80年代初頭のガンプラブームのとき、主に盛り上がっていたのは小学校高学年男子が中心で、上はせいぜい中学生くらいまでだったのではないだろうか。
幼児から小学校低学年くらいだと、ガンプラもアニメの内容もちょっとハードルが高かったのではないかと思う。
あとは模型誌でリアルな作例を発表していたモデラーの皆さんと同じ、大学生くらいの年代が考えられるが、この年代は小学校高学年〜中学生男子のように「みんなハマっている」という状況ではなかっただろう。
おそらく「宇宙戦艦ヤマト」を中学生くらいで体験し、ミリタリーモデルも経験しながら、そのままアニメファンを続けていたマニア層限定のブームだったはずだ。
ガンプラブーム当時の高校生は、ガンダムに対して意外に「薄い」ことが多い。
スーパーロボットやヤマト、スター・ウォーズにはけっこう思い入れがあり、タイプとしてはいかにもガンダムにハマりそうな人が、話してみると実はファーストガンダムを一度も観ていなかったりする。
ふり返ってみると確かに自分も高校生の頃、あれほど熱くハマっていたリアルロボットアニメに、一時的に関心を失っていた。
理由は色々挙げられる。
私個人に限定して言えば、自分で創作することが楽しくなったり、小説やマンガをがっちり読み込むことが楽しくなったり、外に出るのが楽しくなったり、あとはまあ勉強が忙しくなったりして、アニメに割くリソースが無くなったのだった。
個別にはそれぞれ違う理由があり、もちろんずっと継続してアニメが好きなマニア層もいるだろうけれども、「子供時代の感覚が高校生くらいで一度リセットされる」という傾向はあるのではないか。
今思うと、TVアニメの中のリアルロボットものというジャンルは、子供向けの単純明快な作品世界から、一歩踏み込んだ表現の世界への入り口として出会ったときに、最も効果を発揮するのではないかと思う。
それ以前、「リアルな表現」がない時代は、もっと早く「子供番組離れ」は訪れた。
それこそ、ガンプラブームで熱狂したような年代は、本来であればアニメなどの子供向け番組から卒業する発達段階であったはずだ。
それが幸か不幸か、日本のTVアニメが成熟し、「次の段階」の作品が登場する時期に居合わせてしまったのがガンプラ世代だったのではないだろうか。
その世代は団塊ジュニアとも半分くらいは重なっていて、商業的なヒットが生まれると「産業」として成り立ってしまうボリュームゾーンでもあった。
様々な要因が重なって、前回記事の年表で見たような、80年〜81年あたりのガンプラブーム、82年〜84年あたりの「TVはリアルロボットアニメだらけ」という狂騒が発生したのだろう。
ガンダムをはじめとするリアルロボットアニメには様々なSF的趣向が盛り込まれていて、十分にハマった後であれば、ハードなSF小説、映画等を鑑賞する素養が身についてしまうところがあった。
子供から大人への作品鑑賞スタイルは、小学校高学年から高校生の間に徐々に変化していく。
リアルロボットアニメを熱狂的に支持した世代は、他ならぬその作品の内容によって素養を育てられ、他に興味の対象を拡散させていったのかもしれない。
その様が、前回記事の年表に見える80年代リアルロボットアニメの消長に、端的に表れているのではないかと思う。
大人になると一周してもう一度味わえる質をもったリアルロボットアニメの作品群、それがビッグバンのように大量に生産される数年間に、適度な年齢層で居合わせることができたのは、本当に幸運だったと思う。