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2012年12月12日

アホな絵描きのハシクレを反原発弁士に仕立てるネタ本

 ここまで、原発がその危険性だけでなく、経済性においても環境に対する負荷の面においても劣った技術であり、日本の全原発を即時停止しても何の問題も起こらないということについて、講釈を垂れてきた。
 科学技術に対して特に素養も何もない人間が、このようにいっぱしの弁士面ができてしまうのは、もちろんネタ本が存在するからである。
 一応ネタ本の内容の中から自分なりに確認し、消化できたと思われる事柄について、語り口を選びながら書き進めてはきたが、元になる情報がネタ本の受け売りであることには変わりはない。
 一読しただけで一介の絵描き素浪人をして反原発弁士に仕立て上げてしまう、強烈無比なネタ本とは、以下に紹介するものである。


●「原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論」広瀬隆(集英社新書)
 言わずと知れた異能の語り部、広瀬隆の最新刊である。
 津波による原発事故の可能性を2010年に警告した広瀬隆は、3.11後も多くの著作を通して一貫した主張を行ってきた。

1、福島を中心とした汚染地域の子供たちを、一刻も早く国の責任において疎開させるべし。
2、全原発を即時停止し、燃料棒を抜き取るべし。
3、放射性物質は、一か所に大量にまとめてはならない。
4、全原発を即時停止しても電力が不足することは無い。
5、太陽光、風力よりも、ガスを中心にした最新の火力や燃料電池をまずは推進すべし。

 今回の新刊では、これらの主張のうちの「4、5」の論点について、詳細に語り尽くしている。
 電力会社の垂れ流す「電力不足」という恫喝を、誰にでも確認可能な公開情報を元に完膚なきまでに叩き潰す手際は、相変わらず痛快だ。
 新書なので2〜3時間もあれば誰にでも通読でき、新エネルギー技術は既に実用化段階に達していること、日本の未来に対して原発は有害無益でしかないことがきっちり「実証」されている。
 報道ぐるみで「脱原発による電気料金高騰」という悪質な虚偽情報が蔓延する昨今、この一冊はその嘘を暴く最強の照魔鏡として機能するに違いない。
 全国民必読!


●「新エネルギーが世界を変える―原子力産業の終焉」広瀬隆(NHK出版)
 3.11後の2011年刊。
 前掲新書は、実はこちらの本の内容をコンパクトにまとめたものである。
 新エネルギーの技術解説はこちらの方がはるかに詳しく、広瀬隆の「怒り芸」がちょっと苦手な人にとっては、むしろ本書の方が落ち着いて読めるかもしれない。
 この本、特に後半の燃料電池に関する章を読んでいると、自身が技術者であった広瀬隆の、新技術に対する愛情と知的興奮が生き生きと伝わってくる。
 広瀬隆は、もし原発という魔物と出会っていなければ、こうした技術解説の本を嬉々として書き続けていたのではないだろうか。
 私は根っからの文系人間であるが、それでも子供のころは男子として当然、発明・発見の物語をこよなく愛していた。
 幾多の技術者たちがしのぎを削って新しいものを創り出す過程は、久々に私の中の「メカ好き男子」の魂を呼び覚ましてくれた。
 単なる反原発の次元を突き抜けて、技術立国日本の未来に実現可能な明るい夢を描かせてくれる好著である。
 かつての「メカ好き男子」よ、今すぐ手に取るべし!
posted by 九郎 at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする