街中のソメイヨシノが散りはじめても、ふと山を見上げるとあちこちにふわりと白や薄ピンクの箇所があることに気づく。
ヤマザクラが咲いているのだ。
私の場合、春は気疲れすることが多いので、できるだけ人混みは避けている。
だから人出の多いソメイヨシノの花見は、あまり積極的には行かないのだが、ここ数年はヤマザクラにハマっている。
数年前に近所でヤマザクラが多く咲き、あまり人気の多くない穴場の山を見つけて以来、暇を見つけて登っている。
山の桜は標高や日照条件が一様ではなく、樹種もいくつかあるようなので、街中のソメイヨシノ並木のように全員右へ倣えで揃って満開になることはない。
楽しみ方としては梅林に近いけれども、梅の場合はまだまだ寒く、周りの景色には冬が残っている。
ヤマザクラだと春の気温、春の風景の中の散歩を楽しむことができる。
お目当ての一番大きな樹は、残念ながらもう散ってしまっていた。
今年は日々気温のアップダウンが激しく、雨も続いたので仕方がない。
他の樹で十分楽しめたので、無駄足という気はしない。
私は正直、ソメイヨシノの葉桜を綺麗だと思ったことは一度もない。
しかし、山の桜で見ると文句なしに「ああ、葉桜もいいな」と思える。
四季の植物の楽しみは、年齢とともに幅広くなってきている。
年食って失うものは多いが、得るものもまた多いのだ。