。真っ暗な寝床で体内音に耳を澄ませていると、頭の中でその音に触発された妄想が湧き起こってきた。

 薄暗い山道を、白い棺桶を担いで進む、数人の黒い影・・・

 私はかなり長い間その謎のイメージに怯え、怖くて中々眠れなかった。枕に耳をつけて眠ると、そのまま自分も棺桶に入れられて山奥に運ばれてしまい、二度と目が覚めなくなるような気がした。

 何がきっかけでそんな突飛な空想を始めたのか記憶は定かではないが、「もしかしたら」と思い当たることもある。
 妄想の中のイメージと直接重なる経験では無いのだが、母方の曾祖母の思い出がそれだ。次回、そのことを書いてみたい。
posted by 九郎 at 23:02| 原風景 | 更新情報をチェックする

記憶の底6

 祖父母は子沢山で、私の母は六人兄弟、姉妹の長女だった。祖父宅は子供の成長とともに増改築が繰り返された。なにせ祖父とその息子二人(私の母の弟)が大工であったから、かなり頻繁に家は改造されていったらしい。このあたりは、大工の家の特殊事情だろう。私の母など、家具は「買うもの」ではなく「頼んでおけばしばらくすると出来上がってくるもの」だと思っていたそうだ。
 他人の注文を請けた「お仕事」としての増改築でなく、あくまで自宅改造の気楽さ、長女の子供である私が生まれる頃には、祖父宅はかなり複雑怪奇な造りになっていた。もともと敷地が小山のふもとの斜面地だったせいか、各部屋で床の高さが違っており、構造が分かりにくかった。母の妹のカレシ(後の私の叔父)は「はじめて来た時は忍者屋敷かと思った」そうだ。
 私の家族は別の家に住んでいたが、私が小学校に入ると身内で「子供部屋」を増築してくれた。ここでも身内的なお気楽増築が行われ、窓のある壁面にそのまま子供部屋を付け、結果として居間と子供部屋が「窓でつながっている」という状態になった。
 もちろん子供部屋の入り口ドアは別に存在したのだが、居間から一旦屋外に迂回しなければドアに到達できないため、私はもっぱら窓から子供部屋へ出入りしていた。居間側には丸椅子、子供部屋側には二段ベッドを配置して、楽に上り下りできるようにした。
(文章ではわかりにくいと思うので、↓図を参照)
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 このような原風景を抱えているせいか、今でも地方の旅館などで、無理な増改築をしてフクザツなことになってしまっている建物に入ると、妙な懐かしさを感じてしまう。
posted by 九郎 at 00:31| 原風景 | 更新情報をチェックする