唯一のはっきりした原発推進政党、自民党が歴史的圧勝を遂げた今回の衆院選。
選挙前から圧勝の情勢は報じられていたが、当の自民党候補者ですら「とてもそんな手ごたえは感じられない」と警戒心を強めるケースが多々あったという。
それもそのはずで、獲得議席数と言う表面だけ見れば自民圧勝で間違いないのだが、実際の得票数に注目してみると、全く違った実態が見えてくる。
今回自民が獲得した得票数は、選挙区2564万票、比例区1662万票で、大敗した前回09年衆院選より選挙区では165万票、比例区では200万票以上減らしているのである。
これでは選挙戦中に有権者の生の反応に接した自民候補者が、圧勝報道に疑問を抱いたのも無理はない。
前回大敗時よりも冷やかな有権者の様子を、肌で感じていたはずなのだ。
今回の自民圧勝は、「自民が有権者から圧倒的な支持を受けた」結果ではなく、「前回ボロ負けした時点より更に支持を減らした自民」が、「奢り高ぶって壮大に転んだ民主」より、相対的に転び方が少なかっただけのことなのだ。
民主のあまりの支離滅裂ぶりに余裕の選挙戦を戦ったはずの自民が、なぜ得票をかなり減らしてしまったのか謎である。
まず真っ先に思いつくのは、調子に乗っておかしなネット右翼みたいな路線を強調しすぎた安倍が、前回惨敗時に支持してくれた層からみてもキモかったのではないかという理由であるが、本当のところは分からない。
民主が前回獲得した大量の得票は、今回他党にも多少は流れたのだろうが、最も大きな移動先は投票率で減った約10パーセント、つまり棄権に回ったということだろう。
結果的に大幅後退してしまった衆院の脱原発勢力だが、今後は「今回棄権に回った票」を、どのように掴んでいくかにかかっている。
そのためには、一部ストイックで真面目な層だけを対象にした脱原発ではなく、広く一般にアピールできる、経済面もきちんと視野に入れた、まっとうな戦術をとらなければならないのだ。
