今年の春のお彼岸は、寒暖差の激しい中で過ぎていく。
縁者の墓参で地方に行ってきた。
二三日続いた暖かさで、梅は最後の一咲きを終え、足元をよく見ると土筆がモコモコと顔を覗かせていた。
土筆を見たのは何年ぶりだろうか。
私は幼児期を田舎で過ごしたので、春先の植物を発見すると、つい見入ってしまう。
秋のお彼岸にはその名の通りのヒガンバナがある。
それでは春のお彼岸の花と言えば?
ということで、去年の記事ではモクレンを推した。
私の好みでは、乳白色の花弁をお灯明のようにのぞかせた蕾の頃から、ふっくら白熱電球みたに膨らんだあたりまでの花が、木のあちこちについた状態が好きだ。
日の傾いた黄昏時に、ふとモクレンが目にはいると、花の部分がぼんやりと発光しているようで、豪華な燭台を前にしたような感動がある。
今年は急激に暖かい日が続いたので、開花が一気に進行して、私の好きな蕾の期間が短かったのが少し残念だった。
蓮の花のように花弁が開いた状態も、もちろん美しいのだけれども。
もう一つ春の彼岸花を推すとするなら、少し地味だがオオイヌノフグリがいい。
地味な上にあまりよろしくない名前だが、花の風情は素晴らしい。
私はこの小さなスカイブルーの花のことを、ずっと普通の「イヌノフグリ」だと思っていて、幼児の頃から大好きだったのだが、今回記事にするにあたって調べてみて間違いに気づいた。
在来種のイヌノフグリはもう一回り小さな花で、今はもう絶滅危惧種になっているらしい。
私が子供の頃から親しんできた「オオイヌノフグリ」は帰化種の方だったのだ。
名前のわりに、種子はあまり「イヌノフグリ」っぽくないなと昔から思っていた。
調べてみたら、在来種の方は本当にそっくりで、帰化種の方は「それ」にあまり似ていないと知り、謎が解けた。
その優勢な帰化種も、都会ではあまり見かけなくなっている。
公園や植栽帯の片隅でたまに見かけると、もう春なのだなとほっと一息つく。