ここまで「雑賀孫市」について書いてきたが、主に司馬遼太郎「尻啖え孫市」作中のヒーローのイメージを元に、あれこれ遊んでみたものだ。
司馬遼太郎作中の「孫市」は、先行する様々な物語の中の「孫市」を下敷きにし、「阿弥陀信仰を持たない」と言う要素を加えて成立したきわめて魅力的なキャラクターだが、戦国時代に実在した雑賀衆のリーダーの一人である「鈴木孫一」とは、重なっている部分もあり、違っている部分もある。
「孫市」の記事を書くために資料を読み進めるうちに、実在の人物としての「孫一」や「雑賀衆」について興味がどんどん広がってきた。
一向一揆や海の民など、今まで関心を持ちながらも手を出せないでいた領域ともつながって、何かカタれそうな気がしてきた。
雑賀衆をテーマにした本の中から、入手しやすい一冊についてメモしておこう。
●「戦国鉄砲・傭兵隊―天下人に逆らった紀州雑賀衆」鈴木真哉(平凡社新書)
雑賀衆を扱った専門に扱った書籍が少ない中、史実として確認できる雑賀衆の姿と、物語の中の姿を丁寧に区別しながら、実像を浮かび上がらせた一冊。
司馬遼太郎「尻啖え孫市」に描かれる姿とは違うが、中央から離れた紀州の地で、独自の方法論でしたたかに生き抜いてきた雑賀衆の姿が描き出されている。
鉄砲を用いた戦術についても詳しく述べてあり、色々と眼からうろこが落ちるような読後感があった。
しばらく充電してから、このカテゴリ「和歌浦」再開します。
(こういう予告をしながら果たせなかったことも多々ありますが……)