2017年11月13日

魂の故郷 人形劇「プリンプリン物語」のこと

 あ、今年は「プリンプリン物語」の再放送をやっていたのか。
 まあ、BSだから視てないけど。

 この作品は、私が子供の頃に放映していたNHKの人形劇である。
 今調べてみると79年から82年なので、ちょうどファーストガンダムのブームと時期が重なっている。
 孤児として育てられたプリンセス・プリンプリンが、仲間と共に見知らぬ故郷を探す旅に出て、世界中を巡る波乱万丈のストーリーだった。
 異国情緒たっぷりの人形造形、旅先の様々な架空の国の設定が面白く、リアルタイムで視たNHK人形劇の中では一番好きだった。
(後番組にあたる「三国志」も捨てがたいが……)
 前回記事で某大統領と似ていると呟いた「ランカー」は、ヒロインのプリンプリンに執心する悪役キャラで、大富豪にして死の商人である。
 身分だけでなく容姿もちょっと似ている!
 作中のランカーは、最終エピソードで野望を遂げる寸前で破滅するという、ヒールとしてまことに正しい負けっぷりだったが、件の大統領の今後は如何に。

 確か十数年くらい前に地上波で再放送があった時は、懐かしさでしばらく視ていた。
 その時はとくに挿入歌が素晴らしいと思った。
 歌劇仕立てに惜しみなく盛り込まれた曲がどれも名作で、ハマってCDまで買ってしまった。
 世界漫遊物語なので各国の国歌も多数作られており、中でも印象に残っているのが両極端の二曲、超独裁国家アクタ共和国の国歌と、南方の平和な島国オサラムームー国歌だ。
 アクタ共和国の方は、軍歌調で「世界で一番優れた民族」とか「命令絶対規則はいっぱい」とかの歌詞を合唱してあり、子供の頃面白がってみんなで歌った記憶がある。
 昔は戯画化された独裁者や独裁国家を素直に楽しんでいたが、いつの間にか我が祖国にも、愛国を隠れ蓑にしたヘイト行為や、国家による管理強化をむしろ歓迎する雰囲気が出てきている気がして、今はあまり笑えない。
 対してオサラムームーの方は、メロディこそ極めて平和的だけれども、「労働」や「勤勉」を根本的に否定する内容だった。
 水木しげるの世界観にも通じるものがあり、あらためて聴くとむしろこちらの方がアクタ共和国国歌よりラジカルかもしれない(笑)
 海辺でお昼寝してあくびをすると、おいしい木の実が勝手に落ちてきてくれる常夏の楽園オサラムームー。
 そんな国であればこその「労働の全否定」なので、他の国でこの国歌を実践すると、滅亡してしまうだろう。
 子供の頃の私はわりに生真面目な質だったが、それでも「なんにもしないのがこの世で一番いいことだ」と歌い上げる歌詞は、とても魅力的に思えた。
 他にも「世界お金持ちクラブの歌」とか「ピテカンドロップオシモサク」「はべれけれ」など、変な歌やいい歌がてんこ盛りの楽しいミュージカル人形劇だった。
 記憶に残っている人や興味のある人は、「プリンプリン物語+α」で各所動画サイトを検索してみると見つかるかもしれないが、この際ほぼ全曲収録されたアルバムをお勧めしたい。


●「プリンプリン物語 ソング・ブック」

 どれもこれも名曲ばかりなのだが、私の思う極めつけの一曲は、エンディングにも使用されていた「わたしのそこく」だ。
 ヒロイン・プリンプリンが歌い上げるスケールの大きなバラードで、声優の石川ひとみが歌も担当している。
 タイトル通り、まだ見ぬ故郷への慕情を海に向かって歌い上げるような歌詞が、しみじみと印象に残る。
 石川ひとみはプリンプリン物語の頃、確かデビュー間もないアイドルだったはずだが、声質も歌唱力も素晴らしく、既に完成している感がある。

 故郷を知らないプリンプリンにとっての祖国は、美しく愛に満たされた、母なる「夢の国」だ。
 しかし、そこに生きるのが当り前の私たちにとって、祖国は必ずしも美しくなく、愛に満ちてもいない。
 もちろん美しさは感じ、愛着もあるが、醜さも嫌悪も否定しがたくある。
 それはプラスマイナス相半ばした濃い感情で、近しい肉親に対する情の在り方とも似ている。
 祖国を純粋に「愛」だけで慕えるのは、流浪の旅人の特権なのだ。
 プリンプリンの夢見る祖国は、海の彼方にあるという補陀落浄土やニライカナイのような「魂の故郷」のイメージに、より近いかもしれない。
 作中では、そんな祖国に対するイメージの相違に、プリンプリンがふと気付き始める描写までされているのが、また素晴らしい。

 物語のプリンプリンは、結局故郷には辿り着かず、「旅はまだまだ続く」というパターンで終幕した。
 子供の頃はなんとなく納得がいかなかったのだが、今となっては「終わらない旅」「たどりつけない魂の故郷」というモチーフが、いっそう心に沁みるのである。

 旅ということ、祖国ということ、文化の違い、国の統治、経済、戦争と軍需産業など、子供向け人形劇の能天気なトーンの底流には、意外に深く重いテーマが豪華に盛り込まれている。
 この作品も、私が子供の頃に出会った極上の「児童文学」の一つだったと思う。
posted by 九郎 at 22:01| Comment(0) | 児童文学 | 更新情報をチェックする