ちょっと面白いニュースがあった。
人気アニメ「妖怪ウォッチ」の新発売のオモチャが、あまりの人気で品薄になり、買えなかった子ども達やその両親の中に、自作を試みるケースが多発しているそうなのだ。
確かに検索してみると、100均素材を使った作例や、折り紙の作例など、身近な材料で巧みに作っている皆さんの健闘ぶりがうかがわれる。
動画サイトでも作り方解説が各種アップされている。
このオモチャの品薄ニュース、受け取りかたが大体二通りに分かれるようだ。
一つは、子どもの欲しがるオモチャが入手できなかった家族の、涙ぐましい物語として。
もう一つは、オモチャが手に入らないなら自分で作ってしまえという、ある意味で「古き良き時代」が帰ってきた懐古の物語として。
私は当然、後者の感想を持つ。
なにしろ工作をテーマにした物語を手間隙かけてでっち上げてしまうような人間である。
今回話題になった「妖怪ウォッチ」は、比較的低年齢向けの作品なので、このオモチャを欲しがる子どもたちのご両親は、戦後日本における工作最強軍団であるガンプラ世代よりは、ずっと下の年齢層である場合が多いだろう。
キャラクター商品は出来合いのものを買うだけが当たり前になっていた世代のはずで、だからこそこのニュースには面白味があるのだ。
1960年代〜70年代生まれを対象とし、1980年前後の数年間に集中的に沸騰したガンプラ・ブーム。
あの頃、まだ家庭用ゲーム機は出始めで、男の子のホビーの主役はプラモだった。
ガンダムのプラモは、それまでのいかにもオモチャっぽいロボットプラモとは一線を画していたけれども、それでもプラスチックの成型色は一色か二色程度で、自分で色を塗らなければリアルなものにはならなかった。
プラモがうまく作れる子どもは周囲から一目おかれ、おかげでその手の工作が得意だった私も、仲間内でそれなりの立ち位置を確保することができた。
どんなジャンルにも言えることだが、競技人工が多く、裾野が広い分野からは優れた才能が大量に輩出される。
ガンプラが売れたことで、漫画やアニメのキャラクター商品は一気に技術革新が進み、ガンプラ世代からは優れたモデラーが綺羅星のごとく生まれ続けた。
小学生の頃「学校で一番プラモが上手い」と自負していた私はと言えば、中学生になって自分と同年代のモデラーが既に模型雑誌で作例を発表しているのに驚愕し、即座に「プラモは趣味でいい」と納得した。
そして大学の頃には、親しい同級生にプロ並みのモデラーがいて、その緻密な作業ぶりを目の当たりにし、ますます「あー、もう俺には絶対無理!」と見切りをつけることができたのだった。
それでも少年の頃プラモ制作で身に付けた工作技術、道具の使い方、素材に関する知識、立体感覚は、以後の私に多くの恩恵をもたらしてくれた。
ガンプラ世代のプラモ自慢の大多数は、多かれ少なかれ私と似たような経験を持つことだろう。
だから、アラフォー男子の中には素人さんであってもこれくらいのプラモはさらっと作ってしまえる人間が掃いて捨てるほどいたりする。
そのように富士山の裾野のごとく広大な「競技人工」の中の、選りすぐりの天才たちが、長じて商品を作る側に成長し、現在のフィギュア大国ニッポンを形成してきたのだ。
しかし、商品の完成度が上がれば上がるほど、反比例するように子どもたちの「自作意欲」は失われていった。
マンガやアニメのキャラクター商品は、あまりに至れり尽くせりになってしまった。
人気作品のキャラは漏れなく商品化され、もはや組み立てる必要も塗る必要もない。
手仕事ニッポンを継承できるのはガンプラ世代が最後になるのではないかと常々考えていた中での、「自作系ニュース」である。
親主導であるところが気にかかるが、きっかけはなんだっていいのだ。
少年の心に眠っている「工作魂」に火がつけば、それでいい。
折しも夏休みである。
近所のホームセンターに行けば、高価な工作キットでなくても、端材の詰め放題サービスをやっているところが多いはずだ。
数百円も出せば、夏休みの工作を作ってまだまだ余るほどの材料を、安くゲットすることができるのだ!
少年よ、ナイフをとれ!
ボンドや塗料をとれ!
身近な素材をとれ!
もっともっと自作を!