そもそも日本のTVアニメはロボットアニメから始まった。
言わずと知れた「鉄腕アトム」(1963年〜)である。
手塚治虫によって、週一回30分枠のアニメ制作が可能であること、それがどうやらビジネスに結びつくらしいことが実証されたのだが、それは多分に「マンガの神様」の天才と狂気に負うところが大きかった。
手塚治虫は日本のマンガ・アニメの生みの親であると同時に、現在のアニメ制作現場が抱える様々な問題点、劣悪な労働環境も生み出してしまったのだが、それはまた別の話。
作品そのものに含まれる要素で考えるなら、「鉄腕アトム」には後のロボットアニメに継承される根幹部分は全てそろっていた。
等身大ロボット、巨大ロボット・バトル、メディアミックス、キャラクターグッズ展開など、後発のロボットアニメは「アトム」の要素を受け継ぎ、一部抽出したり新たな要素を次々に添付することで発展したと言ってよいだろう。
巨大ロボット・バトルの要素を抽出し、「人間が操る」という要素を加えれば「鉄人28号」になり、「兵器としての操縦型巨大ロボット」の流れができた。
コミュニケーション可能な等身大ロボットの要素は、「人間と機械の融合」という要素を加えた「エイトマン」をはじめ、サイボーグテーマのマンガやアニメ、特撮作品に継承されて行った。
アトム以降のロボットアニメを新次元に進化させた例としては、なんといっても永井豪の「マジンガーZ」(1972年〜)が挙げられる。
時代的にはアニメもマンガも「スポ根モノ」の全盛期で、手塚から始まるSF路線、ロボット路線の人気が低迷していた時期である。
そんな時期に再び子供の興味を巨大ロボットに引き戻したのが、「マジンガーZ」だったのだ。
手塚から石ノ森章太郎、永井豪へと続くラインは、ある意味で日本のSFマンガの直系とも言えるだろう。
先行するロボットモノの要素を継承しながら、「マジンガーZ」から独自に創出された要素も数多い。
何よりもまず、実際に人が乗り込む「搭乗型巨大ロボット」であることが特筆される。
これにより、鉄人28号の遠隔操作型より主人公との一体感が増し、バトル描写に臨場感が生まれたのだ。
人体を十倍に拡大した18m前後の設定、コクピットを兼ねた小型戦闘機との合体、飛行ユニットとの合体も、既に「マジンガーZ」から始まっている。
他にも、
・下手すると悪役に見えてしまいそうな悪魔的なデザイン。
・新素材や新エネルギーによる高性能化の理屈付け。
・続編である「グレートマジンガー」まで含めると、主役機の交代劇。
・同じく永井豪率いるダイナミックプロ原作の「ゲッターロボ」まで含めると、複数のチームマシンによる変形合体。
などなど、後のロボットアニメにも継承される「ウケる」要素が、これでもかというほど「マジンガーZ」をはじめとする一連のダイナミックプロ原案の作品で創出された。
他ならぬ「スーパーロボット」という呼称自体が「Z」の主題歌の歌詞の一節で、勇ましく戦闘的なアニメソングの系譜も同じ主題歌から始まったのだ。
そしてこれらのダイナミックプロによるスーパーロボット作品は、TVアニメ先行の企画であった。
マンガ版は必ずしも「原作」ではなく、アニメ版と並行した別作品という体裁になっている。
こうした構図はほぼ同時期に制作された石ノ森章太郎原作の特撮番組「仮面ライダー」等とも共通している。
(TVアニメと並行したマンガ版が、マンガ家のSF的「暴走」により、制約の多いアニメとはかけ離れた展開を見せることもあり、そちらもかなり興味深いテーマなのだが、今回は省略)
マジンガーZは玩具にも進化をもたらした。
ダイカスト素材を使用した頑丈で重量感のある「超合金」と、軽量で比較的大型のソフトビニール製玩具は、以後のスーパーロボットアニメの定番アイテムになり、おもちゃメーカーが作品を提供するビジネスモデルが確立した。
30分枠の一話完結方式で主役ロボットが活躍する構図は、「ロボットプロレス」と言われながらも多くの作品を生み、私はまさにその全盛期に子供時代を過ごしたのだ。
今から五年前の「マジンガーZ生誕40周年」の時に描いたのが以下の一枚。
記憶と勢いだけで描いたのでさすがに細部は間違っているが、子供の頃の「お絵かき」は、やはり自分の絵柄の基礎になっていると感じる。
TVアニメのアナザーストーリーにあたるマンガ版のマジンガーについては、以下の記事を参照。
空にそびえる鉄の城1
空にそびえる鉄の城2
近年、永井豪自身が過去の有名作の創作秘話を明かすマンガも制作されている。
マジンガーZについては、以下に詳述されている。
●「激マン!マジンガーZ編」永井豪とダイナミックプロ(ニチブンコミックス)
おそらく全五巻。
マンガ内マンガとして、マジンガーZを今の作画密度で描き直したものがかなり挿入されている。