GWに、新緑の色に誘われて、山に散歩に行ってきた。
里に程近い林道をぶらぶら歩いていると、十メートルほど先の側溝近くを何か丸い毛玉のようなものが、もこもこ動いている。
何かと思って足を止めると、向こうも止まってこちらに視線を投げかけてきた。
白っぽい褐色の毛皮に、黒い足が生えていて、顔には黒い縦線二本、鼻先は細く尖っている。
遠目にも「狸とは違うな」と判った。
こちらがさらに一歩踏み出すと、向こうは慌てて側溝に潜り込む。
私が近づいた時には、もう丸いお尻は見えなくなっていた。
溝を覗き込むと、見えなくなってから数秒も経っていないのに、既に影も形も無かった。
しばらく歩いてから「ああ、あれがムジナというものか」と思い至った。