絵描きなので、鉛筆デッサン、鉛筆スケッチにはけっこう思い入れがある。
デッサンと見取り稽古
ここ数年、鉛筆を削って使っている。
長らく削らなくてもいい「鉛筆芯ホルダー」を愛用していたが、思うところあって削る鉛筆に回帰した。
貴重な制作時間を確保するため、色々便利な道具も試してみた。
しかし、時間短縮で能率を上げたら絵の質が上がるかというと、そうでもないなと感じるようになった。
書道で墨をする時間が大切であるように、鉛筆を好みの状態に削り出すという時間もまた大切なのだと、今さらのように気づいたのだ。
【ナイフ】
鉛筆を削るなら切り出しナイフがベストだ。
カッターナイフでも切れ味に問題はないが、刃が薄いので「しなる」分、鉛筆のような木材を削る時には不便を感じる。
一昔二昔前は、鉛筆を削るなら「肥後の守」と言われていたものだが、最近はあまり売っていないし、たまに見かけてもけっこう高い。
研ぐ技術がないとかえって危なかったりする。
今お勧めなのは、OLFAのクラフトナイフのシリーズだ。
●オルファ クラフトナイフS
切れ味、耐久性が申し分なく、文具店やホームセンターで安く手軽に入手できるのが大変素晴らしい。
アウトドアの使用にも十分に耐えられるだろう。
夏休みの工作などにもカッターナイフよりこちらをお勧めしたいが、昨今の刃物に対する(私に言わせれば過剰な)規制の風潮の中では難しいかもしれない。
普通のカッターナイフを使う場合でも、いい加減な作りのものだと快適に削れず、ケガの元だ。
その点、OLFA製品だったら間違いがない。
●カッターナイフ
ステンレス刃のシンプルデザイン。
こういう製品を手に取ってみると、さすが世界のオルファだなと認識を新たにする。
極上のプロダクトデザインと切れ味を堪能できる一本だ。
鉛筆を削るのは全ての工作の基本中の基本だ。
子供の日常から刃物を取り上げ、工作と、ちょっとした怪我をする機会まで奪ったことが、他人の痛みに対する創造力の欠落につながっていると、個人的には考えている。
【鉛筆】
手で鉛筆を削ると、木の削り心地も重要な要素になってくる。
100均の鉛筆で使われているような正体不明の粗い木材だと、削る段階で創作意欲が減退してしまう。
鉛筆画を志すなら、安価なものでも良いから、せめて名の通ったメーカー品を入手した方が良く、あとは「好み」としか言いようがない。
とにかく描きはじめてみれば、技量の向上とともに自然と鉛筆の質にまで注意が向くようになるだろう。
デッサン教室では、ステッドラーのルモグラフか、三菱ハイユニのどちらかを使う人が多いはずだ。
●ステッドラー ルモグラフ 12硬度セット
6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H
●三菱鉛筆ハイユニ アート22本セット
10B、9B、8B、7B、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、9H、10H
これらの硬度が全部必須というわけではなく、自分の筆圧とか手法によって必要とする硬度や本数は違ってくる。
私の場合、受験生の頃は三菱ハイユニ派だった。
ルモグラフとハイユニでは同じ硬度表示でも硬さに違いがある。
ハイユニの方が一段階ずつくらい柔らかめの印象があり、木の削り心地が好みだったのだ。
ルモグラフの方が少しだけ高価で、近所で手に入りづらかったという理由もある。
がっちりした鉛筆デッサンから離れ、都市部に居住するようになり、イラスト系の絵を描く機会が増えてからは、ルモグラフなどのステッドラー製品をよく使っていた。
近年、手で鉛筆を削る意義を再発見してから、初心に帰る意味でハイユニを買いなおした。
とりあえず濃い方から4B、2B、HB、2Hの4本。
私は受験生の頃から、あまり鉛筆の種類は増やさずにタッチのバリエーションで描き分ける方だった。
何年か鉛筆を削って使ってみた今の好みは、やっぱり相変わらずハイユニかルモグラフだった。
切らさないように常備しているのは2Bと4Bで、その日の気分や用途によってルモグラフとハイユニ、濃さを使い分ける感じだ。
一枚の絵の中ではあまり種類は使わず、ほとんど一本で完結させることが多い。
スケッチの最初に、ガサッと面をとって構図を決めるのに便利なのが、以下のもの。
●スケッチ用平型鉛筆
もう三十年ほど同じものを使っている。
おそらく海外メーカーのものだが、そうした軸に印刷してあった情報は年月とともに摩りきれてしまって何一つ残っていない。
平形の極太芯で、けっこう使っているのだが、なにしろ極太なので全然減らない(笑)
今でも画材店でたまに似たものを見かけるが、たぶん私の生涯は今持っている一本で足りる。
未確認だが、たぶん以下のものに近い。
●ホルベイン スケッチングペンシル2B
【芯ホルダー、シャープペン】
大前提としては、軽さといい、描き味といい、スケッチにはやっぱり普通の鉛筆が最高だ。
自分に合うよう削り出した鉛筆で、じっくり時間をかけてスケッチするのは何ものにも替えがたい贅沢な時間なのだが、中々そうも言っていられない人は多いだろう。
私自身は最近あまり使わなくなったが、以前多用していた、削らなくてすむシャーペンや芯ホルダーも紹介しておこう。
●0.9ミリシャープペン。
基本的に、絵を描くときにはシャープペンではなく鉛筆の方がいいのだが、0.9ミリぐらいの太い芯なら十分絵を描くのにも使える。
というか、普段の筆記用具としても、スタンダードな0.5ミリより0.7とか0.9ぐらいの方が、芯がポキポキ折れないのではるかに書きやすいと思う。
芯がよく折れる太さが定番になっているのは、替え芯をたくさん売るためのシャーペン屋の陰謀ではないか、などとアホなことを考えてしまったりもする(笑)
●マークシート用シャープペン
100均で購入したが、これが意外とスケッチに使える!
マークシート記入用に、平形の太く濃い芯が入っているので、なかなか折れないし、描く方向によって太さの使い分けができ、カリグラフィのようなタッチをつけることもできる。
●ステッドラー 2ミリ芯ホルダー
こちらはスケッチ用具としては定番中の定番。
ほとんどがプラスチック素材なので、けっこう軽くて鉛筆に近い感覚で描ける。
安いがけっこう頑丈で、私はもう二十年以上同じものを使っている。
誰にでもお勧めできる一本だ。
●パイロット 芯ホルダー
濃さのバリエーションが豊富。
私は3B以上の濃い芯を、木炭のようにこすって広げて使っていた。
【消しゴム】
最後に消しゴムについて。
鉛筆画の際、練りゴムを使う人、流派も多いと思うが、私は昔からほとんど使わなかった。
木炭の時は使ったが、鉛筆の時は普通のMONO消しゴムを使っていた。
今は薄型のものが発売されていて、重宝している。
●MONO消しゴム スマート
横向きに使うとちょうどノート一行分が消せる仕様なので、スケッチの時に広く消す時にも細かく鋭く消す時にも便利に使える。
色々書いたが、鉛筆スケッチに興味がある人は、まずはハイユニかルモグラフの2Bあたりから。
漫画原稿の下描きなどにもお勧めだ。