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大和の西方、日没の方角の秀麗な山。
寄り添うようにそびえる雄岳と雌岳。
大和に背を向けるように二上山頂に葬られた大津皇子。
麓に鎮座する当麻寺の、中将姫にまつわる物語。
大和から西へ竹内街道を抜けると、多数の墳墓が築かれていること。
二上山にまつわる様々なイメージの断片は、近代以降も怪しの物語を生み続けてきた。折口信夫「死者の書」がその代表であるし、現代作家の作品では五木寛之「風の王国」がある。これらの作品は、先行する物語を巧みに取り入れながら、二上山周辺の里山に異様なリアリティを持つ物語を覆い被せていく。
物語を読んでから山野を巡ると、どうしてもそのようなことがあったとしか、思えなくなってくるのだ。
とくに秋のお彼岸の季節、葛城の里にヒガンバナが咲き乱れる今頃は、普段は地下に埋もれている古い物語が、朱の花の形をとって噴き出してくるような雰囲気がある。