2016年06月12日

村芝居

 術後二回目の夜、ろくに身動きできないベッドの中。
 夢を見た。

 難病になってしまった。
 まだ二十歳そこそこだというのに、これではお先真っ暗だ。
 病んだ私は、とある山里へ向かう。
 遠い親戚の住む山里で、子供の頃、何度か泊まりに行ったことがある。

 里にはけっこう大きな神仏習合風の神殿がある。
 その参道周辺は、昔の街道筋が当時のまま残ったようににぎわっている。
 確か子供の頃、ここにも連れてきてもらったことがあり、とても楽しかったのを覚えている。

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 病み疲れながらふらふらと神殿に参拝する。
 こちらからとくに説明もしていないのに、神官の人が招じ入れてくれる。
 奥の間には大きな囲炉裏のような古びた木枠がある。
 木枠の両側には「取り次ぎ」の神職二人が向かい合わせに座っている。
 木枠の中は浴槽のようになっていて、きれいな灰と清水を溶かした泥が満たされている。
 私は着衣のまま泥の中に横たわる。

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 神職二人がしばらく祭文のようなものを唱え、取り次ぎをしてくれる。
 それが終わると、華やかな手拭いをかぶった若い女性二人に助け起こされ、別室で清めと着替えをする。
 気分はいい。
 病は癒えたのだろうか。
 華やかな柄の手拭いを何種か示され、好きなものを選ぶように言われる。
 私は黄色のちょっと沖縄風の柄のものをもらう。
 
 女性二人に街道筋のような参道に連れ出される。
 道幅の広い通りでは、たくさんの人が踊っている。
 五色の手拭いをくるくる巻いたり、回したり、肩にかけたり、頭にかぶったりして、盆踊りのような感じだ。
 見よう見まねで躍りの列に入る。

 ひとしきり踊ると、昔風の大きな商店に通される。
 棟梁と呼ばれる壮年男性が、笑顔で私を招き入れる。
 黒い法被姿で恰幅がよく、眉が黒々と太い。
 往年の昭和スターといった雰囲気だ。

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「安心せい。頼れ、もたれろ!」
 呵呵大笑しながら、棟梁は言った。
「すじが良さそうだ。ここの村芝居の役者をやらんか?」
 山里の賑わいを眺めていると、それもいいなとふと思う。
posted by 九郎 at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする