
自給自足を営む山奥の小さな集落。
小川に囲まれ、村はずれには異様な大木が立っている。
その大木の根元のウロに、醜い幼児が住んでいる。

醜い幼児はウロの中をグロテスクに飾り立て、家にしている。
その家は村中の家と一本ずつ電話で繋がっている。
村の家同士は繋がっておらず、醜い幼児だけが村人みんなの秘密の話し相手になっている。
僕が訪ねると、醜い幼児は色々村人の秘密や悪口を聞かせてくれる。
ちらちら反応をうかがいながら、「あんただけにな」と呟く。
僕はこいつが誰にでも同じようなことを言っていると知っているが、表面上は騙されたふりをしている。
醜い幼児が喜ぶように、適当に村人の悪口なんかを話してやる。
きっと言いふらしているんだろうなと思いながらも、そんなスリルを楽しんでいる。

今日、村を囲む小川で、金色に輝くナマズをみつけた。
僕はウキウキしながら、醜い幼児の家へと急ぐ。
あいつに話せば、きっと喜んでくれるだろう。