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2013年01月22日

遍路・防災・アウトドア 6

 今回はテントのお話。

 二十歳そこそこの頃から、熊野周辺の遍路を始めた。
 その頃はアウトドアに関する知識も技術も何もなく、ただただ気になるルートを歩き続けるだけだった。
 今も覚えている最初の遍路は、奈良県の五條から熊野本宮へと続く「十津川路」を辿った。

 熊野の各古道経路については、以下の図を参照。クリックすると拡大します。
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 十津川路は、現在はほぼ国道に吸収されてしまっており、基本的には舗装道路を延々と歩くだけなので、とくに登山技術は必要ない。
 ただ、歩道のない箇所が多いで、ドライバーの皆さんの邪魔にならないよう、また事故に遭う危険がないようを注意しなければならない。
 夏季だったが、寝袋もなにも持っていなかったので、バス停や公園など、夜露をしのげる場所で野宿しながら、三日ほどで熊野本宮に着いたと記憶している。

 二回目以降は、さすがに寝るための装備は考えるようになった。
 ちょうどホームセンターで、2000円ほどの一人用の格安テントを売っていたので、試しに購入した。
 使ってみると、テントというよりは「テント型のブルーシート」みたいな感じで、まさに値段相応の代物だった。
 色も水色で、遠くから見るとまるでゴミ袋が放置してあるように見えた(笑)
 とにかく「安いこと、軽いこと」だけが取柄で、一度雨に降られたときは速攻で雨漏りした。
 そんな「テント型ブルーシート」であっても、私の場合はそもそも何にも持たない野宿から出発しているので、屋根が見当たらない所で夜露が防げるだけでもありがたかった。
 それなりに気に入って使っていたのだが、別れは突然訪れた。
 あるとき、人里近い川原に設営して、あたりを二時間ほど散策して帰ってくると、きれいさっぱり消失していたのだ。
 盗まれたのかもしれないが、「ゴミ袋と間違えて回収されたのではないか?」という疑問を、私は未だに打ち消せずにいる……
 
 3.11以降、防災グッズを探している時に、この懐かしの「テント型ブルーシート」によく似たものを見つけて、思わず笑ってしまった。


●GIGANTIC TREE ドームテント

 形や色は多少違うけれども、値段といい、性能といい、そっくりである。
 屋外用のテントとしてはまともに使うことはできないと思うが、防災グッズとしてなら使い道はある。
 ドーム型なので、ペグを打たなくても自立することから、災害時に体育館などの屋内避難所で設営すれば、プライベートの確保に役立つだろう。
 私は阪神大震災の被災者でもあるので、混み合った避難所で、一応人目を避けられる空間のありがたさは、よく知っている。
 防災グッズとして考えるならば、この手の安価なテント(?)のコンパクトさと軽量さは、持ち運びの際の利点になり得る。
 折紙つきではないけれども、
 「まあ、高いもんじゃないし、今現在テントが家にないなら、いざという時の備えに一つ持っておいてもいいんじゃない?」
 という程度にはお勧めできる。

 大した品ではないと知りつつ弁護してしまうのは、私の中に懐かしの「テント型ブルーシート」への愛着が、まだ少しばかり残存しているせいかもしれない……

 私の初代テントは、遍路の途上で「行方不明」という結果に終わった。
 二代目はさすがにもう少しマシなのを買おうということで、一応アウトドアメーカーのものを購入した。
 現在でも、仕様は多少変わっているようだが、同等製品は販売されているようだ。


●LOGOS ツーリングドーム

 一人用テントとしては十分な品質で、さほど高価でもなく、収納時の体積・重量も、なんとか背負って歩ける程度。
 私の遍路旅には条件がよく合っていたので、けっこう長く使っており、今でも使用可能。
 フライシートの面積が小さいので結露はあるが、ソロテントの定番の一つではないかと思う。

 ただ、私の熊野遍路が回数を重ね、経験値があがってくるにつれ、テントを担いでいく頻度は徐々に減っていった。
 各地の快適な「野宿ポイント」がわかってくると、「屋根」の必要性が減ってきて、寝袋とブルーシートがあれば大体事足りることが分かってきたためだ。
 このあたりは本格的な「登山」と違い、人里からあまり離れることがない「遍路」の特徴だ。

 考えてみれば、昔のお遍路さんも、基本は野宿だったことだろう。
 それで野垂れ死にした人も多かっただろうけれども。

 死なない程度になるべく昔の人に近い遍路を志す私は、なるべく荷物を少なく、シンプルにする方向に進んできた。
 そんな私にぴったりな装備を、最近一つ見つけた。

 以下、次回。

【追記】
 上の方で紹介した「テント型ブルーシート」だが、写真整理をしていたら、何枚か撮っていたものを見つけた。

yamagoe018.jpg


 もう20年ほど前になるか、私がはじめて所有し、すぐに失ったたテントだ。
 この写真を見ること自体が10年以上ぶりだと思う。
 構造などは全く忘れてしまっていたが、写真から判断すると一応ドーム型で、ポール1本ペグ4本で固定するタイプのようだ。
 自立はしないだろうが、とにかく軽そうだ。おそらく1.5キロ以下だろう。
 まだアウトドア初心者の頃で、夜中に雨漏りして途方にくれたのも、今はいい思い出だ……