調べ物をしていて、先月13日に画家の前田常作さんがお亡くなりになっていたことを知った。
前田常作さんは早くから曼荼羅を現代絵画の画材で描くことを追求しておられた。現代美術と、単なるイメージではない曼荼羅の意義の両立を試みた先駆者だった。
仏像や仏画はまずは儀軌に基づいて制作されることが求められるが、何もかも「昔のまま」だった訳ではなく、素材や表現アプローチは各時代の最先端が導入されてきた。
前田常作さんは曼荼羅にアクリル絵の具と「奥行き」を導入し、仏の姿や風景と曼荼羅をシンクロさせる表現を導入した。その様々な試みは、密教を現代に蘇らせる試みそのものだったと思う。
神仏絵図を描く者のハシクレとして、もう一度画集を開いてみたい。
●「前田常作のアクリル画」前田常作
技法解説書の体裁をとっているが、実質的には前田常作による曼荼羅現代化の詳細な記録になっている。一つ一つの試みが、曼荼羅についての思索にもなっていて、今の時代に仏教図像を描く事の意義を、あらためて考えさせられる一冊。
このカテゴリ、訃報続きだ。
合掌。