2007年06月22日

どろのうみ6

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こうして人間の元はじまりの神が揃いました。
月と太陽の二柱「月日親神」は、人魚と白蛇に様々な道具を仕込み、男と女の雛型としました。

「体はできた。でも、あともう一つだけ、足りないものがあるぞ」
月日親神は泥海をキョロキョロ見澄まします。
すると泥の中をニョロニョロニョロニョロ、ぬたくる無数のドジョウがいました。
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2007年06月23日

どろのうみ7

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「ああ、そうだった。このものたちがたくさんいたんだ」
月はドジョウを承知させてもらい受け、全部食べてしまって味わって、人間の魂の材料にしようと思いました。
その数は九億九万九千九百九十九。
そして月は男雛型の人魚にはいりこみ、これが人間の種「いざなぎのみこと」となりました。
太陽は女雛型の白蛇にはいりこみ、これが人間の苗代「いざなみのみこと」となりました。
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2007年06月24日

どろのうみ8

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それから三日三夜の間に、いざなみは種を宿しこみました。
そして泥海の中の一番良いところ「ぢば」に三年三月留まり、七十五日かけて、その周辺に九億九万九千九百九十九人の全ての子供を産みました。
産んだ場所のそれぞれは、今で言うお宮の場所になりました。
生まれた子供はたったの五分(約1.5cm)。
それから五分五分と育って、九十九年後にはようやく三寸(約10cm)まで成長しました。
ところがやっと成人したと思ったら、すぐにみんな出直してしまいました。
それを見て男のはじまり・いざなぎは、ぷいと姿を消してしまいました。

女のはじまり・いざなみは一人になってしまいました。
しかしいざなみには、ねばりふんばり強いカメが道具に仕込まれています。
前にやったやり方のまま、たった一人で再び九億九万九千九百九十九の子数を宿し込み、十月かけて全てを産みおろしました。
この二度目に産んだ場所のそれぞれは、今で言う墓地になりました。
しかしその子らも、五分から生まれ九十九年たって三寸五分まで成人すると、みんな出直してしまいました。

いざなみはまだあきらめません。
三度、同じように子数を宿し込み、全てを産みおろしました。
三度目に産んだ場所のそれぞれは、今で言う、お地蔵様や道祖神を祀る野原の辻になりました。
一度目のお宮、二度目のお墓、三度目の辻が、今でも大切なおまいりの場所になっているのは、この元初まりの時、元の人間が生まれた場所だからです。
その子らも五分から生まれ、五分五分と九十九年かかって四寸まで成長しました。
それを見たいざなみは、はじめてにっこり笑いました。
「ここまで大きくなれば、いずれ五尺の人間になるだろう」
そしてそっと姿を消しました。
すると子供らは、お母さんを慕って残らず出直してしまいました。

いざなみが姿を消してしまった今、もう産んでくれるお母さんはいません。
人間は今度こそ終わってしまうのでしょうか?
いえいえそうではありません。
一度は死んでしまった子らの魂は、お母さんのにっこり笑った顔を思い出して、今度は自分で生まれ変わり始めました。
でもお母さんがいないので、人間の姿がわかりません。
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2007年06月25日

どろのうみ9

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「人間って、どんな姿だったかな?」

色んな姿を考えて、虫、鳥、けものなど、何度も何度も生まれ変わり、死に変わります。

「人間って、どんな姿だったかな?」

何度生まれ変わっても、どうしても思い出すことができません。
生まれ変わりは何度も何度も数え切れないほど繰り返されました。今の人間が色んな生き物の真似ができるのは、この生まれ変わりがあったからです。
そして八千八度生まれ変わったとき、ようやく人間に似たものが生まれました。
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2007年06月26日

どろのうみ10

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八千八度の生まれ変わりの後、やっと生まれた人間に似たもの。
それは一匹のメザルでした。

子供たちは「もうこれ以上に似た姿は思いつかない」と、メザル一匹を残してみんな死んでしまいました。
たった一匹になったメザルはさびしくてさびしくて、今にも死んでしまいそうになりました。

「自分はこんな泥海の中、たった一人になってしまった。このままでいなければならないのなら、もう死んでしまいたい」

そのときです。メザルの心に、そっと何かが入り込みました。
それまでさびしかった心はふるい立ち、どんなことにも負けない気持ちが湧き上がってきました。

「何もいなくなってしまったのなら、自分が産めばいいのだ」

メザルの心に入り込んだのは何だったのでしょう?
それはあの元初まりの時、女のはじまりの道具になった、ねばりふんばり強いカメ、「くにさづちのみこと」の力だったのです。
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2007年06月27日

どろのうみ11

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やがてメザルは、男五人女五人の十人ずつ子供を産みました。
カメの力もはたらいて、その子供らは人間でした。
この子らも五分から生まれ、五分五分と育ってやがて八寸になりました。

長い間、泥海の中を眺めていた月と太陽は喜びました。
何度も何度も、死に絶えては生まれ変わる生き物たちは、だんだん心がかたまり、強くなっていきます。
それがうれしくてならなかったのです。

月と太陽のふわふわうれしい気持ち。
メザルのかたく強い心。

すると泥海がとろりと揺れました。
とっぷりとっぷり波打って、だんだん高い所と低い所が出来てきました。
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2007年06月28日

どろのうみ12

やがてメザルの子らは一尺八寸に育ちました。
子らの成長にあわせて、泥海の高い所、低い所もだんだんだんだんかたまって、天地、海山が出来てきました。

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やがて人間は一尺八寸から三尺にまで成長するようになりました。
一胎に男一人女一人の二人ずつ生まれていたのが、一胎に一人ずつ生まれるようになりました。
そしてとうとうものを言い始めるようになりました。
今の人間が、だいたい三尺になるとものを言い始めるのはそのためです。
元はじまりからここまでにかかった時間が九億九万年。

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さらに人間が五尺になったとき、天地海山は完成し、海から上がって陸地でくらすようになりました。
人間の体に毛が生えそろうと、海山に植物が生えそろい、世界には食べ物がそろいました。
ここまでにかかった時間が九億九万六千年。

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それから人間は地上の食べ物を食べ回って、世界中に広がって行きました。
それぞれの土地で増えに増えて、知恵も高まり、物事が十分わかるようになりました。

そして九億九万九千九百九十九年経ったとき、
元はじまりのあの「ぢば」に、長い間姿を消していた女のはじまり「いざなみのみこと」が生まれ変わっていました。
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2007年06月29日

どろのうみ13

生まれ変わったいざなみのみことは、あまりに長い時間がたっていたので、何もかも忘れてしまっていました。
ごく普通の人間として生き、結婚し、子供を育て、毎日忙しく働きました。
元はじまりの「ぢば」も、それとわかるものは何もなく、ただ田んぼや畑や人々の家が広がるばかりでした。

いざなみが人間としてくらして四十一年たったとき、月と太陽の月日親神が突然語りかけました。

「元はじまりから九億九万九千九百九十九年、やっと約束の日がきたぞ」

いざなみには何のことやらわからず、ただ戸惑うばかりです。

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月日親神はいざなみに、九億九万九千九百九十九年の気の遠くなるような長い長い物語を再生して見せました。
記憶が少しずつよみがえります。
死に絶えても死に絶えても、何度でも辛抱強く産み直し、育て直してきた自分の可愛い子供たち……

いざなみの心に喜びが沸き起こってきます。

「ああ、なんと長い年月だったのだろう。私の子供たちは世界にこんなに満ちている」
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2007年06月30日

どろのうみ14

「これからおまえは何もかも忘れてしまった子供たちに、元はじまりから今までのことを知らせ、陽気遊びの世界を作るのだ」

月日親神は、続けていざなみに語ります。

「このぢばに甘露台を建てれば、天から甘露を降らせてやろう。それを飲めば子供たちは不老長寿になって、誰一人病に苦しむことなく、何の不公平なこともなく、勇んで暮すのだ。私たちはおまえと一緒に、子供たちをずっとずっとながめていよう」

月日親神はいざなみに、その様子を見せてやりました。

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ゆったりとしたやわらかい音楽の中、子供たちが楽しげにうたいおどっているその様子。
終わらないお祭りの世界。
いざなみは本当にうれしくなって、「そうなるとよいな」と思いました。
もしそんな世界が来るなら、私の命をすっかり全部、子供たちにあげてしまってもいい。
そう心に決めて、月日親神と新しい約束をしました。

「どろのうみ」おわり
posted by 九郎 at 00:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする