2016年09月26日

加筆再掲;灰色の世界

 今の子供達の娯楽の王様は、やはりゲームになるのだろうか。
 漫画、アニメ、特撮、ゲーム、全て私の子供時代には出揃っていたが、今と昔でランクが大きく変動したのが「プラモ」だろう。

 私と同じくらいの世代の、特に男子の間では、娯楽の王様の位置は「ガンプラ」が占めていたはずだ。
「ガンプラ」は言わずと知れた「ガンダムプラモ」の略。当時の男の子連中はこぞって欲しがり、プラモ屋の仕入れ日には早朝から長蛇の列ができ、開店と同時に激しい争奪戦が繰り広げられた。
 子供向けの月刊漫画誌で、一番人気の「コロコロ」を追撃していたのが「ボンボン」だ。
 ボンボンはホビー色を前面に押し出していて、プラモ制作をテーマにした「プラモ狂四郎」が連載され、毎号カラー特集でガンプラの作例&技術解説が掲載されていた。

 

 私はすぐにガンプラに夢中になり、設計図(組立解説書)に従って組み立て、塗料で色を塗り分けた。
 当時のプラモ、とくに小学生が手を出しやすい値段帯のものは、プラスティックの成型色がせいぜい一色か二色程度しか無かった。
「世界で一番売れたプラモデル」として記録に残っている1/144ガンダムでも、接着剤で組んだだけでは「真っ白」だったのだ。
 だからどんなに塗りむらだらけ、はみ出しだらけであろうと、とにかく塗った方がはるかにカッコ良くなるので、子供たちはみんな小瓶の塗料を何色も買い込んで悪戦苦闘していた。
 図工が得意だった私は、同世代の中ではごく少数の「ガンダムの顔をはみ出さずに塗り分けられる」内の一人で、けっこう尊敬を集めたりした。

 当時はブームの真っ最中だったので、専用の「ガンダムカラー」なるものまで発売されていた。
「ガンダム世代」の中では低年齢層に属していた私は、シンナーを使用する模型塗料は親から止められていたので、水性塗料を混色して設定の色を再現することに努めていた。
 ほとんどの色は再現できていたのだが、ガンダムのライフルやランドセルに使用される「ミディアムブルー」と言う色が、どうしても作れなくて壁にぶち当たった時期があった。

gun02.jpg


 青味がかったグレーであることはわかるのだが、実際に「黒+白+青」で混ぜてみると「ちょっと違う」感じになってしまうのだ。
 限られた小遣いで買い集めた塗料を空費し、途中からはスポンサー(親)から現物支給される水彩絵具での実験に切り替え、私の試行錯誤は続いた。
 たまたまパレット上の赤が混じってしまった時に似た色ができ、ようやく私はミディアムブルーと言う色を「わずかに紫がかった青味のグレー」と認識できたのだった。

 そうこうしているうちに、当時の私は身のまわりの色を全て「赤・青・黄・黒・白」の五色で分析して観る習慣がついてしまっていた。
 全ての色は(理論上は)その5色からの混色で再現可能なはずなのだ。
 通常は中学美術で習うはずの色彩の仕組み(色相環・明度・彩度など)のを独自に研究・開発し、世の中の「色の秘密」を理解した気分になって興奮していた。
 分析結果によれば、この世に「絵具のような鮮やかな色」は極めて少なく、ほとんどのものが「灰色の混じった色」であることがわかった。
 灰色を基本としてそれに色彩を混ぜてできる「この世の色」と、オモチャなどの人工物に見られる灰色の割合の少ない鮮やかな色。
 オモチャの色、ホンモノの色という二つの色のカテゴリが、私の中で出来上がっていたのだった。

 そして前回紹介した「HOW TO BUILD GUNDAM」との出会いにより、「オモチャであるプラモにホンモノの色を塗る」という発想に至る事になった。
 こうして少年時代の私は、色を使うことによってオモチャの世界で「現実感」を再現する、二つの別の世界を交錯させることの面白さを知りつつあったのだ。

 たかが子供の遊びであるプラモから、私はたくさんのことを学んだ。
 立体感覚、色彩理論、造形素材に対する知識、ツールの使い方。
 そして現実と虚構の狭間に遊ぶ不思議さ、面白さ、危うさ。

 全て今につながっている。
posted by 九郎 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする