とにかくデカすぎるのである。
加えて甘すぎるのである。
サーターアンダーギーのことである。
とくに2000年代に入ってから、ヤマトでもかなり沖縄のあれこれが一般化されるようになり、この「沖縄ドーナツも、こちらで知られるようになった。
駅やデパートの物産展やワゴンセールで、沖縄テーマであれば必ずイチオシで売られているお菓子でもある。
私はバイトの関係で90年代頃からサーターアンダーギーの存在は知っていた。
当時の私はまだ食欲旺盛で、甘いものも好きだったのだが、さすがの私もこのお菓子については、以下のような感想を持っていた。
デカすぎ。
甘すぎ。
下手すると子供の握りこぶしぐらいはある丸形ドーナツが、まるで袋詰めのミカンのようにゴロゴロ無造作にパックされて店頭に積み上げてある。
できたてのやつを一個食べる分には、まあ小腹がすいていれば美味しくいただけるのだが、複数個になると若い頃の私でもキツかった。
それでもバラ売りしているのは沖縄現地でもあまり見たことがなく、ヤマトでも現地の売り方そのままに、山盛り袋詰めスタイルが主流だった。
しかし、これはどう考えても、子沢山の家庭向きのパックなのである。
とにかく甘くて腹が満たせる食い物を求める育ち盛りがいっぱいいるならともかく、独り者がちょっとおやつに手を出すには、とてつもなくハードルが高いのである。
甘さ控えめでバラ売り、または、大きさを一口サイズにして少量パックにしてくれたらいいのに……
店頭に水害時の土嚢のごとく積み上げられたサーターアンダーギーを眺めながら、私はいつもそう思っていた。
そんな風に感じている人間は、私以外にも絶対たくさんいるはずだと確信していた。
そして十年近く前、沖縄に行ったとき、ついに私は見つけてしまった。
お土産店で、一口サイズのサーターアンダーギーが6個ほど、プラ製カップに入れられて少量販売していたのだ。
「やっとそこに気づいたかウチナンチュー!」
おもわず手を打って、迷わず購入した。
どう考えてもこっちの方が売れるはずだ。
ミニサイズのお陰で火が通りやすいらしく、通常サイズのような「焦げてる?」感が少ない、きれいなきつね色だ。
見映えも良いし、食べやすく、大人でも手を出しやすい。
沖縄でも遠からずこのスタイルがスタンダードになるに違いない!
しかし実際食べてみると、そんな私の期待はみるみる萎んでいった。
うーん、、、、、、なんか違うのである。
これだと、単なる「一口サイズのドーナツ」なのである。
サーターアンダーギーを食べている気が全くしないのである。
ようやく理解できた。
サーターアンダーギーがサーターアンダーギーであることの特色は、私がマイナス要素として考えていた、デカさと甘さとモッサリ感だったのだ!
そしてやはり、この「一口サイズ」は定着しなかったようである。