昨年一年間、NHK大河ドラマ「平清盛」を、なんだかんだと文句を垂れながらも観続けた。
ブログの記事もそれなりの頻度で書いた。
久々に観たNHK大河ドラマ 平氏の時代と平家琵琶 「今様」を今うたうなら 「今様」を今読むなら 曼荼羅なめんなよ マイヒーローは今も 愛と憎しみの大河「平清盛」 通常、本格的な「武士の世」の到来と理解される源頼朝の鎌倉幕府に先駆けて、平清盛がその先行形態を作り上げていたのではないかという視点。
瀬戸内を中心とした海上交易、海賊、水軍にスポットライトを当てる視点。
白拍子や今様など、当時の芸能を後白河院を軸に捉えなおそうという視点。
やりたいことはよくわかる。
その志は買う。
しかし、そのやり様はないだろう。
久々に大河を一年通して観続け、以上のような感想を持った2012年だった。
「平清盛」を視聴したことで日曜夜に大河を観る習慣が復活し、続く「八重の桜」も観ている。
一言でいうと、「清盛」に頻出したような「明らかに変なシーン」が見当たらない、堅実な作りのドラマだと思う。(あ、書きながら一個思い出した。コーモリ傘で日本刀の打ち込みを受けたら、普通死にますw)
主演キャストに主人公のローティーン時代を演じさせるのは、観ていて辛いのでいい加減やめた方がいいと思うが、それは毎度おなじみのNHK大河の風景ではある。
私は戦国時代の鉄砲集団
「雑賀衆」に関心を持っているので、主人公・八重の家の砲術師範という設定に興味をひかれた。
江戸時代を経過した砲術がどんな描かれ方をするか楽しみだったのだが、今のところさほど詳細な砲術描写は出てきていない。
それでも面白い。
面白いのだが、「清盛」に続いて視聴率は振るわないらしい。
時代設定は幕末・維新期なので、テッパン人気の戦国時代ほどではないが、これまでの例から考えれば、まずまず数字の取れるはずの時代である。
私の個人的な感触では、ウケる大河の時代設定は、大雑把に言うと以下のような順位ではないかと思う。
戦国>幕末・維新>それ以外
主人公・八重だけでは地味になるのが明らかなので、当面の実質的主人公として八重の兄を置き、その視点から見た幕末・維新の著名な群像を描いているのは上手いと思うのだが、あまりウケていないらしい。
どうやら視聴率とドラマの出来不出来はあまり相関関係がないのではないかという気がしてくる。
昔の大河が数字を取れていたのは、一般視聴者の間に、軍記モノや講談、歌舞伎などの伝統芸能を通して流布された「歴史モノガタリ」と呼ぶべきものが共有されていたことが大きいのではないだろうか?
そうした「歴史モノガタリ」は、必ずしも史実そのものではなく、フィクションの要素も多いのだが、日本史を題材にしたTV大河ドラマを観る場合に、「お勉強」になってしまうストレスを感じさせることなく楽しむための基礎知識になっていたことだろう。
高い視聴率を取るためには幅広い年代にチャンネルを合わせてもらう必要があるはずだが、残念ながら年々「歴史モノガタリ」を共有する人口は減っている。
歴史モノは、かつての「一般教養」から「一部マニアの探求素材」に移り変わってきている。
若い世代がかろうじてついてこれるのは戦国と幕末維新、もっとはっきり限定すれば、信長と竜馬周辺のモノガタリだけではないかとも思う。
NHK大河は、もう「視聴率を取ることを当然のように期待される」という前提自体が、無理ゲーと化してきているのかもしれない。