当時は「終末ブーム」の世相もあり、子供向け雑誌の特集ページ等でも様々な「近未来に想定される終末」が紹介されていた。
中でも「石油資源の枯渇による終末」は、非常に大袈裟な描写でイラスト表現されており、私を含めた子供たちの恐怖を煽った。
廃墟となった都市、暗く凍てついた風景、絶望に打ちひしがれる人類。
当時は新聞でもTVでも学校でも「石油はあと三十年でなくなる」とはっきり断言していたので、子供の目には非常にリアルな未来像としてそのイラストは映った。
そして三十年経ってみると、この通り。
なんともバカバカしい限りである。
相変わらず「石油はあと40年ほどでなくなる」という言説がまかり通っている。
一応、理屈では「新しい油田の発見や、採掘技術の進歩により、年限が延びた」と言うことになってはいる。
しかしそのような説明を鵜呑みにできるほど、私も純真無垢ではなくなってしまった(笑)
「あと30〜40年」という年限があくまで「現時点で採掘可能な原油の残量」に過ぎず、もっと言えば石油を扱う巨大企業の営業戦略としてもっとも効果的な期間なのであって、実際の埋蔵量とはとくに関係がないのだろうと判断を下せるくらいの知恵はついた。
実際の原油埋蔵量は、1000年分あるという数字や、もっとはるかに長い数字も存在する。
他の化石燃料の埋蔵量については、石炭は2000年、天然ガスは500年と言われている。
個々の数字に対しては様々な意見が当然ある。
ここでは詳細な議論については立ち入らないが、少し関心を持って調べてみれば「実際の埋蔵量」が数十年分しかないということは絶対にないと言うことは、誰にでも納得できるはずである。
手始めにまずはこのあたりから読んでみてもいい。
ごく常識的な判断として、本当に原油が40年でなくなるとしたら、脱石油にむけて先進各国や石油メジャーが本気で技術開発に取り組んでいなければおかしいのだが、もちろんそんなことはない。
推して知るべしである。
昔はよく「限りある石油を節約するためにも原発が必要」という説明がされていた。
今はさすがに原発推進派ですらこんなアホな推進理由を口にする者は少なくなったが、それでもまだたまにTV等で見かけることがある。
そういう人間は、不勉強であるか、故意に騙そうとしているかのどちらかであるから、そのような解説を聞いたら、以後はその論者の意見は黙殺して差し支えない。
一応確認のためにまとめておく。
1、現代文明が「石油文明」と呼ばれるのは、エネルギーとしての利用のほかに、プラスティックをはじめとする様々な合成素材の原料に使用されているからである。
2、石油の広範な用途の内、原発で代替できるのはせいぜい質の劣った重油を燃やす火力発電の分野だけであり、素材の代替にはまったくならない。
3、原発を稼働するためにはエネルギー、素材含めて、膨大な量の石油が必要である。
4、したがって、原発を稼働することはまったく石油の節約にはつながらず、石油の用途全般を代替することなどできるはずもない。
原発はあくまで石油文明内のほんの一部であって、石油が枯渇すればそもそも原子力も成り立たない。そしてウラン燃料はおそらく化石燃料よりもはるかに早く枯渇する。
その後には膨大な石油資源を費やしながら管理しなければならない放射性廃棄物だけが残る。
(続く)