70年代半ばから80年代半ばにかけてのヤンキーファッションに、右翼的・軍国的なデザインが好んで使用されたのはなぜなのか?
記事を書きながら、なんとなくそんな疑問をつつき回し続けてきた。
戦艦や戦闘機、戦闘服などに見られる旧日本軍的意匠や、当時の軍国主義を煽る「忠君愛国」「八紘一宇」「七生報国」などのスローガンが、サブカルチャーとしてかなり強い訴求力を持つことは間違いない。
何しろ戦前戦中には国民全体を熱狂させ、耐乏生活を強い、生命財産を投げ打たせ、国土を灰燼に帰さしめながら、最後まで戦い抜かせてしまった実績があるのだ。
以前の記事でアニメ「宇宙戦艦ヤマト」が、軍国主義の「毒」を極めて巧妙に切除し、デザイン的な訴求力だけを抽出して、ヒット要素に組み込んだ様(主としてマンガ家・松本零士によると思われる)を紹介したことがある。
ヤマトと仲なおり
そのヤマトとほぼ同時期に出現した軍国的ヤンキーファッションには、おそらく特定個人による緻密な「仕掛け」は存在しない。
当時のヤンキーの面々は、もっと無邪気に軍国スローガンを記した特攻服を身につけ、「思想」とは無縁のレベルで戦前回帰していたはずだ。
難解な漢字熟語や無茶な宛て漢字をファッションとして楽しむ傾向は、今でも幅広い層にある。
そしてヤンキーが「地元愛」「身内愛」を通じて「愛国」につながりやすい傾向は今も昔も変わらない。
しかし、今はさすがに「特攻服」は、無い。
コスプレでなく本気で着用されていたのは、せいぜい90年代前半くらいまでに限られるのではないだろうか。
一つ考えられるのは、当時のヤンキーの面々に対し、直接の抑圧者として目前に立ちはだかっていたであろう教師に対する、「逆張り」だったのではないかということだ。
糞ムカつくセンコー共が眉をひそめ、嫌悪を露にする服装、言葉遣いを嗅ぎ分ける内に、自然に右翼的、軍国的ファッションに収斂したのではないかというのが、現時点での私の仮説(というか与太話)である。
そのように考えると、学校や世間からサヨク的価値観が力を失っていった90年代以降、その「逆張り」としての右翼ヤンキーも姿を消していったのは辻褄が合っている気がするのである(笑)
そう言えば「金八」第一シリーズにつっぱり少女役で出演していた元女優は、今は日本会議系のしょーもない戦前回帰議員になってしまっている。
誰に吹き込まれたのか、以前「八紘一宇」を称揚するアナクロぶりを発揮していたっけ。
あれなどはさしずめ、「三十年遅れのヤンキーファッション」だったのかもしれない……
これは左右を問わずなのだが、単なる「逆張り」というのはやはり底が知れているものだ。
かく言う私自身も、現在の心情左翼の感性は、中高生の頃の時代錯誤な超スパルタ軍国教育に対する反発が源流になっていることは否めない。
青臭い単なる逆張りの域を超え、筋金入りの「弱きをたすけ、強きをくじく」でありたい。
絵描きとして元弱視児童として、本当にそう思う。
(「ヤンキーサブカルチャー」の章、了)