
八千八度の生まれ変わりの後、やっと生まれた人間に似たもの。
それは一匹のメザルでした。
子供たちは「もうこれ以上に似た姿は思いつかない」と、メザル一匹を残してみんな死んでしまいました。
たった一匹になったメザルはさびしくてさびしくて、今にも死んでしまいそうになりました。
「自分はこんな泥海の中、たった一人になってしまった。このままでいなければならないのなら、もう死んでしまいたい」
そのときです。メザルの心に、そっと何かが入り込みました。
それまでさびしかった心はふるい立ち、どんなことにも負けない気持ちが湧き上がってきました。
「何もいなくなってしまったのなら、自分が産めばいいのだ」
メザルの心に入り込んだのは何だったのでしょう?
それはあの元初まりの時、女のはじまりの道具になった、ねばりふんばり強いカメ、「くにさづちのみこと」の力だったのです。