それは「うを」と「み」でした。

「うを」は人魚、または岐魚(ぎぎょ)。
頭は人間で、肌にはウロコがなく、ぬんべりとまるで人間のよう。
「み」は白蛇(しろぐつな)。
体は長く、肌にはウロコがなくて人間のようです。
二つとも、大きさは今で言うとクジラほどもありましたが、月と太陽にくらべればほんの小さなものでしかありません。
月と太陽がよく確かめたところ、二つとも心は真っ直ぐで、人間の元にするのにふさわしいことがわかりました。
月は語りかけました。
「おまえたちは大変見所があるので、これから人間というものを作る元になってくれないか」
人魚と白蛇はとまどいます。
「何だかよくわかりませんが、そんなこわいことはできません。どうかこのままでいさせてください」
太陽が優しく諭します。
「もし承知してくれたら、すっかり人間と世界が出来上がった時、またこの場所に生まれ変わらせて、人間の親神にしてやるから、一緒に陽気に遊んでくらそう」
人魚と白蛇はためらいながらも承知しました。
「それはありがたいことです。ではわたしたちを使ってください」
月と太陽は喜んで言いました。
「約束しよう。九億九万九千九百九十九年の後、ここでふたたび会うことを」
こうして人間の土台が決まりました。