2013年01月11日

祭礼の夜4

 1月11日の残り福で十日戎が終わると、華やいだ年始の雰囲気もほぼ終息する。
 あちこちの屋台でぼちぼちしまい仕度が始まる中、壷焼きを肴に一杯やりながら縁日の風景をながめ、余韻を楽しむ。
 コップ酒をすする目の前を、おっちゃんが腹をさすりながら、
「あ゛〜〜〜、粉モンはもうええわ……」
 と呻きながら通り過ぎていく。
 粉モンというのはお好み焼きやタコ焼きなどの、小麦粉を主成分とする食べ物のこと。

 おっちゃん、なんぼほど食うたんや(笑)

 各地の祭りでヤクザ、テキ屋排除が進行しつつあるが、十日戎はまだ露天が低調になるほどの影響が出ていないように見え、一安心する。
 いや〜、楽しいなあ。

 十分に楽しいゑべっさんの縁日なのだが、ふと物の本で仕入れた知識を思い出す。
 昔の縁日、露天が並ぶ「高市(たかまち)」は、もっと啖呵の声で騒々しい音の風景があったのだろうなと想像する。
 今の露天はせいぜい客を呼び込む掛け声がたまに響くくらいだが、昔は各露天がそれぞれに大道芸のような話芸を持っていて、物見高い客を舌先三寸でけむに巻き、怪しげな商品を捌いていたという。
 現代人がイメージしやすいのは、映画の画面で見る寅さんの啖呵売や、今でも芸能として保存されている「ガマの油売り」だろう。
 テキ屋、香具師の口上については、以前何度か記事にしたことがある。
 
 啖呵の達人
 啖呵の達人2

 今現在、入手しやすい資料としては、以下のCDブックがある。

●「香具師口上集」室町京之介(創拓社出版)

 今はもうほぼ絶滅してしまったテキ屋の音風景は、古くは民間宗教者の祭文語りや説教節、絵解き口上に淵源を持つ。
 今でもわずかに残っている祭文語り等の音源を聴いてみると、非常にリズミカルでほとんどラップのように聴こえるものもあって、面白い。
 そんな「語り」の中の一つに、例えば不動尊祈り経があって、当ブログでも音遊びとして取り上げてみたことがある。

【真言〜不動尊祈り経】(4分20秒/mp3ファイル/8MB)
非常に怪しいです! ヘッドフォン推奨!

 近世ではこうした民間宗教者の「語り」が、一部「大道芸」に姿を変えて、「チョンガレ」「チョボクレ」などと呼ばれながら、滑稽・諧謔と鋭い風刺で庶民の喝采を浴びていた。
 時には放浪する大道芸人のネットワークを巧みに利用し、情報伝達やオルグの手段として一揆のエネルギー源に活用した例もあったようだ。

●『「世直し歌」の力―武左衛門一揆と「ちょんがり」』五藤孝人(現代書館)

 残念ながら現代の神社仏閣の縁日からは、このような刺激的な音風景は姿を消してしまった。

 ただ、今であれば、各地の原発抗議行動のシュプレヒコールやメガホンアピールの中に、そうした「世直し歌」の系譜が続いていると見ることもできる。
 とくに、各地の抗議行動を遍歴しながら、巧みなリズムで盛り上げるパーカッション奏者やラッパーの皆さんに、往時の「道々の者」の姿がダブって見えることがあるのだ。


 そんな酔いにまかせた空想の中、今年の十日戎の祭礼の夜も、賑やかに過ぎ行く。
posted by 九郎 at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 縁日の風景 | 更新情報をチェックする