80年代初頭のガンプラ旧キット作例紹介、つづいてのネタは「旧ザク」である。
ファーストガンダムのアニメ放映初期に登場し、敵方ジオンの主力MSザクの一世代前の旧型で、兵器として現役ではなく、補給艦での作業用という設定になっていた。
補給艦の艦長である老兵が搭乗し、連邦の新型MSガンダムに果敢に挑む姿は、子供心にも渋い味わいが感じられたものだ。
デザインの順番で言えば、設定とは逆に通常の「量産型ザク」が先にあり、後から「旧型」のデザインを起こしたはずで、これは難易度の高い仕事だったのではないかと思う。
ロボットを「強化」する場合、デザイン作業は「足し算」になるので、既存のデザインにプラス要素を盛っていけば良い。
ところが「弱く、旧式に」する場合は、既に完成し、バランスがとれているデザインから「引き算」していかなければならないのだ。
そんなハードルをクリアーしながら、求めに応じてきっちり「量産型より弱そうに見える」旧型ザクのデザインを出す。
しかも、ザクのデザイン上の大きな特徴である「動力パイプ」という要素を引き算し、それでもなおザクに見える渋いデザインにまとめたところに、メカニックデザイナー大河原邦男の凄みを感じるのである。
●1/144 MS-05B 旧型ザク
キットの1/144旧型ザクは、ファーストガンダム登場MSの中では、最後発の部類に入るプラモである。
そもそも作中でほんの数シーンしか登場していない、脇役の中の脇役みたいなメカが、プラモとして発売されること自体が異常なのだ。
こんなところからも、当時のガンプラブームの過熱ぶりがうかがわれる。
アニメに登場するメカがほぼ全て模型化され、ネタが尽きた後、ガンプラのラインナップは「アニメに登場しないMS」が模型化されるという異次元に突入するのだが、これはまた稿をあらためて語りたい。
まずは素組み。
組んでみて「手が覚えていない」と感じたので、私はおそらくこのキットは今回が初めてだと思う。
最後発だけあって、最初期発売のザクのプラモと比較すると、かなり技術的に進化している。
首の上下、肩の前後スイング、股関節の開脚、足首の前後などの可動があらたに加わり、左肩の丸いアーマーは別パーツ化し、手首は平手と握り手が差し替え可能である。
全体的な構造は、後発プラモのMSVシリーズとほぼ同等になっている。
もちろん現在のガンプラとは比較にならないが、これでも昔は「驚異の可動」に見えたものだ。
ガンプラブーム当時は、この旧ザクのプラモをベースに、量産型やシャア専用ザクとニコイチで「理想のザク」に改造する作例があったと記憶している。
今回も例の方法(つや消しブラック+アクリルガッシュ)で、じっくり塗ってみる。
色分けは胸と靴の部分をダークグレーにするリアルタイプカラーを基本にしている。
武装はヒートホークが付属しているが、前線からは退いて補給作業用として運用されているMSなので、無理に武器を持たせなくとも無手のままで十分だと感じる。
先行発売の量産型ザク、シャア専用ザクと並べてみよう。
プラモ自体の水準が上がると、後発の方が「強そう」に見えてしまいがちなものだが、この旧ザク、並べてみてもちゃんと設定どおり「弱そう」に見える。
元のデザインが「枷」としてきっちり機能しているせいだろう。
そんなデザインの機微を味わいながら一杯やるのも、大人の旧キット趣味というものだ(笑)