しばらく前に、映画「GANTZ:O」を観てきた。
原作のマンガ「GANTZ」については、完結時に一度記事にしている。
この作品は以前にも一度実写映画化されているが、そのときは特に興味は湧かなかった。
日本における人気漫画の実写化はスルーが基本であるというのは、これまで生きて来て得た知恵の一つである。
実写版「GANTZ」はまあそれほど酷くはなかったそうだが、原作マンガが好きすぎる場合は避けておくのが無難だ。
今回は実写ではなくフル3DCGによる映画化。
私は実は、この3DCGというものがあまり好みの手法ではないのだが、原作者の奥浩哉が今回の映画の出来をかなり喜んでいるようなので、興味を持った。
原作マンガがそもそも3DCGを多用した作画なので、実写より相性が良さそうに思えたことも足を運んだ理由の一つだ。
公開からあまり日をおかず観に行った結果、確かにかなり良かった。
原作でも人気の高い大阪編を、2時間の尺に収めるためにかなり刈り込み、設定に少々変更を加えていたが、納得できる範囲の上手い改変だったと思う。
主人公が原作の玄野計ではなく加藤になっているのは、大阪編なのだから妥当。
東京チームも大阪チームともに人数を絞り込み、要素を割り振りながらも、原作大阪編の見せ場は全て網羅されているのは見事だった。
大阪チーム最強の岡八郎の駆るハードスーツと、敵ボスキャラぬらりひょんの対戦は、まさに「圧巻」と言えるほどに再現されていた。
PG12になっているのは主に戦闘シーンの描写が理由のようで、エロ要素はほぼ無しだったので、わりと広い範囲の客が観に行きやすい作りになっていたと思う。
私は世代のせいか3DCGの登場人物にはなかなか感情移入できない性なのだが、今回は十分入り込めた。
技術は確実に進歩しているんですね(笑)
フルカラーで動きもあって、しかも原作マンガに忠実、「絵」的な面ではかなり頑張っていたのだが、まだ「重力の重み」のリアリティは、原作マンガの手描きの方が勝っていると感じた。
具体的に言うと、Zガンの威力や、ぶん殴った時の「痛み」の伝わり具合だ。
CGは空間描写には向いているが、まだ「軽い」感じがする。
最初から観ていて少し気になったのが、玄野と加藤の友人関係の不在だった。
二人の関係は「GANTZ」という作品世界の根幹をなすので、二時間尺に収めるためとはいえ、そこに触れないのはちょっと寂しいなと思いながら観ていると、最後の最後できちんと回収されていて一安心した。
やっぱり「GANTZ」は玄野と加藤の物語でなければならない。
日常と、宇宙人との戦いの非日常の対比も少し弱かったが、これも二時間という尺の制限があるかぎりは仕方がない部分だ。
総じて、原作のことをよく理解した手練れのスタッフが作り上げた映画だと思った。
もう一度、原作マンガが読み返したくなる映像化で、これなら奥浩哉が喜んだというのもうなずける。
原作マンガのファンは、一応おさえておいてもいい作品だと思う。