2018年05月28日

分岐点1983(80年代リアルロボットブーム覚書)その2

 前回記事でもまとめたように、81〜82年のガンダム劇場版三部作大ヒット、同時進行の空前絶後のガンプラブームから、リアルロボット路線のアニメが奔流のようにTV画面に溢れるようになった。
 作品数としては翌83年がピークで、84年には減少に転じ、85年には待望のガンダム続編である「ゼータ」が放映されるが、その後は収束に向かっている。
 このように作品数の推移だけ書き出してみると、当時の熱気を知らない人には、以下のように判断されてしまうかもしれない。

「ガンダムブームに便乗して似たような作品が粗製乱造され、わずか数年で需要を食い尽くした」

 しかし、当時のブームを体感した世代なら周知のことだけれども、短期間にこれだけの作品数が制作されたにも関わらず、決して「粗製」ではなかった。
 ガンダム後のどの作品も、単なる模造品ではなく、新規のアイデアを盛り込んでいた。
 リアルロボットが「リアル」であるためには、綿密なSF考証や独自の世界観の構築が不可欠だったのだ。

 たとえば「イデオン」は、異星文化との接触を描いた堂々たるSFであった。
 たとえば「ダグラム」は、よりリアルなミリタリー色を強調したストーリー、デザインであった。
 たとえば「ザブングル」は、建設重機をドッカンドッカンぶつけ合うような痛快なアクションであった。
 たとえば「マクロス」は、徹底したSF考証とアイドル要素を盛り込み、変形メカの至宝であるバルキリーを生み出した。
 たとえば「ダンバイン」は、異世界ファンタジーや生物的なメカデザインをTVアニメに導入したパイオニアであった。
 たとえば「ボトムズ」は、リアルロボットデザインの一つの極北であるスコープドッグを生み出した骨太な作品であった。
 たとえば「バイファム」は、少年少女の宇宙漂流を描いた上質の児童文学作品のようであった。
 たとえば「エルガイム」は、永野護という異能を世に出し、後のメカデザインに決定的な影響を残した。
 他の作品もそれぞれに特徴があり、世界観があり、新機軸のメカデザインがあった。

 ただ、決して「粗製」ではなかったとはいえ、やはり「乱造」であったということは言えるかもしれない。
 これだけ作品が重複して放映されていると、かなりのファンでも全て追いきれるものではなかったし、ましてプラモのシリーズをコンプリートすることなど、とてもできるものではなかった。
 当時のプラモは今のもののようにサクサク「パチ組み」できるものではなく、完成させるまでに非常に手間のかかる代物だった。
 パーツを切り出し、接着剤で溶着、合わせ目を丁寧に消すことを繰り返しつつ、塗装も全て自分でやらなければならなかった。
 コアなプラモファンにとってはそれが「たまらなく楽しい」のだが、普通に考えるとかなり「めんどくさい」ホビーだったのだ。
 時間的にも経済的にも、熱心なファンですら作り切れないほどのプラモの大量供給に加え、83年のファミコン発売、85年のスーパーマリオ大ヒットである。
 コアなファン以外の一般層が、より手軽に楽しめるゲームに流れるのは止めようがなかっただろう。
 最初のガンプラブームは小学生から大学生くらいまでの膨大な数の一般ファンがこぞってプラモ屋に殺到したことで成立した。
 劇場版ガンダム三部作の完結、登場メカの「弾切れ」を受け、そうしたマニア以外のファンの熱は一段落してしまった。
 83年以降のリアルロボットプラモブームは「外堀」を埋められた条件下にあったのだ。

 そして「内堀」の中では供給過多が起こっていた。

 興味はあっても作品を追いきれない。
 プラモが作り切れない。
 そんなもどかしさを持つファンは多数いたはずだ。

 ファンがじっくり作品を味わい、余裕をもってプラモを楽しめるのは、1年にせいぜい2作品、ぎりぎり3作品くらいまでだろう。
(実際、81〜82年のガンプラブーム最盛期は、そのようなペース配分だった)
 83〜84年の作品数はどう見ても異常で、せっかくの素晴らしい「素材」を味わう余裕が無いままに放映期間が過ぎ、プラモの新規発売が終了してしまうもったいなさがあった。
 需要は細分化され、どの作品のプラモも「売れていないわけではないが、大ヒットまではいかない」という感じだったと記憶している。
 スポンサー側がもう少し抑制的であれば、限られた「内堀」の枠内で同士討ちのような競争をせずに済み、「ポストガンダム」のプラモ文化を安定的に育てられた可能性もあったかもしれない。
 しかしそれはあくまで現時点から逆算した結果論である。
 需要の見込めるところに金も人も殺到するのは無理のないことだ。
 これだけ多様な「世界観」や「メカデザイン」のストックが、後世に残されたことをまずは肯定すべきなのだろう。

 ピークにあたる83年作品については、近年それだけのテーマで一冊の特集本が刊行されたこともあった。


●1983年のロボットアニメ (双葉社MOOK)

 83年作品では、個人的に「機甲創世記モスピーダ」が好きだった。
 タツノコアニメとして「新造人間キャシャーン」の系譜を継いだようなシリアスなSF作品で、破壊された世界を旅するチームの描写が、味わい深かった。
 OPとEDの曲も素晴らしくて、今でもよくカラオケで歌っている(笑)
 それだけ好きだったのだが、プラモの方は他のシリーズを手がけていたので「モスピーダ」まで手が回らず、心残りがずっとあった。
 プラモの発売元がバンダイであれば、ガンプラほどではないにしても当時の旧キットの再販機会は見込める。
 しかしバンダイ以外のメーカーの場合、今現在プラモの再販機会は極端に少なく、通常は当時品をある程度のプレミア覚悟で探すほかない。

 ところがあれから35年経った今年、青島から「モスピーダ」のプラモの再販があったので、本当に驚き、嬉しかった。
 次の再販機会があるのかどうかわからないので、往年のファンはとりあえず確保をお勧めしたい。







(続く)

posted by 九郎 at 00:17| Comment(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする