最近のスーパーとは違って、一つの建物の中に様々なお店が軒を連ね、店員さんが張りあげる啖呵の声が響き渡る空間だ。
いくつかのフレーズが今でも頭に残っている。
リズミカルで耳に残るメロディ。よく真似して遊んだ。
ヘイラッシャーアァイ、ヘイマイド
ヘイラッシャーアァイ、サアコウテ
サア!コウテコウテコウテコウテ!(拍手とともに)
人ごみでも良く通る声は「塩辛声」と言うのだろうか。ああいう声も、日常的には中々聴けなくなった。
啖呵の声と言えば、なんと言っても縁日の風景。
子供の頃住んでいた家のすぐ近くには神社があって、折々の縁日には夜店が出た。
私は神社の鳥居近くの、斜めに大きく傾いて生えた松の木に登って、夜店の風景を眺めるのが好きだった。
張り出した枝に腰掛けると、雲の上から下界を眺めているようで気分が盛り上がった。
裸電球に照らされた赤い暖簾が幻想的で、テキ屋のあんちゃんの啖呵が夢のように響いていた。
