前回の記事で、絵を描く者にとっての「白描画」の重要性を述べた。
続けて白描画の参考資料を紹介してみよう。
●「図解・別尊曼荼羅―密教図像を読む」小峰弥彦, 高橋尚夫 著
曼荼羅といえば、一般には真言密教の金剛・胎蔵両界曼荼羅が有名で、前回の「曼荼羅図典」もその二大曼荼羅を描くための資料だ。
曼荼羅には他にも「用途別」に様々な種類があって、この「図解・別尊曼荼羅」には日本に伝えられてきた両界以外の曼荼羅が収録されている。図版は鮮明な白描画で、描かれたそれぞれの仏尊名も明記、元になった経典の記述も豊富に引用されており、出典も明確。
痒いところに手が届くような編集は、絵描きにとって本当にありがたい。
この本が発行されて書店に並んだ時、到底売れそうもないマニアックな内容にも関わらず、比較的安い定価がついていることに驚愕し、即買いしたことを覚えている。すぐに書店の本棚から消えてしまうかと思いきや、意外に生き延び、今も並び続けている。
絵描きばかりでなく、鑑賞者や研究者にとっても貴重な資料になっているのだろう。