
七日が過ぎた。
旅装束で一人道を急ぐ僧の姿があった。
源大夫を入道に仕立ててしまった、あの僧の姿だった。顔には苦渋の色が濃い。
この七日間というもの、一日として心の波立たぬ日はなかった。まわりの者たちには「極悪人をうまく捌いて追い払った知恵者」と誉めそやされ、感謝されもしたが、それが真実でないことは自分が一番よくわかっていた。
あの時自分は、嘘で塗り固めた仏弟子としての人生を終わらせるつもりだった。偽りのない本音を語ったのであり、源大夫はそれを受け止めて出家したのだ。
自分には源大夫の行く末を見届ける義務があるのではないか。そのように考え始めると、じっとしておれなくなった。急ぎ寺を飛び出して、西へ西へと歩いてきた。
源大夫の足跡を辿るのは、さほど難事ではなかった。
ただひたすらに西へと進み、それぞれの地で人に尋ねてみれば、確かにそのような異形の入道が通過していったと証言してくれた。
本当に、まっすぐ西へ一直線の道のりだった。いくらなんでもこれは無理ではないかと思える深い河でも浅瀬を探さず、高い峰でも回り道を尋ねずに、西へ西へと進んだ痕跡が残っていた。
凄まじい道程を追えば追うほど、僧の中には驚きを通り越して、入道への罪悪感、痛ましさすら芽生え始めていた。
源大夫、もうよい。
私が悪かった。
引き返してきて、私を切るがよい。
しょせん人がどのようにまことを尽くそうと、仏が答えるはずもなかったのだ。
お前はもう、十分のまことを尽くした。
仏を本当には信じておらぬ私の説法などを真に受けて、これ以上の苦行を積んでくれるな……
(続く)