2007年06月24日

どろのうみ8

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それから三日三夜の間に、いざなみは種を宿しこみました。
そして泥海の中の一番良いところ「ぢば」に三年三月留まり、七十五日かけて、その周辺に九億九万九千九百九十九人の全ての子供を産みました。
産んだ場所のそれぞれは、今で言うお宮の場所になりました。
生まれた子供はたったの五分(約1.5cm)。
それから五分五分と育って、九十九年後にはようやく三寸(約10cm)まで成長しました。
ところがやっと成人したと思ったら、すぐにみんな出直してしまいました。
それを見て男のはじまり・いざなぎは、ぷいと姿を消してしまいました。

女のはじまり・いざなみは一人になってしまいました。
しかしいざなみには、ねばりふんばり強いカメが道具に仕込まれています。
前にやったやり方のまま、たった一人で再び九億九万九千九百九十九の子数を宿し込み、十月かけて全てを産みおろしました。
この二度目に産んだ場所のそれぞれは、今で言う墓地になりました。
しかしその子らも、五分から生まれ九十九年たって三寸五分まで成人すると、みんな出直してしまいました。

いざなみはまだあきらめません。
三度、同じように子数を宿し込み、全てを産みおろしました。
三度目に産んだ場所のそれぞれは、今で言う、お地蔵様や道祖神を祀る野原の辻になりました。
一度目のお宮、二度目のお墓、三度目の辻が、今でも大切なおまいりの場所になっているのは、この元初まりの時、元の人間が生まれた場所だからです。
その子らも五分から生まれ、五分五分と九十九年かかって四寸まで成長しました。
それを見たいざなみは、はじめてにっこり笑いました。
「ここまで大きくなれば、いずれ五尺の人間になるだろう」
そしてそっと姿を消しました。
すると子供らは、お母さんを慕って残らず出直してしまいました。

いざなみが姿を消してしまった今、もう産んでくれるお母さんはいません。
人間は今度こそ終わってしまうのでしょうか?
いえいえそうではありません。
一度は死んでしまった子らの魂は、お母さんのにっこり笑った顔を思い出して、今度は自分で生まれ変わり始めました。
でもお母さんがいないので、人間の姿がわかりません。
posted by 九郎 at 18:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする