インド神話は物語、図像ともに本当に面白い。
仏教図像を描く時にも参考になることが多い。仏尊の服装を理解するにはやはりインドの図像が分かり易いし、密教図像はインドの雰囲気を濃厚に残している。特に天部の神々の発祥を知るには、インド神話は避けて通れない。
と言うことで、この二冊。
●「インド神話―マハーバーラタの神々」上村勝彦著(ちくま学芸文庫)
ネットは便利なもので、ちょっと知りたいと思ったことを検索すれば、数限りない情報がヒットする。知りたいことのアウトラインを知るには何の苦労も要らない時代になった。
しかしネットの情報は玉石混交。ソースが明らかでない不確かなものも多い。「神仏与太話」を公言する当ブログなどは、不確かな情報の最たるものだ(笑)
より確かな情報を得るためには、やはり書籍をひもとくのが一番。ある程度評価の定まった信頼感のある本には目を通しておきたい。
インド神話というテーマなら、この「インド神話―マハーバーラタの神々」が参考になった。各神話の出典が明記してあり、白黒だが写真も豊富。文章も平易で、私のような素人にも大変分かりやすく、面白い。文庫本なので価格も安く、入手も容易。
まったくいいことずくめの素晴らしい一冊。
●「インド神話入門」長谷川明著 (とんぼの本)
インド神話と言えば、多くの人はインド雑貨店等で売られている派手な色彩のポストカードを思い浮かべるのではないだろうか?
私はあのポストカードの雰囲気が大好きで、表現手法としても影響を受けている。伝統的な図像の約束事を踏まえつつ、写実やイラスト的表現をミックスして俗っぽさも敢えて辞さず。日本の泥絵の具で書いた看板絵にも通じるあのテイスト。(実は私は昔、アルバイトで映画館の看板描きをやっていたのだが、その話はまた後日…)
この本には、誰もが思い浮かべるインド雑貨の神話絵がカラーで多数収録されており、主要な神々の図像的特徴を確認することが出来る。
また、序にあたる「大衆宗教画の成立」では、現代インド雑貨の「あの絵柄」の源流となった一人のインド人画家が紹介されている。写実と立体表現を宗教画に導入し、印刷技術によって大衆に安価な神像を広めた創始者にあたる画家の物語で、非常に面白い。「あの絵柄」は、この一人の画家の切り開いた地平に、映画ポスターの通俗性をミックスした結果出来上がったものだと言う。
当ブログ「縁日草子」で発表する自作絵は、だいたいポストカード大を意識して表示させている。実はそれは、愛すべきインドの大衆宗教画へのオマージュの意味もあったりするのだ。