たまに理屈抜きで楽しめる児童文学作品が読みたくなる。
タイミングよく竹熊健太郎さんがtwitterで紹介していた本が目にとまり、さっそく図書館で借りてきた。
おりしも夏休み。
課題図書を読んでいるみたいな懐かしい気分を味わいつつ、読んだ。
●「子どもだけの町」ヘンリー・ウィンターフェルト作/大塚勇三 訳(フェリシモ出版)
1937年、スイス。
日本では1969年、学習研究社から刊行。
現在は2004年刊行されたこの本が探しやすいだろう。(今現在amazonでは古書価格が高めになっているので、図書館で探すのが良いかもしれない)
ある小さな町で、子どもの集団的なイタズラに業を煮やした大人たちが、懲らしめるために一斉に姿を消した。
町に取り残された子どもたちの混乱、無法、秩序の再生の三日間を描く作品。
少年少女の集団が大人の保護から外れ、独力でサバイバルを試みる作品は、古来数多く描かれてきた。
私も「蠅の王」「芽むしり仔撃ち」等は好きで読んでいたが、本作は初めて。
子どもたちの置かれた環境が「未開の地」ではなく、ある程度近代的インフラの整った「町丸ごと」である点が面白く、二つの少年集団同士の抗争でもそのインフラを使いこなした方が勝利する展開がリアルだと感じた。
20世紀前半の田舎町という時代設定が絶妙で、技術水準がぎりぎり「気の利いた子どもならなんとかなる」程度であるところが、物語のキモになっている。
これが完全に現代になってしまうと、発電設備や交通機関を子どもが扱うのは、難易度も危険度も高すぎるだろう。
もしアニメ化やマンガ化する場合も、時代や地域の設定は変えるべきではない。
古い作品だが、時代や国の違いが認識できる小学校高学年以上なら、今でも十分に楽しめる名作だと感じた。
もちろん大人が読んでも面白い。
そろそろ終盤に入った夏休み、読書感想文のネタに困っているなら、お勧めの一冊。