2014年01月24日

「満腹感」と「満足感」


●「炭水化物が人類を滅ぼす」夏井 睦(光文社新書)

 前回記事で、上掲本に紹介されている「糖質制限ダイエット」について触れたが、この本はいわゆる「ダイエット本」ではない。
 このブログの記事を読んで興味を持ち、詳細な「糖質制限ダイエット」の解説を求めて手に取ると、ちょっと戸惑うかもしれない。
 この本の前半3分の1では、外科医である筆者が自分で糖質制限を試みた体験談と、ごく簡単な注意点を紹介してある。
 私の場合はすでに我流でやっていた「主食を減らす減量法」が、たまたまゆるめの糖質制限になっていた。
 だからこの前半部だけでも自分の体験に照らして十分納得でき、読後にはより合理的に体重を減らすのに役立てることができた。
 もし知識・経験0の状態から糖質制限ダイエットのことを知りたいなら、まずは筆者ご自身のサイトを覗いてみることをお勧めする。
 
 この本の後半、残り3分の2を占めている内容は何かといえば、筆者が糖質制限生活を通して考えた、一種の「文明論」である。
 おそらくこの部分に反発したり、胡散臭さを感じたりする読者も多いことと思うが、私はこういう「与太話」(言葉は悪いが)の類はけっこう好物だったりする。
 何しろ私自身が神仏与太話Blog「縁日草子」の管理人ですから(笑)

 と言うことで、今回の記事ではこの本の中から、「神仏与太話ブロガー」である私・九郎が、とくに面白いと思った内容について紹介してみようと思う。

 この本の中で、とりわけ納得できた内容として、食事時に感じる「満腹感」と「満足感」の区別が挙げられる。
 以下、私自身の経験に照らしながら、その違いについて書いてみよう。

 コメのご飯をかき込んで腹一杯になったときの感覚は誰にでも経験があると思う。
 あの、ちょっとぼんやりして眠くなるような、何とも言えず快い幸福感や酩酊感は、また格別だ。
 減量前の私が長らく「ご飯真理教信者」であったのも、あの得も言えぬ満腹感を愛してやまなかったからだ。
 体重を減らそうと思い立って主食を減らし始めた当初は、あの快感を味わえなくなったことを物足りなく思った。
 主食を減らした分、おかずは多少増やしているのだが、炭水化物以外のおかずではあの満腹感は生じないのだ。
 しかし、しばらく我慢して主食減らしを続けているうちに、炭水化物をかき込んだことで得られる「満腹感」とは別の感覚があることに気付いた。
 炭水化物の満腹感に比べるとごく微細な感覚なのだが、落ち着いて食事をしていると、「ああ、この食事量でもう十分だ」と感じる瞬間が来る。
 その体感に従って箸を止めれば、体重が増えるほど食べ過ぎることはないのだ。
 この本の筆者はそれを「満足感」と表現している。
 個人的には、この感覚をつかめるかどうかが、炭水化物を減らすタイプの減量法に成功するかどうかの分岐点ではないかと思う。
 私の場合はよく噛んで落ち着いて食べることでその感覚に気づくことができ、体重の漸減につなげることができた。
 そして次の食事までに空腹を感じることも少なくなった。

 炭水化物を腹いっぱい詰め込んだことによる「満腹感」は意外に持続時間が短い。
 2〜3時間もたてば小腹がすいてきて間食の誘惑に駆られる。
 そういう時は「ちょっと甘いものでもつまむか」とか、「おにぎり一個ぐらいは食べておこうか」とか、「軽くカップ麺でも」とか、やはり糖質を含む食べ物を身体が求めがちだ。
 この本の筆者はそうした欠乏感を、一種の禁断症状ではないかと考察している。
 糖質を摂取した後の血糖値の上昇は快感を伴っており、時間経過とともに血糖値が下降すると、その分だけ無性に糖質に対する欲求が昂じてくるのではないかと言うのだ。
 糖質には糖質を呼ぶ習慣性があるのではないか?
 それはニコチンやアルコール依存の状態とよく似ているのではないか?
 私たちが普通「空腹感」とか「満腹感」だと思っている感覚は、実は糖質に対する「欠乏感」や「充足感」である場合が多々あるのではないか?
 私は幼い頃おばあちゃん子であったせいか、酒飲みのくせに和菓子好きで、おまけに無類のご飯好きでもあったので、このあたりの考察には耳の痛さを感じながらも、深くうなずいてしまうのだ。
 
 ここまででも十分刺激的なのだが、この本の筆者の「仮説」はさらに拡大し、人類と穀物の出会い、世界各地の神話で語られる穀物への神聖視には、糖質のもたらす肉体的な快感が関わっていたのではないかと説きすすめる。
 この辺りになると読者の賛否の分かれるところだと思うが、神仏与太話Blogの管理人にとっては面白くて仕方がなくなってくるのである……
(続く)
posted by 九郎 at 21:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 身体との対話 | 更新情報をチェックする