夢を見た。
終わらない本を読んでいる。
劇団で紹介してもらったバイトをしている。
ドラマのエキストラだ。
大した役ではないのだが、何度も撮り直しをしている。
現場にお偉方の年配女性がいて、目をつけられてしまい、何かと絡まれる。
腹に据えかねて女性を蹴りあげ、ついでに不倫行為を暴露して現場を台無しにしてしまう。
あまりの爆弾発言に、現場では人がバタバタ倒れ、年配女性も気絶してしまう。
まずいことになった。
おれはその場から逃走する。
美少年が逃げ道を教えてくれる。
年配女性の息子だそうで、そう言えば顔が似ている。
あの女性も若い頃は美人だったのだろうなと呑気に考える。
美少年が自分も連れて行ってくれと言う。
前から母親から逃げたかったのだそうだ。
女性が気付く前に一緒に逃げる。
険しい山道をどんどん登る。
ひどい道がいつまでも続く。
下では年配女性が正気に返り、息子がいないのに気付いて追ってくる。
おれと少年が一緒に逃げていると知れば、怒りは倍加するに違いない。
命からがら山道を登るが、年配女性が凄まじいスピードで追いついてきて、背後に迫ってくる。
恐怖を感じながらも「出口」を見つけ、少年の尻を押して先に逃がす。
おれの姿に半狂乱になる女性を蹴落とし、自分も出口を潜って、岩で塞ぐ。
これでしばらくは大丈夫だろう。
しかし長くは保たない。
山道はどこまでも続く本棚に変わっている。
おれと少年は、本棚を梯子のように延々上り続ける。
いつになったらこの本は終わるのだろう。
終わらない本とはいえ、本である限りはページ数に限界があるはずだ。
ストーリーが行きつくところまで行っていないから苦しいのであって、もう少し進めば読むのを中断できるのではないか。
作者もどこかでそのように書いていた覚えがある。
おれは不意に、年配女性が自分の前世の妻であったことを思い出す。
すると少年は自分の息子にあたるのか。
どうりで終わらないはずだと悟る。
岩を突破した女性が、また死に物狂いの形相で追ってくる。
今となっては憐れみも感じたが、少年と協力して何度も撃退する。
自分たちも本棚を踏み外し、本を散乱させながら、延々上り続ける。
ああ、こうしていつまでも苦しまなければならないのだなと悟ると、かえって気持ちに余裕が出てくる。
本棚の中に前から探していた本を見つけて、読みながら逃走するゆとりが出てくる。
またいつの間にか山道になっている。
古木の連続する深い山道だ。
古木からはくすんだ金色の粉っぽい樹液が流れ出ている。
一種の病気なのだが、この病原体を持っているおかげで、古木はこれから何百年も枯れずにこのまま生きているのだと、作者は書いている。
前世の妻であった年配女性は、今はもう老婆の容貌に変わり果て、口からはくすんだ金色の樹液を溢れさせている。
意識はもう無いようだ。
ああ、こうして山姥は生まれるのだな。
そう思った。