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2010年12月29日

絵本「かさじぞう」

 今年も残すところあとわずか。
 この時期になると思い出されるのが「かさじぞう」のお話だ。
 人気のある昔話なので、細部には様々な異同があるが、大筋では以下のようなお話になっている。

 大晦日に貧しい老夫婦が正月の準備ができずにいる。
 仕方なくおじいさんは傘を売りに出るがまったく売れない。
 その帰り道、雪に降り込められた六地蔵を気の毒に思って傘を全部施してしまう。
 欲のないおばあさんは「それは良いことをした」と暖かくおじいさんをむかえる。
 その夜、六地蔵が恩返しに宝を持ってきて、老夫婦はその後幸せに暮らす。

 昔話なので本来なら誰かに語って聞かせてもらうのが一番なのだが、語り手がいない場合は本で読むことになる。
 ところがあまりに有名すぎて本も多数出ているため、あらためて読もうとするとけっこう迷う。
 そんなとき、当ブログでお勧めするのはこの一冊。



●「かさじぞう」瀬田貞二 赤羽末吉(こどものとも絵本)
 何よりも赤羽末吉の絵が素晴らしい。
 淡い墨絵の雰囲気が、水気が多くしんしんと冷える日本の雪景色を見事に再現している。
 私自身は今まであまり雪の降らない地域で過ごしてきたのだが、それでも何年かに一回の積雪の経験から、この絵の表現する雪の重みは理解できる。
 色彩の少ない世界の中で、ほんの少しの温もりに手をかざす風情が堪能できる。
 ただ、少しだけ残念なのが、おじいさんが六地蔵に施したのが六体とも「傘」であったことだろうか。
 私が子どもの頃から親しんできたお話では、六体目のお地蔵さんに施されたのはおじいさんのかぶっていた「手ぬぐい」で、もうその情景は頭の中に刷り込まれてしまっているのだ。
 これは個人的な思い入れの範囲なので、作品の評価には直接関係ないことではあるけれども。

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posted by 九郎 at 11:47| Comment(0) | TrackBack(1) | 地蔵 | 更新情報をチェックする