2015年08月25日

海老歩行

 夢を見た。


 おれは海へと続く下り坂の上に立っている。
 非常に良い傾斜だ。
 こんな坂では「海老歩行」ができる。
 両手を頭の後ろで組み、両足を肩幅より少し広げてつま先立ちになる。
 下腹部を前に突き出して体重を前方へかけると、そのままの姿勢でずずずずずと坂を下ることができる。
 体力を消耗しない、まことに合理的な歩法である。
 前に体重をかけすぎるとつんのめり、かけ方が甘いと前進しない、高度なバランス感覚の要求される歩法でもある。
 前に乗り出す勇気と、暴走しない自制の、調和のとれた精神的ハーモニーが肝要だ。

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 おれは作法に従ってエレガントに坂を下りていく。
 後ろでは友人がおれの真似を試みているが、素人に「海老歩行」は無理である。
 友人は何度か失敗して諦め、羨ましげにおれを見ている。
 二十分ほど歩行すると海岸に着く。
 おれは通常歩行に戻ってぶらぶら散歩する。
 一年に一、二度は立ち寄る喫茶店がある。
 生活雑貨店も兼ねているので、色気のない物もたくさん置いてある。
 年々、雑貨のスペースは拡大し、喫茶スペースは隅に追いやられてきている。
 エレガントなおれの居場所が、また一つ消えつつあるのだ。
posted by 九郎 at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする