先日、某総理大臣の嫁はんの居酒屋に、寄付金の百万(?)返しに行ったことが記憶に新しい籠池のおっさんである。
本日午後、秋葉原で行われた都議選自民党候補の応援演説に、某総理大臣が登壇した。
この応援演説については事前にネットで情報が飛び交っていたので、「おっさん、もしかしたら突撃しよるんちゃうか?」と思っていた。
案の定決行したようで、また爆笑させてもらった。
このソーリによる応援演説、開始と共にグダグダで、突っ込みどころ満載だったようだ。
まず石原のアホの長男が「ソーリが御到着! 拍手をもってオマヌケください!」と、想像を絶する言い間違いをかました。
このオマヌケ発言の後登壇したソーリも、目下自民党が接戦を演じている都ファなんちゃらのことはそっちのけで、無内容な国政自画自賛や野党攻撃に時間を費やしたが、激しい「やめろ」「帰れ」コールに晒されて逆ギレ連発。
おまけに籠池のおっさんの突撃で、報道のかなりの部分がそっちに流れるという始末。
籠池の嫁はんも健気に「やめろ」コールに参加していた模様が動画で流れていた。
このような「絵」を撮られることを恐れ、第一党の党首にも関わらず今まで一度も街頭演説に立たず逃げまくり、最後の最後に「ホーム」と目される秋葉原に登場したのだが、完全に目算が外れる結果になった。
この一週間、ソーリのお友達が醜態を連発する中で、大将がきっちりクライマックスを作った形である。
かなり笑かしてもらった一日だったが、たぶんこれでは終わらない。
今後にも期待(笑)
2017年07月01日
2017年07月02日
2017年07月03日
ブーム当時のガンプラ1
今や日本サブカルチャーの一大ジャンルとして成長したガンプラ。
シリーズは多岐にわたり、数えきれないほどのキットが発売され、現在も増殖中である。
そろそろ40周年が見えてきたガンプラというジャンルの出発点となったのが、80年代初頭にビッグバンの如く勃発したガンプラブームだった。
極端な話、最初のブームの余波が四十年近く続いて今に至っていると言っても過言ではないのだ。
ブーム当時のガンプラと言えば、まぎれもなく男子小中学生のホビーの王様の地位にあった。
その頃小学校高学年だった私は、まさに「ガンプラ直撃世代」ということになるだろう。
当時からブームに乗って多数のプラモが発売されていたが、中でも人気が集中していたのが安価なコレクションサイズの1/144スケールで、作中に登場したモビルスーツ全種(+α)をそろえることができるシリーズだった。
私が買って(買うことすら困難だったのだが)作っていたのも1/144がほとんどで、できることならもう全部作りたかったのだが、小学生当時、ついにその望みはかなわなかった。
時を経てこの度、アニメ第一作登場のMSについては、一応コンプリートすることができた。
この写真が撮りたくて、ここまで旧キットを作ってきた気がする(笑)
実はシャア専用ゲルググをまだ作っていないのだが、ほぼ同内容の量産型ゲルググがあまりにストレスフルなプラモだったので、シャア専用を組む意欲を失ってしまった。
いずれ手を付けるMSVシリーズの時に、きっちり決定盤シャアゲルを作ってみたいと思う。
チェックしてみると、小学生の頃もかなり種類は作っていたことがわかった。
当時全くの未組立だったのは、ジム、ボール、旧ザク、アッガイ、ゾック、リックドムくらいだろうか。
それでもなんとなく「あまり作れていない」という飢餓感のようなものはあって、それは心の奥底にずっと残り続けていた。
今自分なりに分析してみると、それは「プラモの数」というよりは、「思うように完成させられなかった」という「質」の問題だったのかもしれない。
当時の私は、擦り切れるほど愛読していた「HOW TO BUILD GUNDAM」掲載の作例に憧れていたのだが、小学生の腕では無理だった。
●ホビージャパン別冊「HOW TO BUILD GUNDAM」
今回、自分なりの方法で「80年代風」に見える旧キット制作をやってみて、ようやく「子供の頃のやり残し」を解消することができた気がする。
たぶん、小学生の頃の自分が今の作例を見たら、喜んでくれると思うのだ。
当時のガンプラは、上掲作例の他にも、数えきれないほどのものが発売されていた。
以下に紹介しながら、あのブームがどんなものであったのか、覚書にしておきたいと思う。
シリーズは多岐にわたり、数えきれないほどのキットが発売され、現在も増殖中である。
そろそろ40周年が見えてきたガンプラというジャンルの出発点となったのが、80年代初頭にビッグバンの如く勃発したガンプラブームだった。
極端な話、最初のブームの余波が四十年近く続いて今に至っていると言っても過言ではないのだ。
ブーム当時のガンプラと言えば、まぎれもなく男子小中学生のホビーの王様の地位にあった。
その頃小学校高学年だった私は、まさに「ガンプラ直撃世代」ということになるだろう。
当時からブームに乗って多数のプラモが発売されていたが、中でも人気が集中していたのが安価なコレクションサイズの1/144スケールで、作中に登場したモビルスーツ全種(+α)をそろえることができるシリーズだった。
私が買って(買うことすら困難だったのだが)作っていたのも1/144がほとんどで、できることならもう全部作りたかったのだが、小学生当時、ついにその望みはかなわなかった。
時を経てこの度、アニメ第一作登場のMSについては、一応コンプリートすることができた。
この写真が撮りたくて、ここまで旧キットを作ってきた気がする(笑)
実はシャア専用ゲルググをまだ作っていないのだが、ほぼ同内容の量産型ゲルググがあまりにストレスフルなプラモだったので、シャア専用を組む意欲を失ってしまった。
いずれ手を付けるMSVシリーズの時に、きっちり決定盤シャアゲルを作ってみたいと思う。
チェックしてみると、小学生の頃もかなり種類は作っていたことがわかった。
当時全くの未組立だったのは、ジム、ボール、旧ザク、アッガイ、ゾック、リックドムくらいだろうか。
それでもなんとなく「あまり作れていない」という飢餓感のようなものはあって、それは心の奥底にずっと残り続けていた。
今自分なりに分析してみると、それは「プラモの数」というよりは、「思うように完成させられなかった」という「質」の問題だったのかもしれない。
当時の私は、擦り切れるほど愛読していた「HOW TO BUILD GUNDAM」掲載の作例に憧れていたのだが、小学生の腕では無理だった。
●ホビージャパン別冊「HOW TO BUILD GUNDAM」
今回、自分なりの方法で「80年代風」に見える旧キット制作をやってみて、ようやく「子供の頃のやり残し」を解消することができた気がする。
たぶん、小学生の頃の自分が今の作例を見たら、喜んでくれると思うのだ。
当時のガンプラは、上掲作例の他にも、数えきれないほどのものが発売されていた。
以下に紹介しながら、あのブームがどんなものであったのか、覚書にしておきたいと思う。
(続く)
2017年07月04日
ブーム当時のガンプラ2 1/144スケール
ガンプラブーム当時、私たち小学生が主に買っていたのは、やっぱり1/144スケールだった。
このスケール、何を置いてもまず安い!
主役機ガンダムやザクなど人気MSの大半が300円。
デザインや体積に応じて400円、500円、600円のMSもあったが、80年代初頭の子供の小遣いでも無理なく買える値段帯だった。
ちゃんと作るにはニッパーや接着剤、各種塗料や筆、溶剤、パテやサンドペーパーなどが別途必要だとしても、一個プラモを買えばしばらくは存分に楽しみながら組み、塗り、飾ったり遊んだりできるので、わりと安上がりなホビーではあった。
専用工具や塗料がなくても、昔はプラモに(非常に使いにくいが)接着剤は付属していたし、パーツの切り出しに爪切りを使ったり、油性マジックで塗ったりという荒業もあって、それぞれのレベルで楽しめたのだ。
作ったり遊んだりするのに小さ過ぎず、集めるのに高価過ぎない。
そういう手頃さがありながら、「1/144」という航空機プラモ等と同じスケール表記が、これまでのロボットプラモにない特別なリアルさを感じさせてくれる。
ガンプラというのは、そういう絶妙さを備えていたのだ。
あの頃「全部作りたかった」1/144MSのプラモは、当ブログで一応コンプリートできた。
以下に作例記事を紹介しておこう。
【連邦MS】
●1/144ガンダム
●1/144ガンキャノン
●1/144ガンタンク
●1/144ジム
●1/144ボール(1/250のおまけつき)
【ジオンMS】
●1/144旧型ザク
●1/144量産型ザク
●1/144シャア専用ザク
●1/144グフ
●1/144ゴッグ
●1/144量産型ズゴック
●1/144シャア専用ズゴック
●1/144アッガイ
●1/144ゾック
●1/144リックドム
●1/144量産型ゲルググ
●1/144ギャン
●1/144ジオング
実はシャア専用ゲルググだけは未組立。
量産型ゲルググの記事でも詳述した通り、これがちょっと「困ったキット」なのだ。
よほどの懐古趣味でないかぎり、旧キットでカッコいいシャアゲルが欲しいなら、ブーム当時のものではなく後発のMSV版を組んだ方が良いだろう。
MSV版は再販頻度が低いのが難だが、定価800円でかなり満足感の高いキット。
いずれ作例を紹介したい。
旧キット1/144シリーズはMSだけでなく、合わせて飾れる武器やいくつかの支援機も発売されていた。
以下に紹介してみよう。
●1/144モビルスーツ用武器セット
ガンダム、ザク、グフ用の、単体のキットには付属していなかった武装が満載。
これでプラモの小改造に目覚めた小学生は数知れず。
●1/144 Gアーマー
同スケールでは最高額の定価1000円だが、新規金型のガンダムも付属しており、あらゆる合体変形パターンが再現できる。
ブーム当時の小学生垂涎の人気キットだった。
●1/144コアブースター
劇場版でGアーマーに代わって登場したメカ。
形状は極めて良好で、今のキットと合わせても遜色なし。
再販頻度は低いが、出るとすぐ売り切れる現役で人気のキット。
●1/144マゼラアタック
ジオンの特殊戦車。主砲はマゼラトップ砲としてザクに持たせられる。
●1/144ドダイ
グフ用の開脚できる股関節が付属しており、装着すると乗せることができる。
そして1/144MSプラモで忘れてはならないのが、「アニメに登場しなかった」ジオンの水陸両用MSシリーズ。
作中の全MSがキット化された後も、下火になりながらもまだガンプラブームは続いていた。
本来世に出るはずもなかった「蔵入りスケッチ」が急遽クリンナップされ、立体物になったのが以下のシリーズ。
ブームに熱狂していた当時の小学生たちの間ですら「?」が渦巻いた謎のMS群である。
子供心に「祭の終り」というものを感じた覚えがある。
このシリーズを最後に、アニメ「機動戦士ガンダム」第一作(通称ファーストガンダム)のプラモブームは一段落することになる。
しかし振り返ってみれば、それでもガンプラは滅びることなく進化を続けたし、リアルロボットアニメが質量ともにピークを迎えるのはブームの去った後のことになる。
そしてブーム当時のガンプラは1/144スケール以外にも多数存在する。
まだまだ私のガンプラ語りは続くのだ(笑)
このスケール、何を置いてもまず安い!
主役機ガンダムやザクなど人気MSの大半が300円。
デザインや体積に応じて400円、500円、600円のMSもあったが、80年代初頭の子供の小遣いでも無理なく買える値段帯だった。
ちゃんと作るにはニッパーや接着剤、各種塗料や筆、溶剤、パテやサンドペーパーなどが別途必要だとしても、一個プラモを買えばしばらくは存分に楽しみながら組み、塗り、飾ったり遊んだりできるので、わりと安上がりなホビーではあった。
専用工具や塗料がなくても、昔はプラモに(非常に使いにくいが)接着剤は付属していたし、パーツの切り出しに爪切りを使ったり、油性マジックで塗ったりという荒業もあって、それぞれのレベルで楽しめたのだ。
作ったり遊んだりするのに小さ過ぎず、集めるのに高価過ぎない。
そういう手頃さがありながら、「1/144」という航空機プラモ等と同じスケール表記が、これまでのロボットプラモにない特別なリアルさを感じさせてくれる。
ガンプラというのは、そういう絶妙さを備えていたのだ。
あの頃「全部作りたかった」1/144MSのプラモは、当ブログで一応コンプリートできた。
以下に作例記事を紹介しておこう。
【連邦MS】
●1/144ガンダム
●1/144ガンキャノン
●1/144ガンタンク
●1/144ジム
●1/144ボール(1/250のおまけつき)
【ジオンMS】
●1/144旧型ザク
●1/144量産型ザク
●1/144シャア専用ザク
●1/144グフ
●1/144ゴッグ
●1/144量産型ズゴック
●1/144シャア専用ズゴック
●1/144アッガイ
●1/144ゾック
●1/144リックドム
●1/144量産型ゲルググ
●1/144ギャン
●1/144ジオング
実はシャア専用ゲルググだけは未組立。
量産型ゲルググの記事でも詳述した通り、これがちょっと「困ったキット」なのだ。
よほどの懐古趣味でないかぎり、旧キットでカッコいいシャアゲルが欲しいなら、ブーム当時のものではなく後発のMSV版を組んだ方が良いだろう。
MSV版は再販頻度が低いのが難だが、定価800円でかなり満足感の高いキット。
いずれ作例を紹介したい。
旧キット1/144シリーズはMSだけでなく、合わせて飾れる武器やいくつかの支援機も発売されていた。
以下に紹介してみよう。
●1/144モビルスーツ用武器セット
ガンダム、ザク、グフ用の、単体のキットには付属していなかった武装が満載。
これでプラモの小改造に目覚めた小学生は数知れず。
●1/144 Gアーマー
同スケールでは最高額の定価1000円だが、新規金型のガンダムも付属しており、あらゆる合体変形パターンが再現できる。
ブーム当時の小学生垂涎の人気キットだった。
●1/144コアブースター
劇場版でGアーマーに代わって登場したメカ。
形状は極めて良好で、今のキットと合わせても遜色なし。
再販頻度は低いが、出るとすぐ売り切れる現役で人気のキット。
●1/144マゼラアタック
ジオンの特殊戦車。主砲はマゼラトップ砲としてザクに持たせられる。
●1/144ドダイ
グフ用の開脚できる股関節が付属しており、装着すると乗せることができる。
そして1/144MSプラモで忘れてはならないのが、「アニメに登場しなかった」ジオンの水陸両用MSシリーズ。
作中の全MSがキット化された後も、下火になりながらもまだガンプラブームは続いていた。
本来世に出るはずもなかった「蔵入りスケッチ」が急遽クリンナップされ、立体物になったのが以下のシリーズ。
ブームに熱狂していた当時の小学生たちの間ですら「?」が渦巻いた謎のMS群である。
子供心に「祭の終り」というものを感じた覚えがある。
このシリーズを最後に、アニメ「機動戦士ガンダム」第一作(通称ファーストガンダム)のプラモブームは一段落することになる。
しかし振り返ってみれば、それでもガンプラは滅びることなく進化を続けたし、リアルロボットアニメが質量ともにピークを迎えるのはブームの去った後のことになる。
そしてブーム当時のガンプラは1/144スケール以外にも多数存在する。
まだまだ私のガンプラ語りは続くのだ(笑)
(続く)
2017年07月06日
ブーム当時のガンプラ3 1/100スケール
80年代初頭のガンプラブームの折、コレクションサイズの1/144に次いで人気だったのが、もう一つ大きい1/100スケールのシリーズだった。
定価は700円か800円で、当時の小学生にとっては少々値が張ったが、とくにお気に入りのMSを1/100で作るというのが定番だった。
クリスマスやお年玉、誕生日などに手に入れる「イベントプラモ」という感じだったと記憶している。
私はその頃、1/144で種類を集めて並べる方にハマっていたので、このスケールで作ったのは主役機のガンダムだけだったはずだ。
当時の1/100スケールのガンプラで特筆すべきは、「成型色だけでけっこう色分けできている」ということだ。
低価格の1/144は一色成型がほとんどだったが、1/100では三色くらい使用されているものが多く、とくに色分けのシンプルなジオンのMSは、組んだだけでけっこう色分けが再現されていた。
可動や付属の武器も豪華で、小学生にとっては少々お高めでも、作ってみると満足感が大きかった。
塗らなければならない箇所が少ないことを考えると、コスパは高かったのだ。
今考えると700円か800円という価格は、内容に比してびっくりするほど安い。
現行のキットで同じスケールのものを作ろうとするとMG(マスターグレード)という上位モデルになるので、まず軽く2000円超え、5000円以上のものも数多い。
その分、可動・スタイル・色分け共にハイレベルで、内部構造まで再現されていたりするのだが、昔のいわゆる「プラモ」とは別物の感が強い。
かつてのガンプラ少年が、時を経てもう一度プラモ復帰するなら、この1/100のシリーズは本当にお勧めだ。
大人になってみればこの値段は問題にならないし、「あの頃手を出せなかったプラモはこんなのだったのか!」という感動が味わえると思う。
以下に各キットを紹介してみよう。
【連邦MS】
●1/100ガンダム
記念すべき1/100スケール第一作。
ガンプラ第一作の1/144ガンダムとほぼ同時発売だったはずで、小学生の私が最初に作ったガンプラが、確かこの1/100だったはずだ。
ただこのキット、少々問題有りである。
本当の意味での「ガンプラ創成期」なので、まだ「リアル志向」という方向性が確立していなかったらしく、かなりオモチャっぽい構成なのだ。
ガンプラ以前のロボットプラモは「廉価版超合金」という色合いが強かったのだが、この1/100ガンダムも当初はその路線上で開発されたと見受けられる。
コアファイター、Aパーツ、Bパーツの変形合体が再現されており、バネ式で弾が飛び出すロケット砲というアニメに登場しない武器が付属しているのは、まさに「超合金っぽさ」と言える。
変形合体が出来るのは良いけれども股関節と足首は固定で、可動やスタイル、「リアルさ」では1/144より後退している面もあった。
リアルロボットプラモの進化の原点を体感できる「文化遺産」としての価値は高いと思うが、「カッコいい1/100ガンダム旧キット」を求めると、ちょっとキツいかもしれない。
●1/100ガンキャノン
色分けはそこそこながら、形状・可動ともに当時としては素晴らしい秀作キット。
とくに腕関節の構造はよく考えられていて、およそ動きそうもないデザインを上手く可動させていて感心する。
ちゃんと変形可能なコアファイターも収納でき、設定だけで作中で登場しなかったスプレーミサイルランチャーも付属している。
●1/100ジム
色分け、可動ともにそこそこ良好。
ブーム当時はこのジムをベースにガンダムからパーツを移植して「まともなガンダム」を作る定番改造があった。
【ジオンMS】
●1/100旧型ザク
設定は「旧型」だがプラモでは最後発の「最新型」キットなので、可動・色分け共に極めて良好。
劇場版だけに登場した旧型ザク用マシンガン、バズーカ、ヒートホークも付属。
●1/100シャア専用ザク、量産型ザク(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
1/144、1/60ザクの発売後、満を持して登場した当時のザクのプラモの「決定版」だった。
可動、色分け、スタイルともに極めて良好な名作キット。
最近のザクのプラモとは違う、柔らかい曲線美が素晴らしい。
マシンガン、バズーカ、ヒートホーク付属。
●1/100グフ
こちらも可動、色分け、スタイル極めて良好な名作キット。
長短のヒートロッド、ヒートサーベル付属。
マンガ「プラモ狂四郎」に登場した「山根のグフ」の印象が強烈で、ヒートロッドの糸ハンダ巻きに子供はみんな憧れた。
●1/100ドム
意外なことに1/100ではガンダムに続く第二作。
最初期のキットなので可動や色分けは物足りないが、「これぞドム!」という迫力満点の形状は、初期名作キットと言えるだろう。
1/144ジオングにこの1/100ドムの足を取りつけて「完成形」にする改造もけっこう流行った。
●1/100ゴッグ
なにげに可動が凄い「かくれ名作」キット。
腕の伸縮や手首の折り畳みで「潜航形態」が再現でき、腰やモノアイまで可動!
ずんぐりした武骨なスタイルは、「今のキットよりアニメに近い」と感じる人も多いだろう。
●1/100シャア専用ズゴック、量産型ズゴック(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
こちらもずんぐりした太めのスタイルで、今の目で見ると「ちょっとパンツでかい」感じだが、色分けも可動も良好な秀作キット。
●1/100アッガイ
こちらも当時としては可動が凄く、両腕や爪の伸縮まで再現。
●1/100シャア専用ゲルググ、量産型ゲルググ(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
1/144と同じような構成で、可動・色分け・形状にやや難あり。発売自体はこちらの方が早いので、1/100の課題が解決されないまま1/144に引き継がれたというべきか。
腰の回転可動はポーズ付けに効果を発揮している。
●1/100ギャン
1/144では再現されなかったシールド裏や宇宙機雷も付属し、可動や色分けも改善。
【リアルタイプシリーズ】
●1/100リアルタイプ ガンダム
●1/100リアルタイプ ガンキャノン
●1/100リアルタイプ ジム
●1/100リアルタイプ 旧型ザク
●1/100リアルタイプ ザク
●1/100リアルタイプ ドム
●1/100リアルタイプ ゲルググ
上掲の通常版キットの成型色を暗色に代え、マーキング用の水転写デカールを大量に付けたバージョンが「リアルタイプ」としてシリーズ化されたもの。
形状は全く同じだが、キットによっては成型色が増え、色分けが向上したものもある。
定価は据え置きだったのでお買い得感があり、リアルタイプカラーが好みの人はもちろん、通常カラーを作る場合でも全塗装派はデカール目当てにこちらを買っていた。
私がおっさんになってからガンプラ復帰したのも、このシリーズのリアルタイプガンキャノンを手に取ったことがきっかけだった。
ミリタリー趣味の箱絵も素晴らしく、後のMSVシリーズにつながる試みだったのではないだろうか。
そして1/100でも、アニメ未登場のこいつらがキット化!
●1/100アッグ
●1/100アッグガイ
●1/100ゾゴック
こいつらまで出たのに、ガンタンクやジオング、ボール、ゾックは結局1/100では発売されなかった。
おそらく「800円枠」に収まらないことが原因だろう。
ゾックやボールはともかく、ジオングやガンタンクなら、たとえ1000円を超えても、このキワモノMSシリーズより売れたのではないかと思うが、企業判断というものは中々素人には計り知れない。
ともかく、このサイズでこの内容の「ほぼ全MS」が800円以内で発売され、今も入手可能であるということが、往年のガンプラブームの熱狂を今に伝えているのである。
定価は700円か800円で、当時の小学生にとっては少々値が張ったが、とくにお気に入りのMSを1/100で作るというのが定番だった。
クリスマスやお年玉、誕生日などに手に入れる「イベントプラモ」という感じだったと記憶している。
私はその頃、1/144で種類を集めて並べる方にハマっていたので、このスケールで作ったのは主役機のガンダムだけだったはずだ。
当時の1/100スケールのガンプラで特筆すべきは、「成型色だけでけっこう色分けできている」ということだ。
低価格の1/144は一色成型がほとんどだったが、1/100では三色くらい使用されているものが多く、とくに色分けのシンプルなジオンのMSは、組んだだけでけっこう色分けが再現されていた。
可動や付属の武器も豪華で、小学生にとっては少々お高めでも、作ってみると満足感が大きかった。
塗らなければならない箇所が少ないことを考えると、コスパは高かったのだ。
今考えると700円か800円という価格は、内容に比してびっくりするほど安い。
現行のキットで同じスケールのものを作ろうとするとMG(マスターグレード)という上位モデルになるので、まず軽く2000円超え、5000円以上のものも数多い。
その分、可動・スタイル・色分け共にハイレベルで、内部構造まで再現されていたりするのだが、昔のいわゆる「プラモ」とは別物の感が強い。
かつてのガンプラ少年が、時を経てもう一度プラモ復帰するなら、この1/100のシリーズは本当にお勧めだ。
大人になってみればこの値段は問題にならないし、「あの頃手を出せなかったプラモはこんなのだったのか!」という感動が味わえると思う。
以下に各キットを紹介してみよう。
【連邦MS】
●1/100ガンダム
記念すべき1/100スケール第一作。
ガンプラ第一作の1/144ガンダムとほぼ同時発売だったはずで、小学生の私が最初に作ったガンプラが、確かこの1/100だったはずだ。
ただこのキット、少々問題有りである。
本当の意味での「ガンプラ創成期」なので、まだ「リアル志向」という方向性が確立していなかったらしく、かなりオモチャっぽい構成なのだ。
ガンプラ以前のロボットプラモは「廉価版超合金」という色合いが強かったのだが、この1/100ガンダムも当初はその路線上で開発されたと見受けられる。
コアファイター、Aパーツ、Bパーツの変形合体が再現されており、バネ式で弾が飛び出すロケット砲というアニメに登場しない武器が付属しているのは、まさに「超合金っぽさ」と言える。
変形合体が出来るのは良いけれども股関節と足首は固定で、可動やスタイル、「リアルさ」では1/144より後退している面もあった。
リアルロボットプラモの進化の原点を体感できる「文化遺産」としての価値は高いと思うが、「カッコいい1/100ガンダム旧キット」を求めると、ちょっとキツいかもしれない。
●1/100ガンキャノン
色分けはそこそこながら、形状・可動ともに当時としては素晴らしい秀作キット。
とくに腕関節の構造はよく考えられていて、およそ動きそうもないデザインを上手く可動させていて感心する。
ちゃんと変形可能なコアファイターも収納でき、設定だけで作中で登場しなかったスプレーミサイルランチャーも付属している。
●1/100ジム
色分け、可動ともにそこそこ良好。
ブーム当時はこのジムをベースにガンダムからパーツを移植して「まともなガンダム」を作る定番改造があった。
【ジオンMS】
●1/100旧型ザク
設定は「旧型」だがプラモでは最後発の「最新型」キットなので、可動・色分け共に極めて良好。
劇場版だけに登場した旧型ザク用マシンガン、バズーカ、ヒートホークも付属。
●1/100シャア専用ザク、量産型ザク(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
1/144、1/60ザクの発売後、満を持して登場した当時のザクのプラモの「決定版」だった。
可動、色分け、スタイルともに極めて良好な名作キット。
最近のザクのプラモとは違う、柔らかい曲線美が素晴らしい。
マシンガン、バズーカ、ヒートホーク付属。
●1/100グフ
こちらも可動、色分け、スタイル極めて良好な名作キット。
長短のヒートロッド、ヒートサーベル付属。
マンガ「プラモ狂四郎」に登場した「山根のグフ」の印象が強烈で、ヒートロッドの糸ハンダ巻きに子供はみんな憧れた。
●1/100ドム
意外なことに1/100ではガンダムに続く第二作。
最初期のキットなので可動や色分けは物足りないが、「これぞドム!」という迫力満点の形状は、初期名作キットと言えるだろう。
1/144ジオングにこの1/100ドムの足を取りつけて「完成形」にする改造もけっこう流行った。
●1/100ゴッグ
なにげに可動が凄い「かくれ名作」キット。
腕の伸縮や手首の折り畳みで「潜航形態」が再現でき、腰やモノアイまで可動!
ずんぐりした武骨なスタイルは、「今のキットよりアニメに近い」と感じる人も多いだろう。
●1/100シャア専用ズゴック、量産型ズゴック(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
こちらもずんぐりした太めのスタイルで、今の目で見ると「ちょっとパンツでかい」感じだが、色分けも可動も良好な秀作キット。
●1/100アッガイ
こちらも当時としては可動が凄く、両腕や爪の伸縮まで再現。
●1/100シャア専用ゲルググ、量産型ゲルググ(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
1/144と同じような構成で、可動・色分け・形状にやや難あり。発売自体はこちらの方が早いので、1/100の課題が解決されないまま1/144に引き継がれたというべきか。
腰の回転可動はポーズ付けに効果を発揮している。
●1/100ギャン
1/144では再現されなかったシールド裏や宇宙機雷も付属し、可動や色分けも改善。
【リアルタイプシリーズ】
●1/100リアルタイプ ガンダム
●1/100リアルタイプ ガンキャノン
●1/100リアルタイプ ジム
●1/100リアルタイプ 旧型ザク
●1/100リアルタイプ ザク
●1/100リアルタイプ ドム
●1/100リアルタイプ ゲルググ
上掲の通常版キットの成型色を暗色に代え、マーキング用の水転写デカールを大量に付けたバージョンが「リアルタイプ」としてシリーズ化されたもの。
形状は全く同じだが、キットによっては成型色が増え、色分けが向上したものもある。
定価は据え置きだったのでお買い得感があり、リアルタイプカラーが好みの人はもちろん、通常カラーを作る場合でも全塗装派はデカール目当てにこちらを買っていた。
私がおっさんになってからガンプラ復帰したのも、このシリーズのリアルタイプガンキャノンを手に取ったことがきっかけだった。
ミリタリー趣味の箱絵も素晴らしく、後のMSVシリーズにつながる試みだったのではないだろうか。
そして1/100でも、アニメ未登場のこいつらがキット化!
●1/100アッグ
●1/100アッグガイ
●1/100ゾゴック
こいつらまで出たのに、ガンタンクやジオング、ボール、ゾックは結局1/100では発売されなかった。
おそらく「800円枠」に収まらないことが原因だろう。
ゾックやボールはともかく、ジオングやガンタンクなら、たとえ1000円を超えても、このキワモノMSシリーズより売れたのではないかと思うが、企業判断というものは中々素人には計り知れない。
ともかく、このサイズでこの内容の「ほぼ全MS」が800円以内で発売され、今も入手可能であるということが、往年のガンプラブームの熱狂を今に伝えているのである。
(続く)
2017年07月07日
ブーム当時のガンプラ4 1/60、1/72、1/250
【1/60スケール】
80年代初頭のガンプラブームの折、当時の小学生ファンが憧れながらも中々手を出せないシリーズがあった。
プラモ屋の棚最上段に鎮座する巨大な箱をまぶしく見上げるばかりだったのが、今回紹介する1/60スケールである。
完成すると全高約30pの圧倒的な迫力だったが、身の回りで実際作った物を見かけることはほとんどなかった。
2000円から2500円の定価は、あの頃の小学生にとっては高嶺の花だったのだ。
今から考えるとこの定価も全然高くない。
現行キットで同スケールの1/60を作ろうとするとPG(パーフェクトグレード)という最高級モデルになり、定価は平気で一万円を超えてしまう。
人気の1/144や1/100スケールとちがって頻度は低いが、1/60旧キットが今でもお値段据え置きで再販が続いているのは素晴らしいことだ。
●1/60ガンダム
定価2000円。先行する1/100の変形合体ギミックと、1/144の可動・スタイルを、当時としては高いレベルで両立させた「決定版」。
変形・収納可能なコアファイター、ライフル、シールド、バズーカ、ハンマー、同スケールのアムロも付属。
大スケールの自重を支えるために各関節にはポリキャップが採用され、サーベルには透明素材が使用されるなど、新機軸満載だった。
●1/60シャア専用ザク、量産型ザク(基本的には箱絵と成型色違いの同一内容)
先行発売の1/144ザクの問題点が大幅にクリアーされ、後発の名作キット1/100ザクへの流れを感じさせるキット。
各関節ポリキャップ、モノアイはムギ球(80年代!)で点灯可能、色分けは成型色でほぼ再現。
マシンガン、ヒートホーク、シャアザクには同スケールのシャア、量産型にはジオン兵が付属。
●1/60ドム
●1/60シャア専用ゲルググ
●1/60量産型ゲルググ
定価2500円で、ブーム当時のキットの中では最高額。
1/60ガンダムやザクをしのぐ巨大な箱、完成品のボリュームを誇っていた。
先行する1/100、1/144スケールの出来が元々良かったドムだけでなく、難ありだったゲルググもきっちり欠点を修正した「決定版」として登場した。
書いていて思い出したが、私の二歳下の弟が、当時お小遣いをはたいて1/60スケールのシャアザクを作っていた。
1/144のコレクションに集中していた私は「そんな高くてデカいの、よう買うな」と思っていたが、今から思うとその二年ほど前、自分でも「宇宙戦艦ヤマト」の巨大プラモを作っていたのだった。
しかも値段とボリュームで言えば、ヤマトの方がはるかにデカかった。
男の子の発達段階として、「とにかくデカいメカに憧れる時期」というものがあるのかもしれない(笑)
【1/72メカニックモデル】
今ではあまり見かけないが、かつて「メカニックモデル」というプラモのジャンルがあった。
ロボット等のメカの表面の一部を切り欠き、内部構造を透視するように垣間見せる趣向のプラモで、ガンプラに先行する宇宙戦艦ヤマトのプラモ等でもけっこう人気があった。
現行のMG等で再現されている「内部フレーム」は、広い可動範囲を確保するための実用性を持っているが、旧キットの「内部メカ」はまた別物で、見た目のイメージ重視、実用性は一切無い(笑)
70年代あたりのサブカル界隈では、ロボットや怪獣、妖怪などの空想透視図がよく描かれていて、ガンプラのメカニックモデルもそうした流れを汲むものなのだ。
●1/72メカニックモデル ガンダム
●1/72メカニックモデル シャア専用ザク
ともに定価2500円。再販頻度は低いが、タイミングが合えば今でも入手可能。
【1/250スケール】
ここまでは大きなサイズの、当時としては高級モデルについて紹介してきた。
ブーム当時、スタンダードだった1/144より小さいスケールもあって、それが「1/250情景模型」シリーズだった。
1/250スケールについては、当初は1/144の300円シリーズよりも求めやすいミニプラモとして企画されていたようだ。
ヤマトのメカコレ100円シリーズに続くものだったのだろう。
最終的には固定ポーズでアニメ作中シーンを再現したジオラマモデルとして商品化された。
1/250MS3体とジオラマベース、背景画、更に1/550のおまけプラモも付属し、定価700円で4タイトルが発売された。
作中シーン登場のMSと、プラモの内容にやや「ズレ」が見られるのは、1/250シリーズの企画当初試作されていた原形が「有効利用」されたせいなのかもしれない。
以下にそれぞれのキットに入っているMSをまとめてみよう。
●ランバ・ラル特攻
1/250ガンタンク、量産型ザク(バズーカ)、グフ(ヒートロッド)
1/550ガンタンク、シャア専用ザク(マシンガン)、グフ(サーベル)
●ジャブローに散る
1/250ジム、シャア専用ズゴック、量産型ザク(マシンガン)
1/550ジム、量産型ズゴック、シャア専用ザク(ヒートホーク)
●テキサスの攻防
1/250ガンダム(サーベル)、シャア専用ゲルググ(ナギナタ)、ガンキャノン
1/550ガンダム(バズーカ)、量産型ゲルググ(ナギナタ)、ガンキャノン
●宇宙要塞ア・バオア・クー
1/250ガンダム(ライフル)、ジオング、リックドム
1/550ガンダム(サーベル)、リックドム(サーベル)
固定ポーズながら、1/250で主要なMSは入っている。
1/144ボールに入っていたおまけも合わせると、アニメ登場MSで完全に欠けているのは旧ザク、ゴッグ、アッガイ、ゾック、ギャンくらいになる。
シャア専用と量産型は基本的に色違いだけだから、1/250でかなりのMSがそろうのだ。
品薄だったガンプラの中ではこの「情景模型シリーズ」は比較的入手しやすく、固定ならではのポーズ付けもあって、わりとみんな買っていた。
ジオラマベースの出来が良いのも嬉しかった。
模型誌に載っているジオラマの作例は当時の小学生の憧れの的だったが、オリジナルのベースの制作はプラモ本体にもまして難易度が高かった。
それがこのキットでは、複数のMSと共に、お手頃価格で入手できるのである。
ドライブラシの練習台にぴったりで、他のプラモも含めて飾り台にすると雰囲気が出た。
みんなで集まってプラモを作ったり遊んだりする時によく使っていた覚えがある。
このシリーズも、頻度は低いが今でも再販は続いている。
【1/250スケール イロプラ】
そしてブームが去った後、この1/250スケールは成型色を増やし各関節可動の「イロプラシリーズ」として再開されるのだが、下記MS4種(定価200円)とGアーマー(定価600円)のみの発売になった。
●1/250 ガンダム
●1/250 シャア・ザク
●1/250 量産型ザク
●1/250 グフ
●1/250 Gアーマー
現在はこのGアーマーのみ再販継続。
短命に終わったイロプラシリーズだが、同一ランナー内に多数の成型色を使い、塗装の必要箇所を減らす技術は、現行のガンプラにつながっている。
また、この1/250に近似した「1/144より小さい手のひらサイズ」は、その後もミニプラモや可動フィギュアで継続して商品化が続くことになる。
後発のMSVシリーズではジオングも1/250でリメイクされていた。
●1/250パーフェクトジオング
キットは「完成形」にもできるし、アニメ版の「80%」として作ることもできる。
熱狂的なブームが去った後も、84年くらいまではファーストガンダムのプラモは新規発売され続けていたのだ。
80年代初頭のガンプラブームの折、当時の小学生ファンが憧れながらも中々手を出せないシリーズがあった。
プラモ屋の棚最上段に鎮座する巨大な箱をまぶしく見上げるばかりだったのが、今回紹介する1/60スケールである。
完成すると全高約30pの圧倒的な迫力だったが、身の回りで実際作った物を見かけることはほとんどなかった。
2000円から2500円の定価は、あの頃の小学生にとっては高嶺の花だったのだ。
今から考えるとこの定価も全然高くない。
現行キットで同スケールの1/60を作ろうとするとPG(パーフェクトグレード)という最高級モデルになり、定価は平気で一万円を超えてしまう。
人気の1/144や1/100スケールとちがって頻度は低いが、1/60旧キットが今でもお値段据え置きで再販が続いているのは素晴らしいことだ。
●1/60ガンダム
定価2000円。先行する1/100の変形合体ギミックと、1/144の可動・スタイルを、当時としては高いレベルで両立させた「決定版」。
変形・収納可能なコアファイター、ライフル、シールド、バズーカ、ハンマー、同スケールのアムロも付属。
大スケールの自重を支えるために各関節にはポリキャップが採用され、サーベルには透明素材が使用されるなど、新機軸満載だった。
●1/60シャア専用ザク、量産型ザク(基本的には箱絵と成型色違いの同一内容)
先行発売の1/144ザクの問題点が大幅にクリアーされ、後発の名作キット1/100ザクへの流れを感じさせるキット。
各関節ポリキャップ、モノアイはムギ球(80年代!)で点灯可能、色分けは成型色でほぼ再現。
マシンガン、ヒートホーク、シャアザクには同スケールのシャア、量産型にはジオン兵が付属。
●1/60ドム
●1/60シャア専用ゲルググ
●1/60量産型ゲルググ
定価2500円で、ブーム当時のキットの中では最高額。
1/60ガンダムやザクをしのぐ巨大な箱、完成品のボリュームを誇っていた。
先行する1/100、1/144スケールの出来が元々良かったドムだけでなく、難ありだったゲルググもきっちり欠点を修正した「決定版」として登場した。
書いていて思い出したが、私の二歳下の弟が、当時お小遣いをはたいて1/60スケールのシャアザクを作っていた。
1/144のコレクションに集中していた私は「そんな高くてデカいの、よう買うな」と思っていたが、今から思うとその二年ほど前、自分でも「宇宙戦艦ヤマト」の巨大プラモを作っていたのだった。
しかも値段とボリュームで言えば、ヤマトの方がはるかにデカかった。
男の子の発達段階として、「とにかくデカいメカに憧れる時期」というものがあるのかもしれない(笑)
【1/72メカニックモデル】
今ではあまり見かけないが、かつて「メカニックモデル」というプラモのジャンルがあった。
ロボット等のメカの表面の一部を切り欠き、内部構造を透視するように垣間見せる趣向のプラモで、ガンプラに先行する宇宙戦艦ヤマトのプラモ等でもけっこう人気があった。
現行のMG等で再現されている「内部フレーム」は、広い可動範囲を確保するための実用性を持っているが、旧キットの「内部メカ」はまた別物で、見た目のイメージ重視、実用性は一切無い(笑)
70年代あたりのサブカル界隈では、ロボットや怪獣、妖怪などの空想透視図がよく描かれていて、ガンプラのメカニックモデルもそうした流れを汲むものなのだ。
●1/72メカニックモデル ガンダム
●1/72メカニックモデル シャア専用ザク
ともに定価2500円。再販頻度は低いが、タイミングが合えば今でも入手可能。
【1/250スケール】
ここまでは大きなサイズの、当時としては高級モデルについて紹介してきた。
ブーム当時、スタンダードだった1/144より小さいスケールもあって、それが「1/250情景模型」シリーズだった。
1/250スケールについては、当初は1/144の300円シリーズよりも求めやすいミニプラモとして企画されていたようだ。
ヤマトのメカコレ100円シリーズに続くものだったのだろう。
最終的には固定ポーズでアニメ作中シーンを再現したジオラマモデルとして商品化された。
1/250MS3体とジオラマベース、背景画、更に1/550のおまけプラモも付属し、定価700円で4タイトルが発売された。
作中シーン登場のMSと、プラモの内容にやや「ズレ」が見られるのは、1/250シリーズの企画当初試作されていた原形が「有効利用」されたせいなのかもしれない。
以下にそれぞれのキットに入っているMSをまとめてみよう。
●ランバ・ラル特攻
1/250ガンタンク、量産型ザク(バズーカ)、グフ(ヒートロッド)
1/550ガンタンク、シャア専用ザク(マシンガン)、グフ(サーベル)
●ジャブローに散る
1/250ジム、シャア専用ズゴック、量産型ザク(マシンガン)
1/550ジム、量産型ズゴック、シャア専用ザク(ヒートホーク)
●テキサスの攻防
1/250ガンダム(サーベル)、シャア専用ゲルググ(ナギナタ)、ガンキャノン
1/550ガンダム(バズーカ)、量産型ゲルググ(ナギナタ)、ガンキャノン
●宇宙要塞ア・バオア・クー
1/250ガンダム(ライフル)、ジオング、リックドム
1/550ガンダム(サーベル)、リックドム(サーベル)
固定ポーズながら、1/250で主要なMSは入っている。
1/144ボールに入っていたおまけも合わせると、アニメ登場MSで完全に欠けているのは旧ザク、ゴッグ、アッガイ、ゾック、ギャンくらいになる。
シャア専用と量産型は基本的に色違いだけだから、1/250でかなりのMSがそろうのだ。
品薄だったガンプラの中ではこの「情景模型シリーズ」は比較的入手しやすく、固定ならではのポーズ付けもあって、わりとみんな買っていた。
ジオラマベースの出来が良いのも嬉しかった。
模型誌に載っているジオラマの作例は当時の小学生の憧れの的だったが、オリジナルのベースの制作はプラモ本体にもまして難易度が高かった。
それがこのキットでは、複数のMSと共に、お手頃価格で入手できるのである。
ドライブラシの練習台にぴったりで、他のプラモも含めて飾り台にすると雰囲気が出た。
みんなで集まってプラモを作ったり遊んだりする時によく使っていた覚えがある。
このシリーズも、頻度は低いが今でも再販は続いている。
【1/250スケール イロプラ】
そしてブームが去った後、この1/250スケールは成型色を増やし各関節可動の「イロプラシリーズ」として再開されるのだが、下記MS4種(定価200円)とGアーマー(定価600円)のみの発売になった。
●1/250 ガンダム
●1/250 シャア・ザク
●1/250 量産型ザク
●1/250 グフ
●1/250 Gアーマー
現在はこのGアーマーのみ再販継続。
短命に終わったイロプラシリーズだが、同一ランナー内に多数の成型色を使い、塗装の必要箇所を減らす技術は、現行のガンプラにつながっている。
また、この1/250に近似した「1/144より小さい手のひらサイズ」は、その後もミニプラモや可動フィギュアで継続して商品化が続くことになる。
後発のMSVシリーズではジオングも1/250でリメイクされていた。
●1/250パーフェクトジオング
キットは「完成形」にもできるし、アニメ版の「80%」として作ることもできる。
熱狂的なブームが去った後も、84年くらいまではファーストガンダムのプラモは新規発売され続けていたのだ。
(続く)
2017年07月08日
ブーム当時のガンプラ5 その他のスケール
ここまで、80年代初頭のガンプラブーム当時売れ筋だった1/144、1/100スケール、そして上位モデルだった1/60、1/72スケールや、小サイズの1/250スケールのキットについて紹介してきた。
以上は主にファーストガンダムに登場するMSが模型化されたシリーズだが、作中には他にも魅力的なメカが多数登場し、ブームに乗って多くが模型化された。
以下、各スケールごとに紹介してみよう。
【1/550スケール】
このスケールでは、主として「モビルアーマー」(略称MA)が模型化された。
全高18mの人型汎用兵器であるMSに対し、形状や大きさの制約を外し、限定的な戦局に特化した兵器がMAである。
MSよりかなり巨大なサイズ設定のため、売れる値段帯から逆算してこのスケールになったようだ。
デザイン的には富野監督の原案が強く反映されているものが多く、一目見たら忘れられないインパクトを持っていた。
ファーストガンダムのメカデザインにおける富野監督の功績は、もっともっと語られてよいだろう。
同じく富野原案の水陸両用MSを凌ぐ個性派ぞろいで、一連のMAデザインと比べると、あのゾックですら大人しく見える。
「MAはガラ悪い学校のガチ不良で、ゾックは進学校の不良みたいやな……」
おっさんになるとそんなアホな妄想も湧いてくる。
キットは特徴をとらえた佳作ぞろいで、再販頻度は低いが時期さえ合えば昔の定価で入手可能。
MAの大半は現行キットとしてリメイクされておらず、再版されるとわりとすぐに売り切れてしまう。
いくつかのキットには同スケールのMSが付属しており、先に紹介した1/250情景模型付属の1/550MSと合わせて、様々なパターンでMAの巨大さが感じられるディスプレイが楽しめた。
1/550MSはボードゲームのコマサイズで、おまけ扱いながらかなりの種類がキット化されていたのだ。
●アッザム(定価400円)
厳密に言うとこのメカはMAには入らないかもしれない。
同スケールのガンダム(ライフル)、マゼラアタック付き。
●グラブロ(定価300円)
水中専用。作中に登場した初の本格的なMA。
●ビグロ(定価300円)
宇宙戦用MA。高い機動性により、アムロを失神に追い込んだ。
●ブラウ・ブロ(定価700円)
サイコミュによるオールレンジ攻撃ができるニュータイプ専用MAで、キットでももちろん再現可能。
ブーム当時発売されたMAキットでは最高額で、「ブラウ・ブロってこんなデカかったのか!」と驚いたものだ。
同スケールのガンダム(ライフル)付き。
●ビグ・ザム(定価300円)
ソロモン要塞を守るジオンのドズル・ザビ中将が、決死の特攻の際に自ら搭乗した巨大MA。
戦艦並みの圧倒的な火力を誇る。
作中では物凄く巨大な印象があったが、プラモになってみるとブラウ・ブロより小さくて逆にびっくりした。
作中のドズルの言によると、「ビグ・ザムが量産の暁には連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ!」とのことだったが、結局間に合わなかったようだ。
今でも何年かに一度MAのキットが再版された時には、量販店の模型コーナーの一画に「ビグ・ザムの平積み」が出現することがある。
その傍らでは「ドズル閣下、量産間に合いましたよ……」と呟くおっさんの姿が、日本国中で見られるとか見られないとか……
●ララァ・スン専用モビルアーマー(定価300円)
エルメスのことである。
キットの発売当初は作中の名称である「エルメス」と表記されていたが、ある時期からこの「変な名前」に変更された。
変更理由を正しく理解できたのは、大人になってからのことだった(笑)
同スケールのビット10個、シャア専用ゲルググ付き。
●ザクレロ(定価500円)
キット本体は1/250。
個性派ぞろいのMAの中でも極めつけにヘンテコなデザイン。
大口を開け、牙をむいた「顔」を持ち、両手に「鎌」を振りかざすその姿は、メカというよりもはや妖怪?
1/550ザクレロ、Gパーツをはいたガンダム付き。
●ミデア(定価400円)
こちらはMAではなく連邦軍輸送機。
アムロ憧れのマチルダ・アジャン中尉の乗機だ。
同スケールのドム三機付き
【1/1200スケール】
このスケールと、後で紹介する1/2400では、ファーストガンダムに登場する宇宙戦艦の類がキット化された。
●シャア専用ムサイ(定価300円)
●量産型ムサイ(定価300円)
ともにジオンの宇宙戦艦。
●ホワイトベース(定価1000円)
ガンダムの母艦。
同スケールのガンダム、ガンキャノン、ガンタンク、ガンペリー付き。
以上三種と、後で紹介する1/2400ホワイトベースは、ブームのかなり初期にはキット化されていた。
ガンプラブームは先行するヤマトプラモブームを引き継ぐ流れにあったので、主要な宇宙戦艦は早々に発売されたのだ。
MS人気が一気に爆発する中で戦艦のキット化は一旦休止され、ブームが終わった後に「落ち穂拾い」のような形で残りが発売された。
●サラミス(定価400円)
連邦の宇宙戦艦。
同スケールのジムとボール三機ずつ付属。
●マゼラン(定価500円)
連邦の宇宙戦艦。
同スケールのジムとボール二機ずつ付属。
●ガウ攻撃空母(定価300円)
ジオンの地球圏用空中空母。
同スケールのザク、ズゴック、ドップ付属。
【1/2400スケール】
●ホワイトベース(定価300円)
ガンダムの母艦。
●ザンジバル(定価300円)
ジオンの戦闘艦。
●グワジン(定価300円)
ジオンの宇宙艦。
【1/20 キャラコレ(キャラクターコレクション)】
全10種、各100円で登場人物モデルシリーズ。
キット化されたのは以下の十人。
●アムロ・レイ
●シャア・アズナブル
●マチルダ・アジャン
●セイラ・マス
●カイ・シデン
●フラウ・ボウ(ハロ付き)
●ガルマ・ザビ
●イセリナ・エッシェンバッハ
●ブライト・ノア
●ララァ・スン
ガルマやイセリナが入ってなんでミライやハヤトが入ってないのかなど、ちょっと疑問も残るラインナップだが、小サイズ、低価格ながら造形はそれなりに良く、後のアニメフィギュア商品化のはしりになったシリーズである。
私も当時、確かアムロとシャアは作ったはずだ。
ただ、安い分未塗装の白の成型色一色だったので、小学生には塗装がとてつもなく難しかった。
私はあの頃の小学生の中では塗りが上手い方だったと思うが、とても残念なアムロになってしまったことを覚えている。
シャアだけはマスクで顔が見えないので難易度が低く、なんとかマシな出来に仕上げることができた。
現在、アニメフィギュアやキットはもう「完全塗装済み」とか「完全色分け済み」が前提になっており、ブーム当時のこのシリーズのように「残念な仕上がり」が量産されなくなった分、スケールも大きくなり、価格も高騰している。
その難易度から「人物模型を自分で塗る」という文化は定着しなかったが、アニメフィギュアの膨大な需要創出という点でこのシリーズの功績は極めて大きい。
キャラコレシリーズに関しては他のガンプラと違って当時のキットの再販はないが、成型色をクリアーに代えた全種ボックスセットとして再発されたことがあり、今でも探せばさほどのプレミア無しで入手可能だ。
未組立のコレクションではなく、実際作って塗りたいなら昔の白の成型色の方が良いのだが、当時品をバラで探すとかえって高くつく。
今お求めの場合はボックスセットの方がお勧めだ。
●20th Anniversary ガンダムキャラコレボックス
【その他のガンプラ】
ここまでの紹介で、ブーム当時「バンダイから発売されたプラモデル」という意味でのガンプラは、大体網羅できているはずだ。
他にも「ガンダムチョコスナック」のおまけとして付属していた約1/300スケールのミニプラモがあり、こちらはバンダイが制作していて、ほぼ全種のMSが揃えられた。
バンダイ以外では、確かツクダホビーから固定ポーズのミニプラモが出ていた。
これは元々ホワイトメタルのフィギュアとしてばら売りしていたものを、プラ素材の四種セットとして再発したものだったと記憶している。
ホワイトメタル版は値段が高く、塗装が難しかったが、プラ素材になってかなり手を出しやすくなった。
小さいながら細身なシルエットがカッコよく、MSの種類もかなり出ていたので、私はけっこう好きだった。
その他、ガシャポン等のフィギュアまで含めると、ブーム当時のガンダムの立体物は、熱狂的にハマり切っていた私でも全部は把握できていない可能性が高い。
当時を知る人で、「こんなのもあった」という情報があれば、よろしくご教示を!
当時のガンプラを調べのつく限り並べてみて、つくづく「あのブームには今のキャラクターモデル文化の可能性が、全て萌芽として揃っていたのだな」という感を持つのである。
このカテゴリサブカルチャーでは今後も折にふれ、プラモの作例も挙げながら、主に70〜80年代サブカルについて語っていきたい。
以上は主にファーストガンダムに登場するMSが模型化されたシリーズだが、作中には他にも魅力的なメカが多数登場し、ブームに乗って多くが模型化された。
以下、各スケールごとに紹介してみよう。
【1/550スケール】
このスケールでは、主として「モビルアーマー」(略称MA)が模型化された。
全高18mの人型汎用兵器であるMSに対し、形状や大きさの制約を外し、限定的な戦局に特化した兵器がMAである。
MSよりかなり巨大なサイズ設定のため、売れる値段帯から逆算してこのスケールになったようだ。
デザイン的には富野監督の原案が強く反映されているものが多く、一目見たら忘れられないインパクトを持っていた。
ファーストガンダムのメカデザインにおける富野監督の功績は、もっともっと語られてよいだろう。
同じく富野原案の水陸両用MSを凌ぐ個性派ぞろいで、一連のMAデザインと比べると、あのゾックですら大人しく見える。
「MAはガラ悪い学校のガチ不良で、ゾックは進学校の不良みたいやな……」
おっさんになるとそんなアホな妄想も湧いてくる。
キットは特徴をとらえた佳作ぞろいで、再販頻度は低いが時期さえ合えば昔の定価で入手可能。
MAの大半は現行キットとしてリメイクされておらず、再版されるとわりとすぐに売り切れてしまう。
いくつかのキットには同スケールのMSが付属しており、先に紹介した1/250情景模型付属の1/550MSと合わせて、様々なパターンでMAの巨大さが感じられるディスプレイが楽しめた。
1/550MSはボードゲームのコマサイズで、おまけ扱いながらかなりの種類がキット化されていたのだ。
●アッザム(定価400円)
厳密に言うとこのメカはMAには入らないかもしれない。
同スケールのガンダム(ライフル)、マゼラアタック付き。
●グラブロ(定価300円)
水中専用。作中に登場した初の本格的なMA。
●ビグロ(定価300円)
宇宙戦用MA。高い機動性により、アムロを失神に追い込んだ。
●ブラウ・ブロ(定価700円)
サイコミュによるオールレンジ攻撃ができるニュータイプ専用MAで、キットでももちろん再現可能。
ブーム当時発売されたMAキットでは最高額で、「ブラウ・ブロってこんなデカかったのか!」と驚いたものだ。
同スケールのガンダム(ライフル)付き。
●ビグ・ザム(定価300円)
ソロモン要塞を守るジオンのドズル・ザビ中将が、決死の特攻の際に自ら搭乗した巨大MA。
戦艦並みの圧倒的な火力を誇る。
作中では物凄く巨大な印象があったが、プラモになってみるとブラウ・ブロより小さくて逆にびっくりした。
作中のドズルの言によると、「ビグ・ザムが量産の暁には連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ!」とのことだったが、結局間に合わなかったようだ。
今でも何年かに一度MAのキットが再版された時には、量販店の模型コーナーの一画に「ビグ・ザムの平積み」が出現することがある。
その傍らでは「ドズル閣下、量産間に合いましたよ……」と呟くおっさんの姿が、日本国中で見られるとか見られないとか……
●ララァ・スン専用モビルアーマー(定価300円)
エルメスのことである。
キットの発売当初は作中の名称である「エルメス」と表記されていたが、ある時期からこの「変な名前」に変更された。
変更理由を正しく理解できたのは、大人になってからのことだった(笑)
同スケールのビット10個、シャア専用ゲルググ付き。
●ザクレロ(定価500円)
キット本体は1/250。
個性派ぞろいのMAの中でも極めつけにヘンテコなデザイン。
大口を開け、牙をむいた「顔」を持ち、両手に「鎌」を振りかざすその姿は、メカというよりもはや妖怪?
1/550ザクレロ、Gパーツをはいたガンダム付き。
●ミデア(定価400円)
こちらはMAではなく連邦軍輸送機。
アムロ憧れのマチルダ・アジャン中尉の乗機だ。
同スケールのドム三機付き
【1/1200スケール】
このスケールと、後で紹介する1/2400では、ファーストガンダムに登場する宇宙戦艦の類がキット化された。
●シャア専用ムサイ(定価300円)
●量産型ムサイ(定価300円)
ともにジオンの宇宙戦艦。
●ホワイトベース(定価1000円)
ガンダムの母艦。
同スケールのガンダム、ガンキャノン、ガンタンク、ガンペリー付き。
以上三種と、後で紹介する1/2400ホワイトベースは、ブームのかなり初期にはキット化されていた。
ガンプラブームは先行するヤマトプラモブームを引き継ぐ流れにあったので、主要な宇宙戦艦は早々に発売されたのだ。
MS人気が一気に爆発する中で戦艦のキット化は一旦休止され、ブームが終わった後に「落ち穂拾い」のような形で残りが発売された。
●サラミス(定価400円)
連邦の宇宙戦艦。
同スケールのジムとボール三機ずつ付属。
●マゼラン(定価500円)
連邦の宇宙戦艦。
同スケールのジムとボール二機ずつ付属。
●ガウ攻撃空母(定価300円)
ジオンの地球圏用空中空母。
同スケールのザク、ズゴック、ドップ付属。
【1/2400スケール】
●ホワイトベース(定価300円)
ガンダムの母艦。
●ザンジバル(定価300円)
ジオンの戦闘艦。
●グワジン(定価300円)
ジオンの宇宙艦。
【1/20 キャラコレ(キャラクターコレクション)】
全10種、各100円で登場人物モデルシリーズ。
キット化されたのは以下の十人。
●アムロ・レイ
●シャア・アズナブル
●マチルダ・アジャン
●セイラ・マス
●カイ・シデン
●フラウ・ボウ(ハロ付き)
●ガルマ・ザビ
●イセリナ・エッシェンバッハ
●ブライト・ノア
●ララァ・スン
ガルマやイセリナが入ってなんでミライやハヤトが入ってないのかなど、ちょっと疑問も残るラインナップだが、小サイズ、低価格ながら造形はそれなりに良く、後のアニメフィギュア商品化のはしりになったシリーズである。
私も当時、確かアムロとシャアは作ったはずだ。
ただ、安い分未塗装の白の成型色一色だったので、小学生には塗装がとてつもなく難しかった。
私はあの頃の小学生の中では塗りが上手い方だったと思うが、とても残念なアムロになってしまったことを覚えている。
シャアだけはマスクで顔が見えないので難易度が低く、なんとかマシな出来に仕上げることができた。
現在、アニメフィギュアやキットはもう「完全塗装済み」とか「完全色分け済み」が前提になっており、ブーム当時のこのシリーズのように「残念な仕上がり」が量産されなくなった分、スケールも大きくなり、価格も高騰している。
その難易度から「人物模型を自分で塗る」という文化は定着しなかったが、アニメフィギュアの膨大な需要創出という点でこのシリーズの功績は極めて大きい。
キャラコレシリーズに関しては他のガンプラと違って当時のキットの再販はないが、成型色をクリアーに代えた全種ボックスセットとして再発されたことがあり、今でも探せばさほどのプレミア無しで入手可能だ。
未組立のコレクションではなく、実際作って塗りたいなら昔の白の成型色の方が良いのだが、当時品をバラで探すとかえって高くつく。
今お求めの場合はボックスセットの方がお勧めだ。
●20th Anniversary ガンダムキャラコレボックス
【その他のガンプラ】
ここまでの紹介で、ブーム当時「バンダイから発売されたプラモデル」という意味でのガンプラは、大体網羅できているはずだ。
他にも「ガンダムチョコスナック」のおまけとして付属していた約1/300スケールのミニプラモがあり、こちらはバンダイが制作していて、ほぼ全種のMSが揃えられた。
バンダイ以外では、確かツクダホビーから固定ポーズのミニプラモが出ていた。
これは元々ホワイトメタルのフィギュアとしてばら売りしていたものを、プラ素材の四種セットとして再発したものだったと記憶している。
ホワイトメタル版は値段が高く、塗装が難しかったが、プラ素材になってかなり手を出しやすくなった。
小さいながら細身なシルエットがカッコよく、MSの種類もかなり出ていたので、私はけっこう好きだった。
その他、ガシャポン等のフィギュアまで含めると、ブーム当時のガンダムの立体物は、熱狂的にハマり切っていた私でも全部は把握できていない可能性が高い。
当時を知る人で、「こんなのもあった」という情報があれば、よろしくご教示を!
当時のガンプラを調べのつく限り並べてみて、つくづく「あのブームには今のキャラクターモデル文化の可能性が、全て萌芽として揃っていたのだな」という感を持つのである。
このカテゴリサブカルチャーでは今後も折にふれ、プラモの作例も挙げながら、主に70〜80年代サブカルについて語っていきたい。
(「ブーム当時のガンプラ」了)
2017年07月12日
これはカテゴリ「節分」案件かも
ヒアリのことである。
先月頃からこの外来有毒昆虫が話題にのぼっており、私が住んでいる地域も生息が確認された。
これから夏休みに入って屋外レジャーの機会が増えそうな時期でもあり、注意喚起されている。
報道の初期段階から「ああ、これは今まで確認されていなかっただけで、かなり前から入って来てたのだろうな」と思っていたら、その後港町を中心に日本各地で発見され、予想通りの展開になってきた。
蜂の毒とも似ているらしく、過去に蜂に刺されたことがある人はアレルギーを起こすケースもあるそうで、要注意とのこと。
ちょっと思い当たるのでギクリとする。
実は私、小学生の頃、アシナガバチに刺されて全身ジンマシンででこぼこになったことがあるのだ(笑)
そう言えば同じ頃、2歳下の弟もアリにちんこ噛まれて腫れていたことがあったような……
おまえも気ぃつけや。
なんとも恐ろしい感じがするけれども、こういうことはあまり過剰反応しない方が良い。
ドラッグストアやホームセンターの店先には、ここぞとばかりにアリ駆除剤が平積みされているけれども、ここは一つ冷静に。
これも既に報道などで解説されているが、ヒアリの最大の天敵は、日本の在来アリであるそうなのだ。
おそらくかなり以前から日本に入り込んでいたであろうヒアリ。
その生息域の拡大を、在来アリがこれまで食い止めて来たのではないかとも考えられるのだ。
報道に煽られ、身の回りのアリの巣を根こそぎ駆除したりすると、かえってその「空白地帯」にヒアリが侵入してしまうこともあり得る。
当ブログで言えば、カテゴリ節分あたりで書いてきたお話の数々に、よく似た構図が見て取れると思う。
一応ヒアリという有毒生物の知識は得ながら、あまり過剰反応せずに「やり過ごす」のが、今のところはほど良い対応ではないだろうか。
先月頃からこの外来有毒昆虫が話題にのぼっており、私が住んでいる地域も生息が確認された。
これから夏休みに入って屋外レジャーの機会が増えそうな時期でもあり、注意喚起されている。
報道の初期段階から「ああ、これは今まで確認されていなかっただけで、かなり前から入って来てたのだろうな」と思っていたら、その後港町を中心に日本各地で発見され、予想通りの展開になってきた。
蜂の毒とも似ているらしく、過去に蜂に刺されたことがある人はアレルギーを起こすケースもあるそうで、要注意とのこと。
ちょっと思い当たるのでギクリとする。
実は私、小学生の頃、アシナガバチに刺されて全身ジンマシンででこぼこになったことがあるのだ(笑)
そう言えば同じ頃、2歳下の弟もアリにちんこ噛まれて腫れていたことがあったような……
おまえも気ぃつけや。
なんとも恐ろしい感じがするけれども、こういうことはあまり過剰反応しない方が良い。
ドラッグストアやホームセンターの店先には、ここぞとばかりにアリ駆除剤が平積みされているけれども、ここは一つ冷静に。
これも既に報道などで解説されているが、ヒアリの最大の天敵は、日本の在来アリであるそうなのだ。
おそらくかなり以前から日本に入り込んでいたであろうヒアリ。
その生息域の拡大を、在来アリがこれまで食い止めて来たのではないかとも考えられるのだ。
報道に煽られ、身の回りのアリの巣を根こそぎ駆除したりすると、かえってその「空白地帯」にヒアリが侵入してしまうこともあり得る。
当ブログで言えば、カテゴリ節分あたりで書いてきたお話の数々に、よく似た構図が見て取れると思う。
一応ヒアリという有毒生物の知識は得ながら、あまり過剰反応せずに「やり過ごす」のが、今のところはほど良い対応ではないだろうか。
2017年07月16日
野望は死なず
先月末、長らく単行本になっていなかったマンガ作品が、連載終了後10年の時を経て初刊行された。
相原コージ/竹熊健太郎「サルまん2.0」である。
●「サルまん2.0~サルでも描けるまんが教室2.0~」相原コージ/竹熊健太郎(小学館クリエイティブ)
本作は1989年からスピリッツ連載の人気マンガ「サルでも描けるまんが教室」(愛称「サルまん」)の続編にあたり、2007年に「IKKI」誌に掲載されていた。
残念ながら8回の短期連載に終り、総ページ数の少なさから、今まで単行本化の機会に恵まれなかったのである。
1989年から92年にかけて執筆された最初の「サルまん」は、藤子不二雄A「まんが道」から近年のヒット作「バクマン。」へと連なる「マンガ家マンガ」の系譜上にありながらも、極めて変則的な作品だった。
まず、作者の相原・竹熊コンビが、普通で言うところの「マンガ家と原作者」とは違っていた。
基本的には竹熊がブレイン、主な作画を相原が担当していたが、内容については編集者も加えたミーティングの中で練り上げられていたようで、竹熊が文章で埋めたり、作画を担当したのコマやページもかなり多かった。
そうした役割分担における変則と同時に、作品自体も番場蛮の魔球並みにアクロバットな構図を持っており、掲載誌スピリッツの中にもう一つ別編集の「雑誌内雑誌」が存在しているような感覚だった。
具体的には、以下のような構図である。
1、実在の作者としての相原・竹熊(当時26歳、29歳)
2、作中に「解説者」として登場する相原・竹熊(従来の相原コージの絵柄)
3、メインキャラとしての相原・竹熊(劇画「野望の王国」を模した絵柄)
こうした三層構造のメタ・フィクションになっていたのだ。
読者の立場では主に3層目、マンガによる日本征服の野望に燃える19歳の相原、22歳の竹熊コンビの活躍を追いながら、1〜2層目の実作者の階層まで視野に入れながら読み進めていくことになる。
連載開始当初は「まんがの描き方」の体裁を借りながら、世の売れるマンガの類型についての蘊蓄、分析、批評を、過剰な劇画の筆致で強引にギャグに持っていく展開が面白かった。
このマンガ批評路線のネタが一巡した旧単行本の一巻分だけでも十分に傑作だったと思うのだが、「週刊誌連載」というシステムの持つ魔力は、作品に更にドライブをかけていく。
連載中盤からは、雑誌デビューを果たした作中メインキャラの相原・竹熊コンビの作品が「連載内連載」としてスタートすることで、構造は更に複雑怪奇になる。
上記の三層に、新たな「四層目」が加えられたのだ。
4、連載内連載「とんち番長」開始
この段階に入ってから、現実の相原・竹熊両名から作中メインキャラの相原・竹熊コンビまで、1層目から3層目までの苦闘は完全に同期した。
ネームも作画も作業量が激増、絵に描いたような自転車操業の狂乱にどっぷりつかった分、作品はスリリングになっていった。
連載内連載で模索される「とんち番長」の次なる展開、作中の相原・竹熊の苦悩と共に、実作者である相原・竹熊両名の追い詰められぶりが垣間見えて、毎週掲載誌のページを開く手に、何とも言えぬ期待と緊張がこもっていたのを覚えている。
そして作品内の出来事ではあるけれども「とんち番長」はアニメ化もされるヒット作となり、虚構とシンクロするように現実の「サルまん」も、単行本が豪華版で出されるほどのヒットになっていった。
ここまで描いてしまったからには、週刊マンガ作品・作者の、「ヒットしたその後」まで描き切らねば嘘になる。
作品のヒットという「光」ある所には、必ず「闇」が生じるのだ。
作中の相原・竹熊は、ついに「とんち番長」の「本来のラスト」までたどりつく。
それは少年マンガのラストバトルとしては真に正しく、「父殺し」の神話の構図を踏襲した素晴らしいもので、不覚にも「とんち番長」が作品内のネタであることを忘れてしまうほどに感動的なものだった。
しかし、作中の相原・竹熊が血と汗と涙と共に記した「完」の文字は、ヒット作を簡単には終わらせたくない編集によって削除されてしまう。
豪邸のローンに縛られた相原・竹熊は、絶大な権力を持つ編集の意のままに、続きを描かざるを得なくなる。
無理矢理引き伸ばされた作品は、迷走し、路線変更を繰り返しながら、人気低落の泥沼にはまり込んでいく。
作中の相原・竹熊コンビは次第に心身のバランスを崩し、やがて……
サクセスの後の「闇」まで描き切ったからこそ、「ファースト・サルまん」は不朽の傑作になったのである。
第一作については、2000年代に入ってから愛蔵版が刊行されているが、現在やや入手困難。
●「サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上下巻」相原コージ/竹熊健太郎(BIG SPIRITS COMICS)
90年代の最初の単行本を古書で探した方が早いかもしれず、これはこれで連載当時の「マンガ出版全盛期」の空気が伝わってくるだろう。
●「サルでも描けるまんが教室―青春コミックス 全三巻」相原コージ/竹熊健太郎(Big spirits comics)
この第一作の大ファンだった私は、連載終了後も二人の作者、相原コージと竹熊健太郎の作品は追い続けていた。
時代の機運にも恵まれ、実力の最大値で作品を描き上げた作者の、「その後の苦闘」というものも感じながらも、90年代以降の二人の活動は追い続ける価値のあるものだったと思う。
代表作「サルまん」以降の相原・竹熊の作品で特に好きなものを以下に紹介しておこう。
●「ムジナ 全9巻完結」相原コージ(ヤングサンデーコミックス)
●「相原コージのなにがオモシロイの?」相原コージ(週刊ビックコミックスピリッツ増刊号)
●「私とハルマゲドン」竹熊健太郎(ちくま文庫)
●「篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝」竹熊健太郎(河出文庫)
そして時を経た2007年、ネットが完全に一般化し、今に続くSNS文化の走りであるブログ全盛期、「サルまん」の続編は執筆開始された。
残念ながら作者・作品をとりまく諸条件が第一作のようには嚙み合わず、作者自ら打ち切りを申し出るという前代未聞の空中分解を遂げたのだが、今回初単行本化された機会に読み返してみると十分に面白く、「もったいない」という感想を強く持った。
私も作中でほんの一コマだけ「参加」させてもらったこともあり、よけいにそう思うのかもしれない。
これからという時に中断された「サルまん2.0」だが、あれから10年、作中で断片的に描かれた「竹熊の野望」は、実はネット上で形を成しつつある。
編集家・竹熊健太郎が主宰するWEB雑誌「電脳マヴォ」、そしてtwitterでの活動こそ、竹熊自身の表現によれば「サルまん3.0」なのだ。
近年の竹熊健太郎の活動については、これまでにも何度か紹介してきた。
マンガ表現の近未来「電脳マヴォ」
雑誌掲載マンガの制約から解放され、作中キャラの狂気と野望も飲み込んだ竹熊健太郎の活動に、今後ますます注目なのである。
相原コージ/竹熊健太郎「サルまん2.0」である。
●「サルまん2.0~サルでも描けるまんが教室2.0~」相原コージ/竹熊健太郎(小学館クリエイティブ)
本作は1989年からスピリッツ連載の人気マンガ「サルでも描けるまんが教室」(愛称「サルまん」)の続編にあたり、2007年に「IKKI」誌に掲載されていた。
残念ながら8回の短期連載に終り、総ページ数の少なさから、今まで単行本化の機会に恵まれなかったのである。
1989年から92年にかけて執筆された最初の「サルまん」は、藤子不二雄A「まんが道」から近年のヒット作「バクマン。」へと連なる「マンガ家マンガ」の系譜上にありながらも、極めて変則的な作品だった。
まず、作者の相原・竹熊コンビが、普通で言うところの「マンガ家と原作者」とは違っていた。
基本的には竹熊がブレイン、主な作画を相原が担当していたが、内容については編集者も加えたミーティングの中で練り上げられていたようで、竹熊が文章で埋めたり、作画を担当したのコマやページもかなり多かった。
そうした役割分担における変則と同時に、作品自体も番場蛮の魔球並みにアクロバットな構図を持っており、掲載誌スピリッツの中にもう一つ別編集の「雑誌内雑誌」が存在しているような感覚だった。
具体的には、以下のような構図である。
1、実在の作者としての相原・竹熊(当時26歳、29歳)
2、作中に「解説者」として登場する相原・竹熊(従来の相原コージの絵柄)
3、メインキャラとしての相原・竹熊(劇画「野望の王国」を模した絵柄)
こうした三層構造のメタ・フィクションになっていたのだ。
読者の立場では主に3層目、マンガによる日本征服の野望に燃える19歳の相原、22歳の竹熊コンビの活躍を追いながら、1〜2層目の実作者の階層まで視野に入れながら読み進めていくことになる。
連載開始当初は「まんがの描き方」の体裁を借りながら、世の売れるマンガの類型についての蘊蓄、分析、批評を、過剰な劇画の筆致で強引にギャグに持っていく展開が面白かった。
このマンガ批評路線のネタが一巡した旧単行本の一巻分だけでも十分に傑作だったと思うのだが、「週刊誌連載」というシステムの持つ魔力は、作品に更にドライブをかけていく。
連載中盤からは、雑誌デビューを果たした作中メインキャラの相原・竹熊コンビの作品が「連載内連載」としてスタートすることで、構造は更に複雑怪奇になる。
上記の三層に、新たな「四層目」が加えられたのだ。
4、連載内連載「とんち番長」開始
この段階に入ってから、現実の相原・竹熊両名から作中メインキャラの相原・竹熊コンビまで、1層目から3層目までの苦闘は完全に同期した。
ネームも作画も作業量が激増、絵に描いたような自転車操業の狂乱にどっぷりつかった分、作品はスリリングになっていった。
連載内連載で模索される「とんち番長」の次なる展開、作中の相原・竹熊の苦悩と共に、実作者である相原・竹熊両名の追い詰められぶりが垣間見えて、毎週掲載誌のページを開く手に、何とも言えぬ期待と緊張がこもっていたのを覚えている。
そして作品内の出来事ではあるけれども「とんち番長」はアニメ化もされるヒット作となり、虚構とシンクロするように現実の「サルまん」も、単行本が豪華版で出されるほどのヒットになっていった。
ここまで描いてしまったからには、週刊マンガ作品・作者の、「ヒットしたその後」まで描き切らねば嘘になる。
作品のヒットという「光」ある所には、必ず「闇」が生じるのだ。
作中の相原・竹熊は、ついに「とんち番長」の「本来のラスト」までたどりつく。
それは少年マンガのラストバトルとしては真に正しく、「父殺し」の神話の構図を踏襲した素晴らしいもので、不覚にも「とんち番長」が作品内のネタであることを忘れてしまうほどに感動的なものだった。
しかし、作中の相原・竹熊が血と汗と涙と共に記した「完」の文字は、ヒット作を簡単には終わらせたくない編集によって削除されてしまう。
豪邸のローンに縛られた相原・竹熊は、絶大な権力を持つ編集の意のままに、続きを描かざるを得なくなる。
無理矢理引き伸ばされた作品は、迷走し、路線変更を繰り返しながら、人気低落の泥沼にはまり込んでいく。
作中の相原・竹熊コンビは次第に心身のバランスを崩し、やがて……
サクセスの後の「闇」まで描き切ったからこそ、「ファースト・サルまん」は不朽の傑作になったのである。
第一作については、2000年代に入ってから愛蔵版が刊行されているが、現在やや入手困難。
●「サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上下巻」相原コージ/竹熊健太郎(BIG SPIRITS COMICS)
90年代の最初の単行本を古書で探した方が早いかもしれず、これはこれで連載当時の「マンガ出版全盛期」の空気が伝わってくるだろう。
●「サルでも描けるまんが教室―青春コミックス 全三巻」相原コージ/竹熊健太郎(Big spirits comics)
この第一作の大ファンだった私は、連載終了後も二人の作者、相原コージと竹熊健太郎の作品は追い続けていた。
時代の機運にも恵まれ、実力の最大値で作品を描き上げた作者の、「その後の苦闘」というものも感じながらも、90年代以降の二人の活動は追い続ける価値のあるものだったと思う。
代表作「サルまん」以降の相原・竹熊の作品で特に好きなものを以下に紹介しておこう。
●「ムジナ 全9巻完結」相原コージ(ヤングサンデーコミックス)
●「相原コージのなにがオモシロイの?」相原コージ(週刊ビックコミックスピリッツ増刊号)
●「私とハルマゲドン」竹熊健太郎(ちくま文庫)
●「篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝」竹熊健太郎(河出文庫)
そして時を経た2007年、ネットが完全に一般化し、今に続くSNS文化の走りであるブログ全盛期、「サルまん」の続編は執筆開始された。
残念ながら作者・作品をとりまく諸条件が第一作のようには嚙み合わず、作者自ら打ち切りを申し出るという前代未聞の空中分解を遂げたのだが、今回初単行本化された機会に読み返してみると十分に面白く、「もったいない」という感想を強く持った。
私も作中でほんの一コマだけ「参加」させてもらったこともあり、よけいにそう思うのかもしれない。
これからという時に中断された「サルまん2.0」だが、あれから10年、作中で断片的に描かれた「竹熊の野望」は、実はネット上で形を成しつつある。
編集家・竹熊健太郎が主宰するWEB雑誌「電脳マヴォ」、そしてtwitterでの活動こそ、竹熊自身の表現によれば「サルまん3.0」なのだ。
近年の竹熊健太郎の活動については、これまでにも何度か紹介してきた。
マンガ表現の近未来「電脳マヴォ」
雑誌掲載マンガの制約から解放され、作中キャラの狂気と野望も飲み込んだ竹熊健太郎の活動に、今後ますます注目なのである。
2017年07月17日
お笑いメタルのカタルシス
私の音楽の聴き方は、その時その時波長の合ったものをヘビーローテーションで1〜2か月聴き狂うというパターンが多い。
常時音楽無しではいられないほど音楽好きではなく、自発的には何も聴かないという時期もある。
ただ、何かを創っている時は、日常の意識からチューニングを変える「儀式」として、ヘッドフォンを装着することが多い。
そういう時に使える音源は限られていて、ここ十年ほどあまり「新規参入」してくることはなかったのだが、この2か月ほど久々に新しい音源がリストに加わっていた。
バンド「THE冠」のベスト盤2枚である。
●BEST OF THE冠『肉』
●BEST OF THE冠『骨』
とくに今は『骨』盤を聴き狂っている。
このバンドについては何年か前、一度記事にしたことがあった。
先走る才能に追い付くということ
過去記事と重複するが、THE冠を率いる冠徹弥(かんむり てつや)について、略歴を紹介してみよう。
1971年生まれ、京都出身。
1991年にバンド「So What?」結成、95年メジャーデビュー。
このデビューにはたしか聖飢魔Uが関わっていたはずで、信者だった私は当時から冠の存在は知っていたことになる。
2003年にはSo What?解散。
2000年代半ばごろからちょっと自虐的な「ヘビメタあるある」を、超絶ハイトーンシャウトにのせて歌いあげるキャラクターがハマりはじめ、演劇などにも活動の幅を広げていく。
私はこの時期からYouTube等で再発見。「ああ、まだ頑張ってたんだなあ」という感慨とともに、あまりのおもしろさに密かに応援しはじめていた
そして2010年、当時まだTVから身を引いていなかった島田紳助に見出され、「行列のできる法律相談所」に出演。一気に知名度を上げる。
マンガ「北斗の拳」に出てくるラオウみたいな鉄兜をかぶった、おもろいヘビメタあんちゃんの姿が記憶に残っている人も多いことだろう。
2013年には自身が「最高傑作」と推すアルバムが出て、私も「なるほど、これは凄い!」と感心しながらレビューを書いたのが、上掲の過去記事である。
以下、当時の感想を再録してみよう。
---------------
長らくマニアックな「ヘビメタあるある」で楽しませてもらってきたのだが、ここにきて冠徹弥は完全に一皮むけた。
マニアだけに通じる閉ざされたネタの世界から、アラフォー男子感涙の「アラフォーメタル」にシフトすることで、作品の普遍性が飛躍的に増したのだ。
相変わらず安定のハイトーンシャウトにのせて歌われるのは、同世代の誰もが日々感じる怒りや切なさで、その組み合わせに全く違和感がない。
冠徹弥はデビュー当時から才気溢れるメタルボーカリストだった。
しかし、どこかそのあふれる才能だけが先走っているようで、観ていて非常にもどかしかったのだが、長い長い雌伏を経て、ついに歌うべきモチーフや世界観にきちんと出会ったのかもしれない。
マンガ「バキ」のセリフ回しを借りるなら、「溢れる才能に冠徹弥がついに追いついた!」ということになると思う。
いや、まだまだこんなもんではない。
冠徹弥にはまだこの先があるはずで、アルバム「帰ってきたヘビーメタル」は、その輝ける序章になるに違いないのだ。
●帰ってきたヘビーメタル
そこそこ年くってもまったく衰えない超絶シャウト!
右肩上がりで今現在が全盛期!
すべての同世代のバカを背負って、突っ走れ!
-----------------
あれから4年、冠徹弥は期待通り「アラフォーメタルのその先」を切り開いていった。
昨年発売されたベスト盤二枚は、ライブ等でも歌い続けられてきた過去の楽曲を、ほとんど新曲の如くリニューアルし、THE冠の「今」の境地を存分に発揮した内容になっているのだ。
声も歌詞も楽曲も、年齢を刻んだ自分とがっちり嚙み合わせ、まさに今歌うことにリアリティのあるラインナップになっている。
衰えを見せぬハイトーンシャウトは、聴き手の脳に強烈に突き刺さるのである。
四十路を超えた己をしっかり踏まえるならば、「政治的」なプロテストにも骨肉が詰まり、上滑りしない。
たとえば「骨」盤に収録された「糞野郎」という曲がある。
上掲動画は2013年の初出時のバージョン。
子供の頃の暗い思い出を素材にしながら、かなりわかりやすいプロテストソングになっていると思うのだが、発表後「誤解」がけっこうあったという。
歌詞そのままに「うんこ漏らした子供dis」と受け取ったリスナーがいるというのだ。
そんなリアクションを受け、今回のベスト盤では「誤解」の余地が生まれぬよう、歌詞が一部差し替えられ、政治批判はより鮮明になった。
私に言わせればそのような差し替えは「野暮」であり、読解力のないアホに合わせて表現のレベルを下げるべきではないと思う。
今回の改変については「音楽に政治を持ち込むな」というような、私とは逆のベクトルの批判意見もあるだろう。
しかし、それでもあえて改変に踏み切った冠徹弥の選択も、それはそれで理解できる。
たかがヘビメタ、その中でもとくに虐げられたジャパメタの、マイナーな一楽曲の歌詞について、あれこれ青臭く語る意欲を沸かせるのが、今のTHE冠の境地なのだ。
「舐められて死ねるかいな!」
「民よ怒れ! はめられた おのれ貴様 主は我々だ!」
「生きる! 生きる! 屈辱の日々、終りを告げるまで!」
一曲に何か所かは必ず「刺さる」詞があり、「刺さる」シャウトがある。
夕方学校帰りにMTVを眺めていた私の年代だと、社会派フォークは歴史の中の出来事だし、若い者のHIPHOPには今一つ乗り切れない。
おのれの魂が求めるのは、思春期に聴いていた音であり、同じように年齢を重ねた者の言葉だ。
THE冠のアルバムは、まさにド真ん中のストライク。
笑いのその先の涙、ネタを超越したカタルシスがそこにある。
恥ずかしながらヘビメタ、今後も贔屓にさせてもらいます!
常時音楽無しではいられないほど音楽好きではなく、自発的には何も聴かないという時期もある。
ただ、何かを創っている時は、日常の意識からチューニングを変える「儀式」として、ヘッドフォンを装着することが多い。
そういう時に使える音源は限られていて、ここ十年ほどあまり「新規参入」してくることはなかったのだが、この2か月ほど久々に新しい音源がリストに加わっていた。
バンド「THE冠」のベスト盤2枚である。
●BEST OF THE冠『肉』
●BEST OF THE冠『骨』
とくに今は『骨』盤を聴き狂っている。
このバンドについては何年か前、一度記事にしたことがあった。
先走る才能に追い付くということ
過去記事と重複するが、THE冠を率いる冠徹弥(かんむり てつや)について、略歴を紹介してみよう。
1971年生まれ、京都出身。
1991年にバンド「So What?」結成、95年メジャーデビュー。
このデビューにはたしか聖飢魔Uが関わっていたはずで、信者だった私は当時から冠の存在は知っていたことになる。
2003年にはSo What?解散。
2000年代半ばごろからちょっと自虐的な「ヘビメタあるある」を、超絶ハイトーンシャウトにのせて歌いあげるキャラクターがハマりはじめ、演劇などにも活動の幅を広げていく。
私はこの時期からYouTube等で再発見。「ああ、まだ頑張ってたんだなあ」という感慨とともに、あまりのおもしろさに密かに応援しはじめていた
そして2010年、当時まだTVから身を引いていなかった島田紳助に見出され、「行列のできる法律相談所」に出演。一気に知名度を上げる。
マンガ「北斗の拳」に出てくるラオウみたいな鉄兜をかぶった、おもろいヘビメタあんちゃんの姿が記憶に残っている人も多いことだろう。
2013年には自身が「最高傑作」と推すアルバムが出て、私も「なるほど、これは凄い!」と感心しながらレビューを書いたのが、上掲の過去記事である。
以下、当時の感想を再録してみよう。
---------------
長らくマニアックな「ヘビメタあるある」で楽しませてもらってきたのだが、ここにきて冠徹弥は完全に一皮むけた。
マニアだけに通じる閉ざされたネタの世界から、アラフォー男子感涙の「アラフォーメタル」にシフトすることで、作品の普遍性が飛躍的に増したのだ。
相変わらず安定のハイトーンシャウトにのせて歌われるのは、同世代の誰もが日々感じる怒りや切なさで、その組み合わせに全く違和感がない。
冠徹弥はデビュー当時から才気溢れるメタルボーカリストだった。
しかし、どこかそのあふれる才能だけが先走っているようで、観ていて非常にもどかしかったのだが、長い長い雌伏を経て、ついに歌うべきモチーフや世界観にきちんと出会ったのかもしれない。
マンガ「バキ」のセリフ回しを借りるなら、「溢れる才能に冠徹弥がついに追いついた!」ということになると思う。
いや、まだまだこんなもんではない。
冠徹弥にはまだこの先があるはずで、アルバム「帰ってきたヘビーメタル」は、その輝ける序章になるに違いないのだ。
●帰ってきたヘビーメタル
そこそこ年くってもまったく衰えない超絶シャウト!
右肩上がりで今現在が全盛期!
すべての同世代のバカを背負って、突っ走れ!
-----------------
あれから4年、冠徹弥は期待通り「アラフォーメタルのその先」を切り開いていった。
昨年発売されたベスト盤二枚は、ライブ等でも歌い続けられてきた過去の楽曲を、ほとんど新曲の如くリニューアルし、THE冠の「今」の境地を存分に発揮した内容になっているのだ。
声も歌詞も楽曲も、年齢を刻んだ自分とがっちり嚙み合わせ、まさに今歌うことにリアリティのあるラインナップになっている。
衰えを見せぬハイトーンシャウトは、聴き手の脳に強烈に突き刺さるのである。
四十路を超えた己をしっかり踏まえるならば、「政治的」なプロテストにも骨肉が詰まり、上滑りしない。
たとえば「骨」盤に収録された「糞野郎」という曲がある。
上掲動画は2013年の初出時のバージョン。
子供の頃の暗い思い出を素材にしながら、かなりわかりやすいプロテストソングになっていると思うのだが、発表後「誤解」がけっこうあったという。
歌詞そのままに「うんこ漏らした子供dis」と受け取ったリスナーがいるというのだ。
そんなリアクションを受け、今回のベスト盤では「誤解」の余地が生まれぬよう、歌詞が一部差し替えられ、政治批判はより鮮明になった。
私に言わせればそのような差し替えは「野暮」であり、読解力のないアホに合わせて表現のレベルを下げるべきではないと思う。
今回の改変については「音楽に政治を持ち込むな」というような、私とは逆のベクトルの批判意見もあるだろう。
しかし、それでもあえて改変に踏み切った冠徹弥の選択も、それはそれで理解できる。
たかがヘビメタ、その中でもとくに虐げられたジャパメタの、マイナーな一楽曲の歌詞について、あれこれ青臭く語る意欲を沸かせるのが、今のTHE冠の境地なのだ。
「舐められて死ねるかいな!」
「民よ怒れ! はめられた おのれ貴様 主は我々だ!」
「生きる! 生きる! 屈辱の日々、終りを告げるまで!」
一曲に何か所かは必ず「刺さる」詞があり、「刺さる」シャウトがある。
夕方学校帰りにMTVを眺めていた私の年代だと、社会派フォークは歴史の中の出来事だし、若い者のHIPHOPには今一つ乗り切れない。
おのれの魂が求めるのは、思春期に聴いていた音であり、同じように年齢を重ねた者の言葉だ。
THE冠のアルバムは、まさにド真ん中のストライク。
笑いのその先の涙、ネタを超越したカタルシスがそこにある。
恥ずかしながらヘビメタ、今後も贔屓にさせてもらいます!