このところ、鉛筆を削って使っている。
以前「削らず使える鉛筆芯ホルダー」を紹介する記事を書いた。
スケッチ用具覚書2 鉛筆の色々
しかし、ちょっと思うところあって削る鉛筆に回帰しているのだ。
絵描きなので、鉛筆デッサン、鉛筆スケッチにはけっこう思い入れがある。
デッサンと見取り稽古
デッサンと見取り稽古2
デッサンと見取り稽古3
デッサンと見取り稽古4
デッサンと見取り稽古5
貴重な制作時間を節約するため色々便利な道具も試してみたが、時間短縮で能率を上げたら絵の質が上がるかというと、そうでもないなと感じるようになった。
書道で墨をする時間がやっぱり大切であるように、手で鉛筆を好みの状態に削り出すという時間もまた大切だと、今さらのように気づいたのだ。
鉛筆を削るなら切り出しナイフだ。
カッターナイフでも切れ味は問題ないが、刃が薄いので「しなる」分、鉛筆のような木材を削る場合は不便を感じる。
一昔二昔前なら鉛筆を削るなら「肥後の守」と言われていたものだが、最近はあまり身近に売っていないし、研ぐ技術がないとかえって危なかったりする。
今お勧めなのは、OLFAのクラフトナイフのシリーズだ。
●オルファ クラフトナイフS
切れ味、耐久性は言うまでもなく、文具店やホームセンターで安く手軽に入手できるのが大変素晴らしい。
アウトドアの使用にも十分に耐えられるだろう。
小学生の工作にはカッターナイフよりこちらをお勧めしたいが、昨今の刃物に対する(私に言わせれば過敏な)規制の風潮の中では難しいかもしれない。
鉛筆を削るのは全ての工作の基本中の基本だ。
子供の日常から刃物を取り上げ、工作と、ちょっとした怪我をする機会まで奪ったことが、他人の痛みに対する創造力の欠落につながっていると、個人的には考えている。
手で鉛筆を削ると、木の削り心地も重要な要素になってくる。
100均の鉛筆で使われているような正体不明の粗い木材だと、削る段階で創作意欲が減退してしまう。
鉛筆画を志すなら、安価なものでも良いから、せめて名の通ったメーカー品でなくてはならない。
●トンボ鉛筆8900 HB 1ダース
●トンボ鉛筆 MONO HB 1ダース
絵を描くときにどんな鉛筆を使うかは「好み」としか言いようがない。
どんな鉛筆でもいいからとにかく描きはじめてみれば、技量の向上とともに自然と鉛筆の質にまで注意が向くようになる。
絵画教室などでは、ステッドラーのルモグラフか、三菱ハイユニのどちらかを使う人が多いだろう。
●ステッドラー ルモグラフ 12硬度セット
6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H
●三菱鉛筆ハイユニ アート22本セット
10B、9B、8B、7B、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、9H、10H
これらの硬度が全部必須というわけではなく、自分の筆圧とか手法によって必要とする硬度や本数は違ってくる。
最終的には、やはり好みだ。
私の場合、受験生の頃は三菱ハイユニ派だった。
ルモグラフとハイユニでは同じ硬度表示でも硬さに違いがある。
ハイユニの方が一段階ずつくらい柔らかめの印象があり、木の削り心地が好みだったのだ。
ルモグラフの方が少し高価で、近所で手に入りづらかったという理由もある。
がっちりした鉛筆デッサンから離れ、都市部に居住するようになり、イラスト系の絵を描く機会が増えてからは、ルモグラフなどのステッドラー製品をよく使っていた。
最近になって手で鉛筆を削る意味を再発見してから、初心に帰る意味でハイユニを買いなおした。
とりあえず濃い方から4B、2B、HB、2Hの4本。
私は受験生の頃から、あまり鉛筆の種類は増やさずにタッチのバリエーションで描き分ける方だった。
当時とは感性も手もかなり変わっているだろう。
しばらく様子を見ながら、スケッチを重ねてみよう。
知識はかなり集積した。
絵描きは描くことで知識を血肉としなければならない。
まず鉛筆。
まずスケッチだ。