当ブログでは雑賀衆や石山合戦について、継続的に記事をアップしています。
和歌浦
石山合戦
他の記事も進めながらぼちぼち本を読んで勉強しているのですが、最近読んだものの中から参考になりそうなものを紹介しておきます。
●「歴史REAL vol.1」(洋泉社MOOK)
一月に発行されたDVD付きムック本。
やや熱の冷めてきた感のある昨今の戦国ブームだが、たまにこうした「当たり」の特集本が出るのでありがたい。
内容は当ブログでも何度か紹介してきた鈴木真哉や、藤本正行の独自な研究を中心に、豊富な写真や図版で詳細に解説したもので、やや極論に傾いている面はあるが、一読の価値はある。
見所はなんといっても付属DVDに収録された火縄銃の演武だ。
紀州の鉄砲術の伝承者が実弾を込めて発砲する様を、各方向からのスーパースロー映像で解説している。
実弾を撃った場合と空砲の場合の微妙な発砲音の違い。
引き金を引いてから火皿が小爆発し、筒の中の火薬に引火してから発砲されるまでのタイムラグ。
筒先から走る火柱だけでなく、火皿から真横に走る熱と衝撃波の考察。
私も何度か空砲による鉄砲演武は見たことがあったのだが、このDVDで認識を新たにした要素がたくさんあった。
火縄銃の実弾発射映像は探すとなかなか見つからないのだが、これだけの内容で本体価格880円は絶対に安い!
戦国ファン必見!
●「忍者武芸帳影丸伝」白土三平((レアミクス コミックス)
いわずと知れた白土三平の「カムイ伝」と並ぶ代表作。忍者活劇としてはこちらの方を推す人も多い。
復刻版が刊行されたのを機に、久々に読み返してみたら、舞台になっている時代背景はまさに石山合戦そのものだった。
制作された時代的なもの、あくまで忍者活劇である点などから、史実の参考にはならない。
顕如が老人になっていたり、火縄銃がライフルにしか見えなかったり、雑賀衆の存在感が薄かったりするが、何しろ無類に面白い。
石山合戦を背景にした活劇の一つとしてお勧め。
●「近代ヤクザ肯定論 山口組の90年」宮崎学(ちくま文庫)
直接戦国時代や雑賀衆、石山合戦を扱った本ではないが、戦乱の世の大坂本願寺や紀州・雑賀の地で何が起こっていたのかを考察するための一助となる本。
戦前、戦中、戦後の神戸で、差別され、困窮する下層労働者の中から、一種の互助組織として立ち上がってきた山口組。
警察力の崩壊した戦後の混乱の中では、神戸の治安を守ることに一定の役割を果たし、後に三代目・田岡一雄の元で日本最大のヤクザに成長していく過程を、冷静な筆致で詳述している。
国というものが民衆を統治するための唯一の正当性は「飢えさせず、治安を守る」ことでしか担保されないが、その最低条件が崩れ去った乱世において、平時には「悪」の領域に押し込められていた力が重要な意味を持ち始める。
おそらく、戦国時代の紀州・雑賀の地でも、近世・神戸とよく似た構図があったのではないかと想像してしまう。
ヤクザという存在を、短絡的に排撃するのではなく、またロマンティックに美化するのでもなく、それを通して昭和史というものを通観する力作。
どの本も、強烈にお勧め!