本日、唐突に皇室に関するニュースが流れた。
その一報を目にして、ちょっとなんとも言い様のない感慨を持った。
今の天皇皇后ご両人については、常々そのお人柄と透徹した知性に、最上級の敬意を持ってきた。
私は絵描きなので「天皇という制度や権威」には、正直なんの敬意も持てない。
先代の昭和天皇の時代、私はまだ子供だったので、とくになんの思い入れもないし、判断基準を持たない。
次代の皇太子については、即位してから色々思うことはあるだろう。
私が抱くのは、あくまで今の天皇皇后ご両人という、個人に対する敬意だ。
日本で一番言論の自由のない立場にありながら、がんじがらめの制約の中で、ただ移動し、言葉を発するタイミングのみを武器に「さあ考えてくれ、判じてくれ」とメッセージを発し続けていると、そのように私にの目には映るのだ。
今日もまた、そんな黙示があった気がする。
我が国の総理大臣なる人物の、幼稚にして醜悪な、腐臭漂う姿にうんざりしきっていた今日この頃。
一陣の風が吹き抜けたような爽やかさを感じたのである。
関連して、昨年末に投稿した記事を以下に再録しておこう。
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書店でタイトルを見た瞬間に衝撃を受けた本がある。
著者名を見て即買いし、読み耽った。
読後「これは今年の一冊になるな」と思い、ブログでも早々に紹介したいと思っていたのだが、なかなか語る言葉が見つからずにいた。
実は今も、適切な紹介の言葉が出てこないので、ごく簡単な覚書として書き留めておきたいと思う。
●「ふたり 皇后美智子と石牟礼道子」高山文彦(講談社)
メインタイトル「ふたり」に表されている通り、様々な「ふたり」の関係がルポされている。
中でも主軸になるのが、二人のミチコ、サブタイトルの「皇后美智子と石牟礼道子」である。
皇后と、水俣の語り部にして「苦海浄土」の著者・石牟礼道子。
立場も含め、全てが遠く隔たった二人に、いかなる関係が存在するのか?
私は水俣と天皇家について多少の知識があったので、息を殺しながら、時間をかけて丁寧に読み進めた。
結果、確かに二人のミチコの間には強い絆が存在すると納得した。
それも、簡単にお互いへの敬意とか友情とか表現できるような絆ではない。
そうした感情はもちろん含まれているだろうけれども、それはもっと激しく鋭利なものなのではないかと感じた。
孤独な二人の幼女が、泣き叫びながら白刃を突き付け合って、それでもお互いから目を離せないでいる。
あくまで私の勝手な想像だが、そんなイメージが浮かんでくる。
今はこんな感想の断片しか書けないのだが、これからも折に触れ、読み返したい一冊になった。
そしてこれまでに読んだ本の中から、今回の一冊と(ごく私的な捉え方として)深く関連すると考えるものを挙げておきたい。
●「黄泉の犬」藤原新也(文春文庫)
●「なみだふるはな」石牟礼道子 藤原新也(河出書房新社)