
促されるままに、僧は源大夫の頭を丸め、型通り戒を授けた。
こうして源大夫は入道となった。衣を取り替え、首には金鼓(こんぐ)をかけた。
「我はこれよりまっすぐ西に向かい、金鼓を叩きながら阿弥陀仏を呼ばわり、答えが聞こえるまでは決して止まらぬ。仏がお答えにならぬ限り、野山であろうが海河であろうが避けて通らず、ただ西へ西へと進むであろう」
入道はこのように宣言すると、自分に戒を授けた僧に向き直った。
「師匠、御身の申されること、この入道が確かめて参ろうと思う。もし我が呼びかけに仏が答えたならば、御身も仏を信じなさるか」
僧は戸惑いつつも、思わずうなずいてしまった。
すると入道は自分の言葉通り、金鼓を叩きながら「阿弥陀仏よや、おいおい」と呼ばわりながら、一人西を目指して歩き始めた。
郎党たちが後を追わんとすると「邪魔をするな」と怒鳴り、追い散らすので、皆その場にとどまるほかなかった。
人々が呆然と見送る中、入道は西へ西へと歩き去った。
阿弥陀仏よや、おいおい
阿弥陀仏よや、おいおい
阿弥陀仏よや、おいおい
仏を呼ばわるその声は、入道の姿とともに次第に小さくなり、やがて太陽の沈む方角に消えていった。
(続く)