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2007年04月14日

手で読む縄文

 ふと手に取った本に一気に引き込まれ、夢中になって読みふけってしまうことがある。
 例えば私はこんな感じ。

 縄文土器について調べていた。
 まず当然の手順として、書店の歴史コーナーに行き、該当する年代の書籍が並ぶ一画を渉猟する。それぞれに価値のある資料が並んでいる。
 でもどこかしっくり来ない。私が求める参考資料のイメージと、どこかずれる。
 そんな時には発想を転換する。
 縄文土器といえども焼き物の一種。

 そうか、陶芸コーナーを探してみるか。

 そして手に取ったのが、この一冊。



●「いつでも、どこでも、縄文・室内陶芸」吉田明(双葉社)
 この本は、徹底的に「縄文土器を実作する」という一点にこだわった一冊だ。著者の吉田明さんは、陶芸用の土や窯などの現代陶芸の利器をなるべく使用せず、縄文人と同じ条件で土器を制作するノウハウを追及している。
 発掘された土器を史料として観察する学問的なアプローチと違い、実際に自分の手で作ってみることで見えてくる縄文の世界を、情熱的に語る。観察ではなく、手で土と火から読み取った縄文の世界。土器にだけにとどまらない、縄文の生活スタイル全般の世界。
 その世界は表紙に記されたコピーに端的に表現されている。
 
 「どんな土でもつくることができる」
 「道具もいらない」
 「ダレにでもつくれて、簡単に焼ける」
 「どこでも焼けて、失敗しない」
 「省エネルギーで、水に溶けない最低の温度で焼く」
 「どんな大きなものでも焼ける」

 コピーを読んだ瞬間には「ホントかよ?」と浮かんでいた疑問符が、中身を読んでみると実制作の記録によって丁寧に解消されていく。
 縄文人は文明の利器を何一つ持っていなかったけれども、その制約条件こそが縄文土器の素晴らしい形状、デザインに必要な前提条件であったことが、理解できてくる。
 

 読むと誰もが土器が焼き、縄文の世界を体験したくなる一冊!
posted by 九郎 at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 縄文 | 更新情報をチェックする