前回記事で紹介した越木岩神社の磐座問題、引き続き関心をもって情報をチェックしている。
八幡書店の武田崇元さんが、この件に関してtwitterで何度か呟いていた。
一部引用すると以下のような呟きである。
「創建の社長はんインタビュー。なかなか面白い。浮沈激しい業界で幾多の苦難のり越えてきたのに、ここで越木岩神社の磐座破壊を強行すれば、ルナ・ブランドにキズつくと思うで。ここで計画を変えれば、家建てる時は創建に頼もかいう人も増えると思うで」
「仮に磐座を破壊したなら、マンションの売買契約時にそれを重要事項として説明する義務が生じると思う。」
長期的には保存した方が利潤に繋がると説得しつつ、このまま破壊を強行した場合の経営リスクも鋭く指摘している。
硬軟あわせた実際的な戦術指南はさすがである。
地元で親しまれた古社の隣接地(元は神域)に大規模なマンションを建設するのであるから、単純に「建てました、売りました」では済まないのである。
過去には近隣の磐座に手をつけようとしてなんらかの不幸があったというような噂にも事欠かない地域だけに、問題になっている磐座を破壊すれば当然ながら地元でもネットでも話題になる。
マンション購入のような「大きな買い物」をする場合、買い手は当然地元の状況や噂話まで含めてリサーチするだろうから、売れ行きにも影響するのである。
そのような立地であることを告知せずに販売した場合、後になって買い手とトラブルにもなりかねない。
計画を変更して磐座と共存する形でマンション建設を行えば、当のマンションにとっても企業にとっても付加価値になり得るのだ。
今回の一連の磐座騒動を見ていて、以前読んだ児童文学作品を思い出した。
●「ぼくの・稲荷山戦記」たつみや章
作者の高校時代の実体験をベースにしたデビュー作。
あとがきによると、地元の弥生遺跡を開発から守る市民運動に参加するも、一年で敗北。
その時の思いが考古学専攻、社会運動参加、児童文学作品の執筆に繋がったということだ。
この作品は一応ファンタジーの体裁はとっているものの、作中の「稲荷山保存運動」に関する具体的な戦術の部分は、きわめて実践的でリアルだ。
時代の流れ、大資本による開発を前にしたとき、自然はそのままの形で残されることはない。
必ず敗北する。
敗北するのであるけれども、保護運動が開発の方向を修正し、スピードをやや落とし、経済の問題とも切り結んでおとしどころを探ることは十分可能なのだ。
描写のリアルさは児童文学作品としては地味さとも繋がりやすいのだが、「苦い敗北の果ての小さな希望」を獲得する物語を、子供時代に読んでおく価値は大きいのである。