2010年10月10日

外法曼陀羅

 この1,2年、夢枕獏の作品が数多く刊行されている。
 長く続いたシリーズものの最新刊が出るのに合わせて、旧作が再刊行されているのだ。
 夢枕獏については、以前にいくつか記事にしたことがある。
 夢枕獏1
 夢枕獏2
 夢枕獏3
 夢枕獏の西域幻想
 今年八月末には、多くのファンが待ちわびていたであろう、キマイラ・シリーズの最新刊「玄象変」が刊行された。数巻続いていた「昔語り」の流れがいよいよ収束し、物語が現代に返ってきたところまで収録されている。

 個人的に、この最新刊にはかなり「驚くべき」描写を見出した。
 キマイラ・シリーズには物語の核心となる一つの絵図が設定されている。「外法絵」とか「外法曼陀羅」と表現されている絵図で、「人が獣になる」ための「外法」が図示されているとされている。その絵図はとあるチベットの密教寺院の隠し部屋に存在し、描いたのはその「外法」を自身で試みた天才絵師であり、他に何枚かその写しが存在するらしいことが、これまでの既刊分の物語の中で判明していた。
 その架空の曼陀羅に関する描写が、キマイラという物語の前半のクライマックスになっており、高校生の頃の私は、はじめて読んだその凄まじい描写に衝撃を受け、「いつの日かこの曼陀羅を自分で描いてみたい」と夢想したものだ。
 それからはるかに時は流れ、私も「若気の至り」という言葉を正しく理解できる年齢になった(笑)
 インド、日本、チベット等の密教図像や、その教義について、高校生の頃より多少は理解できるようになった今となっては、キマイラ作中の「外法曼陀羅」を、文字に書かれた描写そのままに図像で再現することは、ほぼ不可能であることはわかった。
 詳しくは書かないけれども、いくつかの点で「これをチベット密教図像風に描くのは無理」と、判断せざるを得なくなったのだ。そもそも、作中の文章表現そのものが、明確な図像を想定したものというよりは、「外法曼陀羅」というモチーフの持つ「力」とか「勢い」を描くことを主目的としていると思われ、実際に「描く」ための解説にはなっていないのだ。
 さらに、最新刊を読んでみたところ、図像の描写にこれまでの説明とはっきり違った表現が盛り込まれており、ちょっとショックを受けている。
 その改変部分には、元々の描写より、ややチベット密教図像に近づけている印象があった。著者の中で設定に何らかの変更があったのかもしれないし、あるいは同じ図像ではなく、バージョン違いだという暗示なのかもしれない。

 チベット寺院の隠し部屋にこもり、自らの狂気を吐きだすように曼陀羅を描くということを、そのまま実行することは、今生の私にはもう不可能なことはよく理解している。しかし、まだ「自分なりの表現で外法曼陀羅に挑む」ということ自体は諦めていなかったりする。私はけっこう執念深いのだ(笑)
 新しく書き加えられた描写により、ちょっと何か描けそうな感じがしたので、一枚スケッチしてみた。作中の「外法曼陀羅」そのものの再現ではなく、描写から触発されたイメージスケッチと言ったところ。
 もしこのブログ読者の中にキマイラシリーズのファンがおられるなら、一つのお遊びとして楽しんでほしい。

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posted by 九郎 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 神仏絵図覚書 | 更新情報をチェックする