夢を見た。
とにかく犬の気持ちになってみないとはじまらない。
ということで、校門から駅まで四つん這いで帰ることになった。
アスファルトやコンクリート舗装が、両手両膝をゴツゴツザラザラと削る。
痛い。
母親に連れられた乳幼児がよたよた歩いている。
目線の高さが同じのオレに反応し、喜んで「あう〜」とか言いながらにじり寄ってくる。
うるさい。
オレにかまうな。
重大な用事の途中なのだ。
何とかしろと母親を見るが、ママ友とのおしゃべりに夢中で気付いていない。
オレは犬らしく道路端を通っているのだが、すぐ横は1メートルほどの段差で、下は田んぼになっている。
乳幼児はアホなので「あぶないなあ、落ちそうだなあ」と危機感を持っていると、案の定足を踏み外す。
あぶない!
とっさに両手を伸ばして抱きとめる。
しまった。
犬なのに手を出してしまった。
アホな乳幼児とアホな母親のせいで、大変無念なことになってしまった。
ようやく異変に気付いた母親が駆け寄ってくる。
礼などを言われるが、オレは犬なのでわからないし、無関係だ。
はやく向こうへ行け。
乳幼児は犬であるオレが気に入ってしまったらしく、隣をよたよた歩きたがる。
非常に不本意である。
犬のオレのしぐさを真似て、あちこちの草を嗅ぎまわったり、電柱にこだわったりしている。
アホなので、土を口に入れたりしている。
オレは犬とは言ってもあくまでフリなので、そんな汚いことはしない。
曲がり角の地蔵の所にさしかかる。
いつのまにか地蔵の数が増えており、中には明らかにプラモが混じっている。
仏像のプラモというのは前から欲しかったのだが、ここに混入しているものはあまりデキが良くない。
こんなのなら要らない。
古い街道筋で、左手が墓場になっている。
墓場は最近リニューアルされて現代風になった。
なんだか小奇麗な公園みたいで、ペラペラな感じだ。
鐘もクリスマスベルみたいだ。
こんな墓には入りたくない。
ただ、入口付近の舗装は気に入った。
一見普通のアスファルトだが、非常に柔らかく、手にも膝にもフワフワと優しい。
風呂場のマットの冷たくないやつみたいだ。
オレより先に犬として出発した友人たちも、みんなこの舗装の虜になってゴロゴロたむろしている。