2016年06月25日

緊急入院顛末記6

 術後三日目、入院四日目、そして発端となった胃腸炎発症からは七日目。
 週末、土曜日である。
 朝方の一回を最後に、下痢は治った模様。
 これは今までに何度も繰り返してきた胃腸炎で、ひとしきり体内の大掃除をしてから快方に向かうパターンそのままだ。
 大丈夫そうなのを確認してから、紙オムツを普通のパンツに履き替える。
 下着が通常仕様になると、だんだん復活してきている実感がわいてくる。

 体の方に多少の余裕が出てくると、色々欲求も芽生えてくる。
 入院してから入浴できていないことが気になり始める。
 私は昔から風呂好きなので、気になり始めるとこれがけっこう辛い。
 昨日一度、介助を受けながら体を拭いたが、だんだん動けるようになってきたので自力でやってみる。
「ああ〜〜銭湯行きて〜〜」
 とか思いながら、洗面所で顔を洗い、濡れタオルで頭髪から順に身体中拭きまくり、やっと人心地着く。
 退院後もしばらくはシャワーだけになるのだろう。
 湯船につかれるのはいつの日か?

 昨夜から食事が始まっているので、本日のテーマを「無理のない範囲で、なるべく食べる」に設定する。
 私のいつもの胃腸炎の対処法だと「食欲が湧かなければ無理には食べない」で、スポーツドリンク等でしのぎながら自然に食欲が戻るのを待つのだが、一旦入院してお医者さんのお世話になるからには、病院のやり方に合わせる。
 そもそも体育会系の発想に馴染みがあるので、この辺は素直に従う。
 
 一食ごとに、どのくらい食べられたか表に記入しなければならない。
 主食と副食でそれぞれ十点満点の点数をつける感じだ。
 私のこの日の成績は以下の通り。

・朝食 主食1 副食10
・昼食 主食5 副食10
・夕食 主食2 副食10
 
 半分以上食べられているようなら点滴を外してもらえるということなので、時間をたっぷりかけてなるべく食べる。
 普段けっこう早食いなので、自然に食べているとオーバーペースになり、吐き気が出そうになる。
 入院中は一口につき50回噛むことをノルマにして、休みながら食べる。
 ベッドで足を伸ばして座りながら食べると、手術跡に圧迫感があって苦しくなる。
 行儀は悪いけれども、一口含むごとに寝転んでゆっくり咀嚼する。
 一食ごとに小一時間かけるつもりで食べる。
 私の個人的な体感で言えば、お粥というものは、普通のご飯よりはましだろうけれども、さほど消化に良くはない。
 よく噛んで、飲み物や他のものを挟みながらでないと、胃にもたれやすい。
 自然に副食中心になってくるが、主食も食べられる範囲で食べておく。
 このペースで食べられるようなら、明日は点滴を抜いて、週明け退院の見通しを立ててもらった。

 私の病室のある十階は、主に循環器系の患者さんが入院している階だった。
 動く訓練のために廊下を周回していると、壁面にダイエットや血糖値コントロールの手法のひとつとして、糖質制限の特集が掲示されていた。
 私は三年ほど前からゆるめの糖質制限を実践していて、十数キロの減量に成功し、リバウンドなしで体重管理ができている。

 糖質制限関連記事まとめ

 糖質制限にはいまだ賛否があるけれども、地元の市民病院で紹介される程に広まってきているのだなと、ちょっと驚いた。
 薬に頼らない糖尿病治療法として、今後ますますスタンダードになっていくのだろうなと思った。
 
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2016年06月26日

緊急入院顛末記7

 術後四日目、入院五日目、胃腸炎発症からは八日目の日曜日。
 予定通り週明け退院できるように、この日は食事が完食できるところを示そうと努める。
 まず分量の少ない朝食を四十分ほどかけて完食し、午前中には点滴をストップしてもらえた。
 念のためということでまだ針は刺さったままだったが、これでチューブは全部外れ、大幅に動きやすくなった。
 早速、全身を拭きまくったあと、病院の浴衣から楽な私服に着替える。
 点滴を外したからには水分補給をこまめにしなければならないので、運動がてら給湯室まで度々お茶を入れに行く。
 まだ起き伏しのしんどさ、怖さはあるが、明日退院して仕事に復帰するためには、慣れて無理のない動きを確認していかなければならない。
 そのためにも、お茶は一度にたくさん作って汲み置きにせず、一杯ずつ汲みに行く。

 点滴が終わって動いてみると、さすがにちょっとフラつく。
 開腹手術後であるということもあるが、それ以前に絶食状態が六日近く続き、身動きできない状態が数日間続いたので、かなり体力が落ちているようだ。
 そう言えば体を拭いたとき、尻から腿にかけての肉が落ちていた。
 体が糖分を欲している感じがしたので、見舞いにロイヤルミルクティーのスティックを差し入れてもらった。
 普段の私はゆるめの糖質制限をしているので、飲み物は無糖のものが多い。
 しかしこの入院中は、現状に合わせなければならない。
 病院の食事は炭水化物中心でカロリー、脂質控えめの、いわゆる病院食だ。
 その病院食も百パーセントは食べられていない状態が続き、点滴もストップした。
 多少フラつくのも無理はない。
 エネルギー不足を手っ取り早く甘い飲み物で補うのも、今はありだ。

 給湯室に隣接するデイルームで、十階からの展望を楽しむ。
 ミルクティーを飲みながら、読書する。
 これができるようになっただけでも、感慨深いものがあった。
 入院中にkindle無料本で、柳田国男の「遠野物語」を通読した。



 何度めかの再読になるが、なんとなく入院中の気分に合って、読みふけった。
 他にもkindleに入っていた電子本のいくつかを再読した。
 時間があったので、昔読んだ大河小説も一つ、読み返し始めた。
 本を読み、体や仕事のことについて色々考える時間が持てたのは、まあ良かったと思う。

 昼食、夕食ともに一時間かけて完食。
 翌日の月曜午前の退院が確定した。
posted by 九郎 at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 身体との対話 | 更新情報をチェックする

2016年06月28日

緊急入院顛末記8

 術後五日、胃腸炎発症からは八日目の週明け月曜日、予定通り午前中に退院することができた。
 体調は日に日に目に見えて良くなってはいる。
 しかしそれは、胃腸炎とヘルニアの併発で苦しみ抜いていた状態や、術後の身動きひとつできない状態に比べてのこと。
 相変わらず起き伏しは辛くて時間がかかり、歩くのはゆっくり休みながらでないと無理だ。
 朝食、片付け、退院手続きなどを、無理のないペースでこなしていると、午前中は瞬く間に過ぎた。
 昼前にはなんとかタクシーで自室に帰り着くことができた。

 帰宅して、何はともあれシャワーを浴びる。
 今後十日ほどは湯船にはつかれず、手術跡を防水テープでカバーした上でのシャワーならOKということだ。
 お湯を浴びながら、心行くまで洗顔、洗髪し、体を洗い、髭を剃る。
 一休みした後、昼食。
 傷跡を再建しなければならないし、がた落ちの筋力も戻したい。
 体がタンパク質を欲している感じがしたので、玉子、豆腐、納豆などを中心に摂る。
 病院食もけっこう美味しくいただいたが、炭水化物中心で、カロリー脂質控えめだったので、糖質制限に馴染んだ私にとっては決定的にタンパク質が足りなかった。
 手術跡の右下腹部を圧迫しないよう椅子に座り、疲れたら寝ころびながらゆっくり咀嚼する。
 そもそも胃腸炎から始まった入院騒ぎなので、とにかくよく噛んで胃腸の負担を軽くする。
 小一時間ほどかけて昼食を終える。

 食後、一休みしてから用足しに出掛けてみる。
 翌日からぼちぼち職場復帰するつもりだったので、ぶっつけ本番で仕事に臨むのは避けたかった。
 現状でどれだけ動けるか、どのように動き、休めば大丈夫なのか、確認したかったのだ。
 お医者さんには日常生活や出勤はOKだが、今後一ヶ月は無理のないように、二ヶ月くらいは激しい運動も避けるように言われてる。
 手持ちの小型キャリーカートに、以前スケッチ用に購入したイスリュックを積み込んで、出発。
 カートを引っ張りながらゆっくり歩く。
 立ち歩いている時間が長くなると手術跡がどんよりしてくるので、そんなときは無理せずイスを広げて休む。
 リュックを背負うとその重みも手術跡にかかってくる感じがするが、カートで引っ張る分には問題なさそうだ。

 三時間ほど出歩いてみて、翌日からの出勤の手応えを確かめ、あとは帰ってゆっくり休んだ。
posted by 九郎 at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 身体との対話 | 更新情報をチェックする

2016年06月29日

緊急入院顛末記9

 退院翌日から、ぼちぼち仕事に復帰。
 入院騒ぎの発端になった胃腸炎発症から一週間あまり、あちこちに迷惑をかけ、フォローしていただいたので、挨拶と経過報告。
 普段から人任せにできず、なんでも自分でやらないと気がすまない性分である。
 元気な内は何の問題もないが、一旦体調を崩すと、交代が困難な局面がいっぱい出てきてしまう。
 周りの皆さんに助けていただいて、なんとか穴を埋めてもらい、まだしばらくは本調子にはほど遠いので、頼る場面も数多いことだろう。
 今度ばかりは強情我慢の鼻をいやと言うほどへし折られた。

 退院後一週間は、最徐行運転だった。
 まだ手術跡の痛みは残っており、内からの腹圧も、外からの荷重もかけられない。
 移動にはキャリーカートを使い、ゆっくりゆっくり休みながら出勤する。
 立ち時間が長いと手術跡がどんより辛くなってくるので、度々座りながらしのぐ。
 食事は抑えた分量をよく噛みながら時間をかけて摂る。
 入浴はシャワーのみ。
 寝るときもまだ無造作には寝転べない。
 普通に仰向けになると、水平方向の手術跡が上下に引っ張られる感じがして、ちょっと怖い。
 うつ伏せだともちろん圧迫される。
 結局、右下腹部を上にして横向きに寝転ぶのを基本にするしかない。
 ちょうど涅槃仏の逆向きである。
 自然に寝返りが打てず、風呂でお湯にもつかれないので、肩や腰が少々危うくなってくる。

 退院後二週間経つと、さすがにかなり楽になってきた。
 手術跡の確認で一度診てもらうと、一応傷口はふさがり、これにて診察は終わりと言うことになった。
 入浴時に湯船につかるお許しも出た。
 まだ痛みは残っており、キャリーカートの使用や、休み休みの行動は守らなければならないが、日に日に楽にはなってくる。
 食事は普通にできるようになってきたが、少食の癖がついてしまって中々体重が戻らない。

 そして退院後三週間が過ぎ、そろそろ発症から一ヶ月が過ぎようとしている。
 「痛み」はほぼ消え、ずっと気になっていた手術跡のことを、忘れていられる時間もできてきた。
 睡眠時に寝返りが自由に打てるようになったので、疲れはとれやすくなった。
 それでもまだ「違和感」は残っていて、手術跡が落ち着くまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 食事量も体重も、まだ元には戻っていない。
 この辺りは気長に養生するしかなさそうだ。

 ヘルニア(脱腸)の予後についてお医者さんに繰り返し注意されたのは「極力腹圧をかけないこと」だった。
 どんなときに腹圧がかかりやすいかと言うと、たとえば以下のような場面だ。

・くしゃみ
・咳
・鼻をかむ
・排便

 どの場合もあまり腹圧をかけずにやることは可能なのだが、圧をかけるのが習い性になってしまっている人がいて、そういう人が脱腸になりやすいのだそうだ。
 
 そう言えば、ふと甦ってきた記憶がある。
 情景から考えると二十代半ばくらいのことではないかと思う。
 くしゃみをした瞬間、お腹の中で何かが「にょろん」と動いたような感じを受けたことが何度かあった。
 妙な感覚だったので印象に残っていたのだが、今から思えばあれは腹圧で腸が動いた感覚だったのかもしれない。
 だとすると、かなり昔からヘルニア発症へと向かう兆しはあったということかだろうか。
 正に後知恵だが、こうして記事に書き留めておく価値はあるだろう。


 長々と書いてきた「緊急入院顛末記」、ひとまずこれでおしまいとする。
 ヘルニアは現在、出入り口に蓋をされて収まっている状態だが、再発の可能性も無きにしもあらずということなので、引き続き養生は必要だ。
 また何かあれば、続きを書いてみたい。

 かえすがえす悔やまれるのは、もっと早くヘルニア治療をしておくべきだったということ。
 手術の負担が軽ければ、術後の負担ももっと軽くすんだはずだ。

 脱腸は、話題に上らないだけでけっこう多い病気らしい。
 己の馬鹿さ加減を長々と晒してきたが、何らかの参考にしていただければ幸いです。
posted by 九郎 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 身体との対話 | 更新情報をチェックする