2016年03月09日

山姥

 夢を見た。

 終わらない本を読んでいる。
 劇団で紹介してもらったバイトをしている。
 ドラマのエキストラだ。
 大した役ではないのだが、何度も撮り直しをしている。
 現場にお偉方の年配女性がいて、目をつけられてしまい、何かと絡まれる。
 腹に据えかねて女性を蹴りあげ、ついでに不倫行為を暴露して現場を台無しにしてしまう。
 あまりの爆弾発言に、現場では人がバタバタ倒れ、年配女性も気絶してしまう。
 まずいことになった。
 おれはその場から逃走する。
 美少年が逃げ道を教えてくれる。
 年配女性の息子だそうで、そう言えば顔が似ている。
 あの女性も若い頃は美人だったのだろうなと呑気に考える。
 美少年が自分も連れて行ってくれと言う。
 前から母親から逃げたかったのだそうだ。
 女性が気付く前に一緒に逃げる。
 険しい山道をどんどん登る。
 ひどい道がいつまでも続く。
 下では年配女性が正気に返り、息子がいないのに気付いて追ってくる。
 おれと少年が一緒に逃げていると知れば、怒りは倍加するに違いない。
 命からがら山道を登るが、年配女性が凄まじいスピードで追いついてきて、背後に迫ってくる。
 恐怖を感じながらも「出口」を見つけ、少年の尻を押して先に逃がす。
 おれの姿に半狂乱になる女性を蹴落とし、自分も出口を潜って、岩で塞ぐ。

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 これでしばらくは大丈夫だろう。
 しかし長くは保たない。
 山道はどこまでも続く本棚に変わっている。
 おれと少年は、本棚を梯子のように延々上り続ける。
 いつになったらこの本は終わるのだろう。
 終わらない本とはいえ、本である限りはページ数に限界があるはずだ。
 ストーリーが行きつくところまで行っていないから苦しいのであって、もう少し進めば読むのを中断できるのではないか。
 作者もどこかでそのように書いていた覚えがある。
 おれは不意に、年配女性が自分の前世の妻であったことを思い出す。
 すると少年は自分の息子にあたるのか。
 どうりで終わらないはずだと悟る。

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 岩を突破した女性が、また死に物狂いの形相で追ってくる。
 今となっては憐れみも感じたが、少年と協力して何度も撃退する。
 自分たちも本棚を踏み外し、本を散乱させながら、延々上り続ける。
 ああ、こうしていつまでも苦しまなければならないのだなと悟ると、かえって気持ちに余裕が出てくる。
 本棚の中に前から探していた本を見つけて、読みながら逃走するゆとりが出てくる。
 またいつの間にか山道になっている。
 古木の連続する深い山道だ。
 古木からはくすんだ金色の粉っぽい樹液が流れ出ている。
 一種の病気なのだが、この病原体を持っているおかげで、古木はこれから何百年も枯れずにこのまま生きているのだと、作者は書いている。
 前世の妻であった年配女性は、今はもう老婆の容貌に変わり果て、口からはくすんだ金色の樹液を溢れさせている。
 意識はもう無いようだ。
 ああ、こうして山姥は生まれるのだな。
 そう思った。

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posted by 九郎 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする