同じ花見でも、山や里のヤマザクラと公園のソメイヨシノでは、少し鑑賞の仕方が違うと感じる。
みっしり豪華に花の詰まったソメイヨシノは、青空を背景に、樹下で花に包まれるように宴するのが、やはり楽しい。
ヤマザクラはそれほど花の密度は高くないので、距離を置いて遠目に眺めるのが美しい。
とくに高低差のある山肌で、たくさん薄ピンクの彩雲がたなびくような風景が絶品で、その頂点が吉野の千本桜ということになるのだろう。
まだ見ぬ吉野ほどではもちろんないだろうけれども、うちから小一時間ほどの登山道にも隠れたヤマザクラの名所があって、一年のうちほんの一週間ほど、夢見心地の風景が現れる。
写真では中々伝わりづらいと思うが、現地はもっともっと素晴らしい。
実際の風景との大きな落差は、たぶん私の写真の技量や機材の問題だけでない(笑)
登山道でヤマザクラを楽しむ人間の目は、広い風景の中から薄ピンクの箇所をとくにピックアップして認識するのだ。
同系色の中にはサクラだけでなく、たぶんモクレンやツツジなどの他の花木も含まれているだろう。
高低差のある立体的な地形、他の春の草花や野鳥の声、川の流れの音や、日差しの暖かさ、風の涼しさまでひっくるめてのヤマザクラなので、写真で一部だけを切り取ると、意外に花の印象が弱くなってしまう。
そこで絵描きのハシクレとしては、スケッチを試したくなる。
絵なら風景を「編集」し、「光学的な正確さ」とは違う、「自分の観た印象」を再現し得るはずだ。
ただし、登山・ハイキング途中でのスケッチになるので、サイズも時間も使える画材も限られる。
そもそも目の前のヤマザクラの風景は「なまもの」で、一日たてばガラッと花は入れ代わるし、日差しや時間帯でも刻々と変化していく。
むしろなるべく時間をかけず、描けるものならサラッと一息に描いた方が良い。
(以下二枚、クリックすると画像が大きくなります)
描いてみて、いくつか気づいた点。
サクラは実際にはピンクというより白に近いことが多い。
白い紙に淡彩仕上げという前提では、写実的な白っぽい桜の色では映えないので、多少ピンクを強めに出す必要がある。
ただ、あまりにピンクピンクだとマンガっぽくなるので。、ほどほどにしなければならない。
ピンクや紫は混色で作るとあまりきれいではないので、発色の良い絵具や色鉛筆を何本か用意しておいた方が良い。
風景スケッチは「引き算」だ。
いかに「描かないか」が大切で、私は多分、まだまだ描き過ぎている。
精進して一筆ごとの精度を上げれば、もっと手数を減らし、効果を上げることは出来るはずだ。
今年はここまで。